2018年9月版
設備投資を中心に底固い成長が続くものの、今後は米国の追加関税、日本の天候異変や地震などの影響がどう出てくるか注目

【4〜6月期の成長率は設備投資を中心に年率3%へ上方修正】
 9月3日に公表された本年4〜6月期の「法人企業統計」において、設備投資(名目)が前年比+14.0%、季調済み前期比+6.9%と大きな伸びを示した。これを受けて、4〜6月期の実質GDP統計の「2次速報値」における実質設備投資」は、「1次速報値」の前期比+1.3%(前年比+4.0%)から、前期比+3.1%(同+6.4%)へ、大きく上方修正された(図表3)。これに伴い実質GDP全体も、前期比+0.5%(年率+1.9%)から同+0.7%(同+3.0%)へ上方修正され、18年度の実質GDPの成長率は、早くも0.9%の「ゲタ」をはいた。
 7〜9月期は、7〜8月の猛暑と連続台風に伴う大水害、9月の北海道大地震など天候異変が続いており、消費やサプライ・チェーン、ひいては生産への影響がマクロ経済レベルでどう出てくるかまだ全貌は分からない。また更に先を見れば、トランプ大統領の保護主義的政策が、世界、ひいては日本の貿易にどう響いてくるかも、現在のところ未知数である。

【米国の追加関税、日本の天候異変と北海道地震が8月以降の鉱工業生産、出荷へどう影響するかに注目】
 7月の生産は前月比−0.1%減と、3か月連続で低下した(図表1)。業種別には、自動車(輸送用機械、前月比−4.2%減)や鉄鋼(前月比−5.0%減)の下落が目立つが、これには早くも米国の追加関税や西日本豪雨の影響が出てきたものと見られる。
 製造工業生産予測調査によると、8月は前月比+5.6%と大幅に上昇したあと、9月も同+0.5%と増勢を持続する予測となっている(図表1)。しかし、この反動増には、輸送用機械の増加が大きく寄与しているが、今後の追加関税や自然災害の影響を考えると、予測通りに反動増となるかどうか、慎重に見ていく必要がありそうである。
 ちなみに、7月の出荷は前月比−1.9%の減少となったが、これには7月の輸出が同−5.4%と大きく落ち込んだことが響いており、国内向けは同−0.8%の減少にとどまっている。
 7月の輸出の落ち込みがとくに大きいのは、輸送用機械の前月比−11.3%減である。
 7月の国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+2.5%を増加したため、全体では−0.2%減とほぼ横這いであった。

【夏期賞与を中心とする賃金の増加を背景に6、7月の家計消費は増加】
 7月の国内需要動向を見ると、まず「実質消費活動指数+」は105.5と、前月(105.2)および4〜6月平均(105.0)を上回り、緩やかながら増勢を保っている(図表2)。しかし、8月以降は自然災害の影響で一時的に落ち込むのではないかと懸念される。
 実質賃金は、夏期賞与増加の影響から前年を上回った5月(前年比+1.3%)、6月(同+2.5%)を過ぎたあと、7月も、なお同+0.4%と3か月連続で前年を上回った(図表2)。
 7月の就業者数、雇用者数、常用雇用者数は、いずれも季調済み前月比でジリジリと増え続けている(図表2)。しかし非労働力人口の減少を伴う労働力人口の増加という形で働きに出る人が増えているため、一時的に完全失業者が増加し、完全失業率の低下はここへきてやや足踏みしている(図表2)。これには、ミス・マッチが増えていることも響いていると思われる。有効求人倍率は7月も1.63と上昇した。

【設備投資は根強い増勢を持続】
 投資動向を見ると、既に述べたように、4〜6月期のGDP統計の実質設備投資は前期比+1.3%から同+3.1%へ大きく上方修正された。
 先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、7月に前月比+11.0%の増加となった(図表2)。7〜9月の見通しは前期比−0.3%の弱含みとなっているが、とりあえず7月の水準は4〜6月期の平均を+2.7%上回っている。
 他方、7〜9月期の「法人企業景気予測調査」によると、本年度上期の設備投資は前回調査(3か月前)の前年比+11.0%から同+13.6%に上方修正され、年度全体も前年比+5.4%から同+9.9%に上方修正された。
 各種の本年度設備投資計画調査の比較的高い伸びから見ても、本年度の設備投資は引き続き着実な増勢を辿っていると判断される。

【住宅投資は下げ止まり、公共投資は減勢持続】
 GDP統計の実質住宅投資は4〜6月期まで4四半期連続して減少しているが、先行指標の新設住宅着工戸数は、4〜6月期に前期比+8.5%と4四半期振りの増加となり、7月もほぼ4〜6月期の水準を維持している(図表2)。GDP統計の住宅投資は7〜9月期には下げ止まるかもしれない。
 GDP統計の実質公共投資も、3四半期連続して減少したあと、4〜6月期は横這いとなったが、先行指標の公共建設工事受注額は1〜3月、4〜6月、7月と前年水準を下回っているので(図表2)、7〜9月期は再び減少に転じる可能性が高い。

【7月の貿易サービス収支の黒字は縮小】
 最後に外需(純輸出)の動向を見ると、昨年10〜12月期から本年4〜6月期まで、成長率に対する外需の寄与度は+0.1%〜−0.1%とほぼゼロ近辺で横這いである。
 7月の貿易サービス収支の黒字は、824億円と4〜6月平均(1687億円)比ほぼ半減した(図表2)。これは貿易収支の黒字が、原油・液化天然ガスなどエネルギー関係の輸入価格上昇と輸送用機器の輸出数量減少からほぼ半減したためである。
 今後については、米国の対日追加関税、日本の天候異変や地震に伴うサプライ・チェーンの混乱などの影響がどのように出てくるか、予断を許さない。