2018年1月版
設備投資と輸出に加え家計消費の立ち直りもあって景気は順調、年明け後の株価は大きく上昇

【設備投資、家計消費、輸出を中心に緩やかな成長が続くが、2%の物価目標実現の目途は立っていない】
 日本経済は、設備投資、家計消費、輸出を中心に引き続き緩やかな成長を続けている。このため本年3月期の企業業績上振れの予想を背景に、年明け後の株価は大きく上昇している。
 11月の消費者物価(除、生鮮食品)は、季調済み前月比+0.2%、前年比+0.9%と年率2%のベースで上昇しているように見えるが、生鮮食品のほかエネルギーも除いたベースでは、同+0.1%、同+0.3%となり、上昇の半分は石油などエネルギー価格の上昇によるものであることが分かる(図表2)。2%の物価目標到達の目途は、依然として立っていない。

【鉱工業生産は増加基調ながら12月と1月は乱高下】
 11月の鉱工業生産は前月比+0.6%の上昇となり、12月と1月の製造工業生産予測指数は前月比+3.4%の上昇のあと、−4.5%と大きく下落する形となっている。仮に鉱工業の実績が製造工業の予測通りになると仮定すると、10〜12月期は前期比+3.4%の大幅上昇となったあと、1月は10〜12月平均に対し、−2.2%の反動減となる(図表1)。このような生産の乱高下を引き起こしている主な業種は、輸送機械、電気機械などの機械工業である。

【鉱工業出荷は国内向け、輸出ともに順調な伸び】
 11月の鉱工業出荷は、前月比+2.4%と前2か月減少の反動でやや大きく伸びた(図表1)。これを国内向け出荷と輸出に分けると、輸出が前月比+9.1%と大幅に伸び、国内向けは+1.3%の増加であった。この国内向けに輸入を加えた国内向け総供給は、輸入も前月比+1.9%の増加となったため、全体で同+1.8%の増加であった。国内向け総供給の伸びをリードしたのは、資本財(除、輸送機械)の同+3.1%と耐久消費財の同+2.4%である。
 このことから、鉱工業出荷の増加を主導しているのは、輸出と国内の設備投資、家計消費であることが窺われる。

【家計消費は10月以降緩やかな回復基調に戻る】
 需要動向を見ると、「実質消費活動指数+」(日銀試算)は、天候不順から8月、9月と2か月下落(−1.0%)したあと、10月、11月と連続して回復(+1.0%)している(図表2)。「家計消費」(2人以上の世帯)の実質消費支出も、11月は季調済み前月比+2.1%増、前年比+1.7%増となった。7〜9月期に前期比−0.5%の減少となった実質GDPベースの家計消費は、10〜12月期に再び増加する可能性が高い。

【実質賃金は引き続き停滞気味ながら雇用増加が所得・消費の伸びを支える形】
 11月の雇用は、「労調」の就業者数、雇用者数、「毎勤」の常用雇用者数がいずれも季調済み前月比で増加を続けており、前年比は1.5〜2.6%増となっている(図表2)。11月の完全失業率は2.7%と、前月比1%ポイント低下し、バブル期の1988年の水準(2.4〜2.7%)に近づいている。
 11月の現金給与総額は、季調整済み前月比で+0.6%、前年比+0.9%となった。しかし消費者物価の上昇を調整した実質値では前年比+0.1%にとどまった(図表2)。実質賃金の実勢は、前年比微減ないしは横這いの域を出ていない。
 当面の実質家計消費を収入面から支えているのは、賃金の上昇ではなく、雇用の増加である。

【設備投資は根強い増勢を維持】
 足許の設備投資動向を反映する資本財(除、輸送機械)の総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、9、10月と2か月連続して下落した反動もあって、11月に前月比+3.1%とやや大きく増加した(図表2)。昨年4月以降、資本財(同)総供給は月毎の振れが大きくて趨勢を読みにくいが、本年度上期(4〜9月)の平均は前年度平均比+6.0%の水準にあり、この本年度上期平均に比し11月は−0.2%とほぼ横這いの水準になる。大勢としては増勢を維持していると見てよいであろう。
 先行指標の機械受注(民需、船舶・電力を除く)は、10月の前月比+5.0%増のあと11月も同+5.7%と2か月連続して増加し、10〜11月の平均は7〜9月平均比+3.1%増の水準にある。

【住宅投資と公共投資は大勢横這い】
 住宅投資の先行指標である新設住宅着工戸数は、昨年6月に頭を打ったあと、11月まではほぼ横這い傾向にある(図表2)。また公共投資の先行指標である公共建設工事受注額の前年比は、8月、9月にマイナスとなったあと、10月と11月はプラスとなった(図表2)。10〜12月期の住宅投資と公共投資は、大勢ほぼ横這いと見られる。

【「純輸出」の成長に対するプラス寄与は続く】
 11月の貿易・サービス収支の黒字は、4164億円と高水準を記録した前月(8237億円)を下回った。これは主として輸入原油の値上がりから貿易収支の黒字が縮小したためである。11月の通関統計の数量ベースでは、輸出が前月比+5.5%と輸入の伸び(前月比+2.6%)を上回っている。
 また10〜11月平均の貿易・サービス収支は7〜9月平均を+33.5%上回っており、10〜12月期も「純輸出」が成長に対し、プラスの寄与になると見られる(図表3)。