2018年11月版
自然災害に伴う経常収支の赤字転落から7〜9月期は一時的にマイナス成長か

【自然災害が続き7〜9月期の生産、出荷は減少】
 9月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ−1.1%、−9.0%とやや大きく減少し(図表1)、7〜9月期も前期比それぞれ−1.6%、−2.2%の減少となった。7〜8月の猛暑と連続台風による大水害、9月の台風21号による関西空港水没、同月の北海道胆振東部地震による全道停電などにより、サプライ・チェーンが寸断されて出荷が落ち、生産も一時ストップしたためである。とくに9月の出荷減少(前月比−3.0%)は関西空港などにおける輸出の乱れによる面が大きく、国内向け出荷が前月比−2.1%の減少であったのに対し、輸出は同−6.3%と大きく落ち込んだ。
 これらの反動から、10月の製造業生産予測調査では前月比+6.0%と飛び上がったあと、11月は同−0.8%とほぼ横這いとなり、10〜11月の平均水準は7〜9月平均を+4.9%上回って年初来の最高水準に戻る見込みである(図表1)。
 ただし、鉱工業生産と出荷のトレンドに変化が兆しているかについては、10〜12月の実績を分析してみなければ、判定は困難である。

【雇用は女性、高齢者の労働参加率上昇を伴いながら引き続き増加、これを背景に消費の基調は引き続き底固い】
 7〜9月の需要動向を見ると、国内最終需要は比較的確りしているように見える。
 まず「実質消費活動指数+」(日銀試算)は、8月と9月に緩やかながら2か月連続で増加している。四半期ベースでも4〜6月期と7〜9月期は2四半期連続して小幅に増加しており、7〜9月期は四半期ベースで最高水準となった(図表2)。
 実質賃金はボーナス月の6月を中心に5〜7月と3か月連続して前年を上回ったが、8、9月は再び前年を下回っている(図表2)。しかし雇用面では、女性と高齢者を中心に労働市場の外に居た非労働力人口が減少し(9月の前年比−2.4%)、労働市場に参加する労働力人口が増加(同+1.3%)する中で、就業者人口が増えており(同+1.8%)、雇用の増加(同+1.8%)と失業者の減少(同−14.7%)が続いている。消費が緩やかながら底固い増加トレンドを保っている基本的な背景と見られる。

【設備投資は自然災害の影響を受けながらも根強い増勢】
 投資動向を見ると、足許の設備投資動向を示す資本財(除、輸送機械)の国内向け出荷(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、自然災害等による攪乱からさすがに9月は−0.2%と足踏み状態となったが、7〜9月期全体では前期比+1.2%と根強い増勢を保っている(図表2)。
 先行きを示す機械受注(民需、除船舶・電力)は、9月に前月比−18.3%と落ち込んだが、7〜9月期全体として同前期比+0.9%と5四半期連続の増勢を保った。10〜12月期の見通しも、前期比+3.6%の増加である。各種の設備投資計画調査から見ても、本年度の設備投資は根強い増勢を続けていると見られる。

【住宅投資は弱含み、公共投資は減勢】
 住宅投資の先行指標であえる新設住宅着工戸数は、4〜6月期に4四半期振りの増加となったが、7〜9月期は再び若干の減少となった(図表2)。GDP統計で4四半期連続して減少している実質住宅投資は、引き続き弱含みで推移する公算が高い。
 GDP統計の実質公共投資は、昨年7〜9月期から本年4〜6月期まで4四半期連続して小幅減少を続けているが、先行指標の公共建設工事受注額が7〜9月期も3四半期連続で前年を下回っていること(図表3)から見て、引き続き緩やかな減少を続けると見られる。

【自然災害の影響から9月と7〜9月の経常収支は大幅な赤字】
 8月に赤字(591億円)に転落した貿易サービス収支は、9月には更に2163億円の赤字と大きく赤字幅を拡げた。四半期ベースでも、7〜9月期は1930億円の赤字となり、平成27年10〜12月期以来の赤字を記録した。
 これは主として9月の輸出が、台風21号による関西空港の一時的閉鎖(関空からの輸出は前年比−58%減)などから、前月比−4.0%の減少となった一方、輸入は原油などエネルギー関連を中心に、前月比1.2%の減少にとどまったため、貿易収支が1594億円の赤字に転落したためである。
 来週11月14日(水)に公表される予定の7〜9月期GDP統計では、実質GDP成長率は対する「純輸出」の成長寄与度がかなりのマイナスになると見込まれる。このため、設備投資、家計消費などの国内民間需要が根強い増勢を示したとしても、全体として自然災害等を主因に一時的なマイナス成長となる可能性もある。