2018年4月版
1〜3月期は「純輸出」の不振、実質家計消費の一時的低迷から全体として足踏み

【18年度、好況は持続するも拡大テンポは鈍化の見込み】
 「日銀短観」によると、企業の景況感(業況判断DI)は既に前回好況期(04〜07年)のピーク並みに達しているが、今回の3月調査では、大企業製造業・非製造業および中堅企業製造業の景況感が高水準ながら僅かに悪化した。悪化は8四半期振りである。
 しかし、製商品・サービスの需給逼迫や生産・営業用設備の不足感は前回のピーク並みに達し、雇用人員の不足感は前回のピークを上回ってバブル期並みになっている。このことから考えると、景況感の頭打ちは需要側よりも供給側の事情によって起こっているように見える。
 新年度に入った日本経済は、引き続き好況を持続すると見られるが、15〜17年度に比べれば、供給面の制約から、拡大テンポは落ちてくると見られる。

【1〜3月期の生産は8四半期振りに前期比減少か】
 2月の鉱工業生産と出荷は、前月比夫々+4.1%増、+2.2%増と前月大幅減少の反動もあって増加し、3月と4月の製造業生産予測調査も夫々+0.9%増、+5.2%増と増勢を持続する見込みとなっている(図表1)。
 しかし、1月の減少(前月比−6.8%)幅が大きかったので、3月の鉱工業生産の実績が製造業生産予測調査並みに増加しても、1〜3月期は前期比−1.9%と8四半期振りの減少なる。2月、3月の反動増加が比較的小さかった業種は、輸送機械と電子部品・デバイスである。後者にはスマホ販売の不振が響いているようだ。

【鉱工業出荷では国内向け供給は伸びた反面輸出は微減】
 この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+11.1%の大幅増加となったため、全体で同+5.4%の増加となった。財別に見ると、耐久消費財(同+9.2%増)、生産財(同+7.5%)、輸送機械(同+5.3%)、建設財(同+4.0%)の増加が全体をリードし、資本財(除、輸送機械)は−1.4%の減少であった。
 2月の鉱工業出荷では、輸出が微減した反面輸入が大きく伸びたことが目立つ。

【1〜2月の実質家計消費は生鮮食品の高騰から微減】
 国内需要の動向を見ると、2月の家計調査の名目消費支出(2人以上の世帯)は前年比+0.9%の増加となったが、消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く)が前月に続き生鮮食品の高騰持続(前年比+12.4%)から前年比+1.8%の上昇を続けているため、実質では前年比−0.9%の減少となった。季調済み前月比も、実質では−1.5%の減少であった。他方、2月の日銀調べの「実質消費活動指数+」は、前月比横這い、10〜12月平均比+0.3%の微増となった(図表2)。
 野菜価格の高騰は3月までに一巡すると見られるので、実質消費は1〜3月期に横這い、ないし減少するものの、4月以降は再びなだらかな回復に戻る公算が高い。

【12〜2月の実質賃金は生鮮食品の高騰から前年比マイナス、反面労働需給の逼迫は進む】
 2月の賃金も、名目では前年比+1.3%と増加したが、生鮮食品を中心とする消費者物価の上昇から実質では前年比−0.5%と3か月連続して前年を下回った(図表2)。しかし、2月の名目賃金の季調済み前月比は+0.5%と4か月連続して増加しているので、生鮮食品の高騰が収まる3月以降は、実質賃金が増加に転じる可能性が高い。
 2月の雇用指標は、雇用者数、就業者数、常用雇用者数などいずれも季調済み前月比で増加を続けている(夫々前月比+0.5%、+0.8%、+0.4%)。完全失業率は、前月に2.4%に急落したが、2月も2.5%の低水準を続けている(図表2)。
 3月調査の「日銀短観」では、全規模全産業の「雇用人員判断」DIの「不足」超幅が−34%ポイントに拡大し、前回好況期のボトム(09年6月、−22%ポイント)を大きく下回ってバブル期のボトム(91年2月、−50%ポイント)に近づいている。

【設備投資の緩やかな増加基調は続いているが1〜3月期は足踏みの可能性も】
 投資動向を見ると、足許の設備投資を反映する2月の資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、前月比−1.4%と2か月連続で減少し、1〜2月平均の10〜12月平均比は−2.4%の減少となった(図表2)。
 先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、2月に前月比+2.1%と2か月連続の増加となり(図表2)、1〜2月平均の10〜12月平均比も+4.3%の増加となった。1〜3月も前期比増加となれば、3四半期連続の増加となる。
 また3月調査「日銀短観」の18年度設備投資計画(製造業・非製造業・金融機関合計、ソフトウェア・研究開発を含み土地投資を除く)では、前年比+2.0%増であった。これは前年度の同+4.3%を下回るものの、3月調査時点の計画としては前年度を上回る増加率である。
 以上を総合すると、設備投資の緩やかな増勢に変わりはないが、その中で1〜3月期はやや足踏みをする可能性がある。

【1〜3月期の住宅投資は引き続き微減、公共投資は3四半期振りに増加か】
 GDPベースの実質住宅投資とその先行指標であえる新設住宅着工戸数(季調済み、年率)は、昨年4〜6月期にピークに達したあと、高水準で緩やかに減少しているが、後者の1〜2月平均も10〜12月平均比−6.0%減と弱含みを続けている(図表2)。1〜3月GDP統計の実質住宅投資も、緩やかに減少するものと思われる。
 公共投資も、7〜9月期、10〜12月期と減少したが、先行指標の公共工事受注額の前年比は、10〜12月期+6.9%増、1〜2月平均+1.4%増と、このところ前年水準を上回っている(図表2)。1〜3月期実質GDPの公共投資は、若干の増加となる可能性がある。

【輸出の不振から2月の貿易サービス収支(季調済み)は26か月振りに赤字に転落】
 2月の国際収支ベース(季調済み)の貿易・サービス収支は、15年12月以来、26か月振りの赤字となった(図表2)。これは輸出が前月比−5.1%の減少、輸入が同+7.1%の増加となったためである。
 1〜2月平均の10〜12月平均比を見ても、輸出は−0.6%の微減となり、輸入は+4.6%の増加となったため、貿易サービス収支の月平均は10〜12月の4598億円の黒字から1〜2月は僅か628億円の黒字に急落した。
 3月上中旬の税関ベースの輸出入を見ても、輸出が前年比+5.8%、輸入が同+9.9%と輸入の伸びの方が高く、貿易黒字は同−42.6%の縮小となっている。

【1〜3月期は輸出の不振、生鮮食品高騰に伴う実質消費の低迷などから全体として足踏み状態】
 1〜3月期の実質GDP統計では、「純輸出」のマイナス寄与度が前期の−0.0%から更にマイナス幅を広げると見られる。
 また国内需要では、大雪など天候の影響で生鮮食品が高騰し、1〜2月の実質消費が低迷したほか、設備投資も足踏み気味に推移したので、3月以降、天候回復で消費が持ち直したものの、全体として低調と見られる。