2018年8月版
家計消費、設備投資、海外からの所得純受取の増加に支えられて日本経済は順調に拡大

【鉱工業生産、出荷は夏場にかけて拡大】
 冬場の天候不順に伴う家計消費の落ち込みを主因に、1〜3月期に9四半期振りのマイナス成長(前期比−0.2%)となった日本経済は、4〜6月期に消費回復と設備投資堅調に伴う国内民間需要の立ち直りから、前期比+0.5%(年率+1.9%)増と1〜3月期の一時的足踏みを脱し、再び増加基調に戻った(図表3)。
 6月の鉱工業生産と出荷は、それぞれ前月比−2.1%、−0.2%の減少であったが、4〜6月期全体としては、いずれも前期比+1.2%、+1.8%の増加である。また製造業生産予測調査によると、7月は前月比+2.7%、8月は+3.8%の続伸となり、7〜8月平均は4〜6月平均比+3.2%の増加予想である。
 生産、出荷は共に1〜3月期の足踏みから立ち直り、夏場にかけて拡大していると見られる(図表1)。
 4〜6月期の鉱工業出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けは前期比+2.0%、輸出は同+0.9%のいずれも増加であった。
 この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が−0.7%の減少となったため、全体で+1.6%の増加であった。

【堅調な賃金・雇用を背景に、家計消費は着実に増加】
 国内需要を見ると、「実質消費活動指数+」は、1〜3月に天候不順から104.8(前期比−0.3%)と低下したあと、4月から回復し、4〜6月は105.0(同+0.2%)となった。
 背景にある4〜6月期の実質雇用者報酬は、前期比+1.9%と比較的高い伸びとなった。これには実質賃金がボーナス月の6月(前年比+2.8%)を中心に、4〜6月期に前年比+1.5%と大きく伸びたことが響いている(図表2)。
 また雇用も引き続き堅調な伸びを示しており、年明け後の雇用者数は、前年比で1〜3月期に+2.0%、4〜6月期に+2.2%と90年代初め以来の最も高い伸びとなっている(図表2)。

【設備投資拡大の反面、公共投資と住宅投資は頭打ち】
 企業の設備投資は、4〜6月期の実質GDP統計で、前期比+1.3%(成長寄与度+0.2%)と、6四半期振りの高い伸びを示した。
 先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、前期比で1〜3月期+2.3%、4〜6月期++2.2%と2四半期続けて比較的高い伸びを示している(図表2)。
 公共投資の先行指標である公共建設工事の受注額は、前年比で1〜3月期−7.4%、4〜6月期−5.7%と2四半期続けて前年を下回った。実質GDP統計では、17年7〜9月期から本年4〜6月期まで、4四半期続けて前期比減少となっている。
 住宅投資の先行指標である新設住宅着工戸数は、17年4〜6月期をピークに減少傾向に転じていたが、本年の4〜6月期は4四半期振りに前期比+8.5%の968千戸(年率)と増加した。しかし、4〜6月期の実質GDP統計では、前期比−2.7%とまだ減少している。7〜9月期には5新半期振りの増加となりそうである(図表2)。

【「純輸出」のGDP寄与度は微減、「海外からの所得純受取」のGNI成長寄与度は増加】
 最後に外需を見ると、6月の貿易サービス収支は798億円の黒字と先月の赤字(937億円)からふたたび黒字に戻ったが、4〜6月期の合計では5061億円と前期(5134億円の黒字)をやや下回る黒字にとどまった(図表2)。
 しかし、4〜6月の経常収支の合計は、54,979億円と前期(6836億円)を17.4%上回った。これは、4〜6月期の第1次所得収支の黒字が54,911億円と前期(46,778億円)を大きく上回ったためである。
 これらを反映して、4〜6月期の実質GDPでは、「純輸出」の成長寄与度が−0.1%の減少となったが(図表3)、GNI(国民総所得)中の「海外からの所得純受取」は、+0.3%の成長寄与度となった。いうまでもなく、日本人の総所得を表す統計はGDP(国民総生産)ではなく、GNI(国民総所得)である。