2018年2月版
景気は順調に拡大しているが米国発の円高株安で市場は動揺

【17年10〜12月期は8四半期連続のプラス成長、17暦年の成長率は+1.6%】
 17年第4四半期の実質GDPは、前期比+0.1%(年率+0.5%)と四半期の伸び率としては低かったが、8四半期連続の増加となった(図表3)。17暦年の成長率は+1.6%と今回景気回復局面では13暦年(+2.0%)に次ぐ伸び率であった。
 暦年ベースで成長に大きく寄与したのは、家計消費(成長率への寄与度+0.5%)、設備投資(同+0.4%)、純輸出(同+0.5%)であった。マイナスの寄与は、前年に続き在庫投資(同−0.1%)である。
 第4四半期の実質GDPのうち、成長に対して大きくプラスの寄与となったのは、家計消費の立ち直り(成長率への寄与度+0.3%)で、このほか設備投資も若干寄与した(同+01%)。他方、住宅投資と在庫投資が若干のマイナス寄与(夫々−0.1%)となり、公共投資と純輸出は頭を打ち、−0.0%の寄与度であった(図表3)。

【米国株の急落から日本の株価も調整局面入り】
 昨年秋から年明け後にかけて大きく上昇してきた米国の株価は、1月22日をピークに1割前後の急反落となった。これに伴い、上昇傾向にあった世界の株価も一斉に調整局面に入り、日経平均株価は1月23日をピークに1割強下落し、その後もみ合いを続けている。
 昨年9月から始まった日本の株価上昇は、円の対ドル相場が比較的落ち着いた中で、米国の株価急上昇につれ高となった面が大きい。しかし、基本的には日米の株価上昇は共に経済拡大に伴う企業業績好転に裏付けられているので、昨秋来の急ピッチの上昇の反動の後、調整が一巡すれば、波乱は次第に収まってくるのではないかと思われる。

【表面金利差に逆行するドル安円高傾向】
 ただ、一つの心配な要因は、1月下旬頃からのドル安円高傾向である。米国では雇用情勢の好転持続を背景に、3月以降年内に3回の利上げが予想されている。従って、普通なら金利先高感からドル高傾向になりそうなものである。
 しかし米国の金利上昇は、減税などによる財政赤字拡大で好況が持続するとの予想から期待インフレ率が上昇していることによる面があり、必ずしも実質金利の上昇ではない。これに対し日本では、インフレ率の上昇が遅々としている下で出口政策が論じられているので、予想実質金利が上昇している。更にトランプ政権の高官のドル安容認発言もあった。これらの事情から日米の予想実質金利差は拡大しておらず、市場では表面的な日米金利差拡大の動きが必ずしもドル高円安を招いていない。

【乱高下を伴いながら鉱工業生産、出荷は増勢持続】
 日本経済の実体面を見ると、12月の鉱工業生産と出荷は、いずれも前月比+2.7%の大幅増加となり、10〜12月期の前期比は夫々+1.8%、+0.9%の増加となった。生産は6四半期、出荷は4四半期連続の増加である(図表1)。
 製造工業生産予測調査によると、1月は前月比−4.3%、2月同+5.7%と乱高下する(図表1)。これは、主として輸送機械、汎用・生産用・業務用機械、電子部品・デバイスなどの機械工業の振れによるもので、上昇の趨勢に変わりはない。
 12月の出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けが前月比+3.2%と大きく伸び、輸出は同+0.4%の伸びにとどまっている。この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+8.5%と著増したため、全体で同+5.0%の大幅増加となった。財別に見ると、資本財(除、輸送機械)の同+6.2%増、建設財の同+5.9%増、耐久消費財の同+4.8%増が目立つ。

【雇用増加を背景に消費は立ち直り】
 国内需要の動向を見ると、「実質消費活動指数+」(日銀推計)は12月も105.3と高水準を維持し、10〜12月期は105.5と前期(105.2)減少のあと再び増加基調に戻った(図表1)。GDP統計の実質家計消費も同じ傾向を示している(図表3)。8月、9月の消費落ち込みは、天候不順に伴う一時的な動きであることがはっきりした。
 背後の賃金・雇用動向を見ると、12月の実質賃金は前年を−0.5%下回り、10〜12月期も前年比−0.2%と4四半期連続で前年水準を下回った(図表2)。
 他方、雇用は「労調」の就業者数、雇用者数、「毎勤」の常用雇用者数が、いずれも前年を夫々+0.8%、+0.7%、+2.6%上回っている(図表1)。
 女性、高齢者を中心に労働参加率が高まっているため、雇用はジリジリと増加しているが、1人当たり賃金の低い層が増えているため、賃金指数は上昇していない。「家計調査」を見ると、家計収入の増加は、世帯主の収入ではなく、配偶者の収入増加に支えられている。

【設備投資は底固い増勢】
 投資動向を見ると、17年10〜12月期のGDP統計の実質設備投資は、前期比+0.7%と5四半期連続の増加となった。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)を見ると、12月は前2か月増加の反動で前月比−11.9%減となったが、10〜12月期平均は前期比−0.1%減と前期の高水準を維持した(図表2)。また本年1〜3月期の見通しは同+0.6%と緩やかな増勢が見込まれている。
 設備投資は引き続き今後の成長を主導すると見込まれる。

【住宅投資と公共投資は頭打ちから緩やかな減勢へ】
 GDP統計の10〜12月期実質住宅投資と実質公共投資は、それぞれ前期比−2.7%、同−0.5%と共に減少した(図表3)。両者とも2四半期連続の減少で、頭打ちから緩やかな減少傾向に入ったと見られる。
 先行指標を見ても、新設住宅着工戸数は昨年4〜6月期をピークに減少傾向に入り、12月も前月比減少した(図表1)。住宅投資は高水準ながら、長期的な新設住宅への需要頭打ちを反映して、住宅ローンのアベイラビリティー上昇と金利低下にも拘らず、緩やかな減少傾向に入ってきたと見られる。
 公共投資は、経済対策の一巡から減少に転じているが、オリンピック関連需要の下支えもあって、高水準を維持するものと思われる。

【輸入数量の伸びが輸出数量の伸びに追いつき、外需の成長寄与度はゼロに】
 海外需要の動向を見ると、輸出数量は世界経済の順調な拡大を背景に増加を続けているが、遅れていた輸入数量の伸びが国内の景気上昇持続を反映して伸びを高めてきたため、10〜12月期のGDP統計の実質「純輸出」は、成長に対し−0.0%の寄与度にとどまった。
 貿易収支の黒字も昨年2月の8272億円をピークに趨勢的には減少しており、12月は2302億円にとどまった。