2018年6月版
設備投資、家計消費、「純輸出」を中心に景気の立ち直り進む
【鉱工業生産、出荷は1〜3月期マイナスのあと再びプラスへ】
1〜3月期に9四半期振りのマイナス成長(前期比−0.2%、年率−0.6%)となり、足踏みをした景気回復は、4月以降家計消費、設備投資、純輸出を中心に再び立ち直ってきている。
本年1月に前月比−4.5%と大きく落ち込んだ鉱工業生産と出荷は2月から3か月連続して増加したものの、回復のテンポが緩やかなため、1〜3月期をならして見ると、前期比夫々−1.3%、−1.1%の減少である(図表1)。
4月の生産と出荷は前月比それぞれ+0.3%、+1.8%の増加となったあと、5月と6月の製造工業生産予測調査はそれぞれ+0.3%の増加、−0.8%の減少となっている(図表1)。鉱工業生産の実績がこの予測通りになると仮定すると、4〜6月期は前期比+1.8%と1〜3月期減少のあと再び増加に戻る。
【自動車、機械が好調な反面、スマホ関係の電子部品は不振】
4月の出荷(前月比+1.8%)を国内向けと輸出に分けると、国内向けは前月比+2.5%と比較的高い伸びとなっており、輸出は同+0.8%にとどまった。
この国内向けに輸入を加えた4月の国内向け総供給は、輸入が前月比+0.9%にとどまったため、全体で同+2.2%の増加であった。それでも、4月の水準は1〜3月平均比+2.5%増となり、立ち直りは明らかである。
業種別にみると、輸送機械(普通乗用車、自動車用エンジン・部品)と汎用・生産用・業務用機械などが好調な反面、スマホの販売不振を反映して電子部品・デバイスが不振である。
【家計消費は立ち直った】
国内需要の動向を見ると、「実質消費活動指数+」(日銀試算)は、天候不良の影響などから1〜3月期は前期比−0.3%の減少となったが、その反動もあって、4月は1〜3月平均比+1.8%の回復となった(図表2)。
4月の現金給与総額(季調済み)は、1〜3月平均比−0.7%の減少となったが、10〜12月平均比では+1.1%の水準にある。趨勢的には上昇しているが、極めて緩やかである。また物価調整をした実質賃金の前年比は、5四半期減少のあと、4月は前年と同水準である(図表2)。
他方、雇用は引き続きジリジリと増加している。4月の就業者、雇用者、常用雇用者は、季調髄前月比でそれぞれ0.0%、+0.4%、+0.2%であった。また4月の完全失業者は前月比−0.6%の減少となったが、完全失業率は2.5%にとどまっている(図表2)。
【設備投資は先行き堅調】
投資動向を見ると、1〜3月期実質GDP統計の設備投資は、1次速報値の前期比−0.1%から2次速報値の同+0.3%に上方修正され、6四半期連続の増加となった(図表3)。足許の設備投資動向を映す資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、4月に前月比+1.1%増と3か月連続で増加している(図表2)。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、4月に前月比+10.1%と大きく伸びた。昨年7〜9月期から3四半期連続して増加したあと、更に1〜3月期平均を+8.0%上回る高水準である。
景気上昇の6年目に入り、マクロ需給の引き締まりを背景に、設備投資は堅調に推移している。
【弱含みの住宅投資、公共投資に下げ止まりの気配】
住宅投資の先行指標である新設住宅着工戸数は、4月に992千戸(1〜3月平均比+11.2%増)と最近のピークを更新した(図表2)。1か月の計数だけでは判断できないが、実質GDP統計では1〜3月期まで3四半期連続で弱含んでいた住宅投資ではあるが、今後底固く推移するかも知れない。
公共投資の先行指標である公共建設工事受注額も、4月は前年比+6.9%増と3か月振りに増加した(図表2)。これも実質GDP統計では3四半期連続して微減しているが、新年度に入り、4〜6月期は立ち直るかも知れない。
【4月の経常収支、貿易収支の黒字は大きく拡大】
最後に外需を見ると、4月の貿易・サービス収支は5200億円の黒字と、最近3四半期のそれぞれの月平均を上回る黒字を記録した。これは輸出が6兆8631億円とピークを記録したため、貿易収支の黒字も6687億円のピークとなったためである。
4月の経常収支も1兆8855億円の黒字と1〜3月期の月平均黒字(1超5370億円)を22.7%上回った。4〜6月期GDP統計の「純輸出」は、前期に続き、成長に対してプラスの寄与となる可能性が高い。
4〜6月期の国内需要は、4月の動きを見る限り、家計消費も設備投資も立ち直っているので、外需と合わせ、4〜6月期の実質GDPは再びプラス成長に戻る公算が高い。