2018年3月版
1〜3月期は引き続き「純輸出」の支えを欠き、設備投資を中心に緩やかな成長

【17暦年の成長率をピークとして、拡大テンポは鈍化の方向】
 17年10〜12月期の「法人企業統計調査」の結果を受けて、10〜12月期実質GDPの2次速報値は、設備投資と在庫投資の上方修正を中心に1次速報値より上振れし、前期比+0.4%(年率+1.6%)となった(1次速報値は夫々+0.1%、+0.5%)。
 その結果、17暦年の成長率は+1.7%と最近6年間では13暦年の+2.0%に次ぐ伸びとなった。恐らく17年度の成長率も、13年度の+2.6%に次ぐ2%前後の伸びとなろう。
 しかし、「法人企業景気予測調査」(18年1〜3月期)によると、18年度の売上高は前年比+1.5%と、17年度の+2.7%から大きく減速すると予測されている。景気減速の予兆は、既に本年1〜3月期から出ているように思われる(後述)。

【1〜3月期の生産・出荷の増勢は鈍化】
 1月の鉱工業生産は、10〜12月期(前期比+1.8%)の反動減もあって、前月比−6.6%の大幅下落となり、1月の出荷も−5.6%の下落となった。製造工業生産予測調査によると、2月は前月比+9.0%と大幅な反動増となり、3月は再び同−2.7%の減少となる。1〜3月期をならして見ると、10〜12月平均比+0.2%とほぼ横這いにとどまる見込みである(以上図表1)。
 生産、出荷に乱高下をもたらしている主な業種は、輸送機械、汎用・生産用・業務用機械、電子部品・デバイスなどの機械工業である。
 1月の出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けが前月比−6.2%、輸出は同−3.1%と国内向けの方が落ち込みは大きい。この国内向けに輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が同−9.8%と大幅に下落したため、全体は同−7.7%の落ち込みとなった。
 乱高下をならして見ると、1〜3月期の生産、出荷は増勢を維持しているものの、そのテンポは緩やかになっていると見られる。

【生鮮食品の値上がりで賃金と消費の伸びは実質でマイナス】
 国内需要の動向を見ると、1月の「実質消費活動指数+」(日銀試算)は105.5と前年10〜12月平均(105.4)比ほぼ横這いにとどまった(図表2)。
 1月の消費者物価(除生鮮食品)は前年比+0.9%と前月比横這いであったが(図表2)、大雪など悪天候の影響で、生鮮野菜(前月比+10.9%、前年比+21.3%)、生鮮果物(前月比+9.7%、前年比+4.4%)を中心に生鮮食品が前月比+8.1%、前年比+12.5%も上昇している。このため、生鮮食品を除かない消費者物価は前年比+1.4%の上昇となり、実質消費を直撃している。
 1月の実質賃金(持ち家の帰属家賃を除く総合消費者物価指数をデフレート)も生鮮食品の高騰によって、前年比−0.9%の減少となった。

【完全失業率は特殊事情もあって2.4%に急落】
 他方、雇用は1月も順調に拡大している。「労調」の就業者数、雇用者数、「毎勤」の常用雇用者数は、季調済み前月比で夫々+0.6%、+0.7%、+0.3%増加した。
 反面、1月の労働力人口が季調済み前月比で+0.2%とやや増えたにも拘らず、完全失業者数は同−12.6%と大きく減少したため、完全失業率は前月の2.8%から2.4%に急落した(図表2)。これには大雪に伴う一時的雇用増加も響いているようだ。
 2.4%の失業率はバブル崩壊直後の1993年以来の低水準である。どこまでが一時的影響か、実勢はどの程度かは天候が正常化したあと、2月、あるいは3月に判明するであろう。

【設備投資は着実な増勢】
 投資動向を見ると、GDP統計の10〜12月期実質設備投資は、10〜12月期の「法人企業統計」の設備投資が前期比+3.1%となったことを反映して、1次速報値の前期比+0.7%から2次速報値の+1.0%に上方修正された。
 足許の設備投資を反映する資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、1月に前月比−6.8%、10〜12月平均比−2.0%と減少した(図表2)。これは前述した鉱工業生産の乱高下の一環と見られ、趨勢としては増勢を保っているのではないかと見られる。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、7〜9月期に前期比+2.8%、10〜12月期に同+0.3%と増加した後、1月は更に前月比+8.2%、10〜12月平均比+3.2%と急増した。
 この大幅な増加は一時的で、反動減を招く可能性はあるが、ならして見れば機械受注は着実な増勢を続けていると見られる。

【住宅投資は緩やかな減勢、公共投資は強含み横這い】
 10〜12月期実質GDP統計(2次速報値)における住宅投資と公共投資は、夫々前期比−2.6%、同−0.2%といずれも減少した。
 住宅投資の先行指標である新設住宅着工戸数は、昨年4〜6月期をピークに緩やかに減少しており、本年1月も前月比−8.5%、10〜12月比−9.7%と減勢と辿っている(図表2)。
 公共投資の先行指標である公共建設工事受注額は、昨年7〜9月期に前年を下回ったあと、10〜12月期には前年比+6.9%、1月も同+4.3%を再び増勢を示している。
 1〜3月期以降、住宅投資は緩やかに減少傾向を辿り、公共投資は強含みの横這い傾向になると思われる。

【「純輸出」は10〜12月期に続き1〜2月も成長に寄与していない】
 最後に外需の動向を見ると、10〜12月期の実質GDP統計では、輸入の伸びが前期比+2.9%増、輸出の伸びが同+2.4%増と、2四半期振りに輸入の伸びが輸出の伸びを上回り、「純輸出」は成長に対して僅かながらマイナスの寄与となった。
 年明け後の動向を通関統計(季調済み)の動きで見ると、1〜2月平均の輸入は10〜12月平均比+2.1%増と増勢を続けているのに対し、1〜2月平均の輸出は10〜12月平均比−0.2%の微減となり、貿易収支の黒字は縮小した。
 3月の輸出入動向にもよるが、このままいくと1〜3月期の「純輸出」が成長に対し再びマイナスの寄与となる可能性がある。その場合、内需の拡大は設備投資を中心に極めて緩やかなので、1〜3月期の成長率は年率で1%に達しないかも知れない(図表3)。