2019年2月版
国内景気は自然災害の影響から緩やかに立ち直るも、世界景気の見通し難から株価は大荒れ
【年末年初の株価は大荒れ】
株価が荒れている。日経平均は昨年10月初に一時24千円台に達した後12月中頃まで値を下げ、21〜22千円台で推移していたが、12月下旬以降再び急落して年末、年初には一時20千円を割った。その後20千円だいに戻ったものの、21千円にはとどかず、現在まで弱含み横這いで推移している。
米中貿易戦争が3月1日まで休戦状態にある中、中国経済の減速が徐々に明らかになっており、米国もFRBが本年に予定していた2回の利上げを棚上げし、欧州ではBrexitの道筋が決まらないなど、世界経済の不確実性と、先行きのスロー・ダウンの可能性が次第に色濃くなりつつある。
日本経済は、昨年の自然災害の影響からは立ち直りつつあるものの、世界経済の減速傾向がどのような形で響いてくるか、今後の推移が注目される。
【鉱工業生産、出荷は振れを伴いながら緩やかな増勢を維持】
12月の鉱工業生産は前月比−0.1%減、出荷は同+0.3%増とやや区々の動きとなったが、10〜12月期をならしてみると、生産は前期比+1.9%、出荷も同+1.9%といずれも自然災害に伴う7〜9月期の減少から緩やかに立ち直っている(図表1)。
製造工業生産予測調査によると、1月は前月比−0.1%と微減のあと、2月は同+2.6%と立ち直る予測である。鉱工業生産がこの予測通りによると仮定すれば、1〜2月平均の10〜12月平均比は+1.8%の増加となり、緩やかな増勢が維持されることとなる。
12月の鉱工業出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けの方が前月比−1.4%と落ち込みが大きい。これは10月に同+5.7%と急増した反動によるもので、10〜12月をくくって見ると、前期比+2.5%と増勢は保たれている。
この国産品の国内向け出荷に輸入を加えた鉱工業製品の国内総供給は、12月に前月比−1.1%の減少となるが、これも10月急増(同+5.2%)の反動で、10〜12月期全体の前期比は+0.8%と緩やかな増勢を保っている。
【個人消費は緩やかながら底固い増勢】
国内需要を見ると、12月の「実質消費活動指数」(日銀推計、季調済み)は、106.8と昨年中の最高水準に達し、10〜12月平均も106.5と四半期ベースでここ2年来の最高水準を記録した(図表2)。これは賃金と雇用の両面から家計所得の緩やかな増加が続いているためと見られる。
12月の実質賃金は、前年比+1.4%と前月(同+0.8%)に続き前年水準を上回った(図表2)。12月の雇用も、就業者数、雇用者数(図表2)は共に前年比+1.7%、常用雇用者数は同+0.8%と前年水準を上回って推移している。12月の完全失業率は2.4%と低水準を横這っており(図表2)、有効求人倍率は1.63倍と高水準に張付いている。
【設備投資は自然災害の影響から立ち直り、再び緩やかな増勢】
投資動向を見ると、足許の設備投資動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、12月に前月比−2.6%となったが、10〜12月期は前期比+0.6%と2四半期連続して増加した。
GDP統計の実質設備投資は、16年第4四半期から7四半期連続して増加したあと、自然災害の影響で18年第3四半期には前期比−2.8%の減少となったが、第4四半期(10〜12月期)には再び増勢を取り戻したと見られる。
実質住宅投資は17年第3四半期から4四半期微減(毎期、前期比−0.1%)したあと、18年第3四半期には横這いとなった。先行指標の新設住宅着工戸数は、昨年9月を底に12月まで僅かに増加しているので、10〜12月期の住宅投資は強含み横這い圏内の動きと見られる。
【輸入の増勢一服から12月の貿易サービス収支が好転】
12月の貿易サービス収支(季調済み、以下同じ)は、5か月振りに黒字に戻った(2068億円の黒字、図表2参照)。経常収支の黒字も昨年10月を底に再び拡大に転じており、12月は1兆5623億円と昨年前半の水準に近づいている。
これは、輸出が回復したのではなく、輸出を上回るテンポで拡大していた輸入が、原油などエネルギー関係の増勢一服から12月に前月比−6.3%とやや大きく減少したためである。
米中貿易戦争中やBrexitの影響、米国金融政策転換の気配などから、今後の世界経済の動向からは目が離せないが、その中にあって日本の輸出が今後どのように推移するかが景気全体を左右する大きな要素として注目される。