2017年11月版
消費の一時的足踏みで外需主導型成長

【GDPベースの需給ギャップの需要超過が徐々に拡大し、消費財価格の上昇を通じてCPI上昇率を押し上げ始めた】
 昨日(11/14)公表された本年7〜9月期のGDP統計によると、7〜9月期の実質GDPは前期比+0.3%(年率+1.4%)の増加と昨年1〜3月期から7期連続の増加となり、緩やかながら着実な成長持続を裏付けた。この結果、7〜9月期の実質GDPの前年比は+1.7%となり、本年度の成長率が1.5〜2.0%に達し、15年度と16年度(共に+1.3%)を上回る可能性が出ている。
 また国内需要デフレーターの前年比は、昨年7〜9月期のボトム(−0.8%)からジリジリと上昇し、本年7〜9月期は+0.5%となった。これは家計消費デフレーター(持ち家の帰属家賃を除く)の前年比が本年1〜3月期にプラスに転じ、7〜9月期は+0.4%に上がってきたことが主因である。
 物価指数を見ても、企業物価指数の中の消費財の前年比が、本年4月からプラスに転じて10月には+2.0%に達し、これが消費者物価指数(生鮮食品を除く)の8月と9月の前年比を+0.7%まで押し上げた。日銀推計のGDP需給ギャップは、昨年10〜12月期に供給超過から需要超過に転じ、本年4〜6月期には+1.22%の需要超過まで拡大しており、7〜9月期には更に+1.5%前後になったと思われる。これが消費財価格の上昇に反映され、消費者物価の前年比を徐々に押し上げていると見られる。

【鉱工業生産、出荷は月ごとの振れを伴いながら緩やかに増加】
 9月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ−1.1%、−2.6%と前月増加の反動もあって減少した。製造工業生産予測調査によると、10月は前年比+4.7%の増加、11月は同−0.9%の減少と予測されている。鉱工業生産と出荷は、本年に入って1か月おきに増加と減少を繰り返しながら、傾向としては緩やかに回復している(図表1)。因みに7〜9月期の生産は前期比+0.4%と6四半期連続して増加しており、10〜11月の製造業生産予測指数平均は4〜6月期の鉱工業生産指数の実績平均を+4.1%上回っている。
 このような生産の乱高下は、主として電子部品・デバイス、汎用・生産用・業務用機械などの振れによっておこっている。

【消費財の国内向けは7〜9月期に減少】
 9月の出荷を輸出と国内向けに分けると、前月比で輸出が−2.4%、国内向けが―1.8%といずれも減少した。この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+0.3%の増加となったため、全体で−0.4%の減少にとどまった。
 7〜9月期の国内向け総供給は、前期比−0.6%と5四半期振りの減少となった。財別に見ると、消費財の前期比−3.5%の減少(耐久消費財は同−4.4%の減少)が最も大きな下落で、投資財は同−0.4%の減少にとどまり、生産財は同+0.9%の増加であった。
 GDP統計でも、7〜9月期は消費がマイナスとなったことと、平仄が合っている。

【雇用増加にも拘らず7〜9月期の消費は天候不順から低下】
 需要動向を見ると、日銀推計の「実質消費活動指数+」は7月をピークに8月、9月と低下し、7〜9月平均も前期比−0.6%の減少となった(図表2)。これは8月、9月の天候異変の影響と見られる。GDPベースの実質家計消費も、7〜9月期は前期比−0.5%と7四半期振りの減少となった(図表3)。「家計調査」(二人以上の世帯)の実質消費も、7〜9月期は前期比−0.4%の減少となった。
 しかし、勤労者世帯の実収入は、6月から9月まで4か月続いて前月比増加している。またGDP統計の実質雇用者報酬も、7〜9月期は前期比+0.5%の増加となった。
 これは雇用者数の増加によるものと見られる。7〜9月期の「毎勤」統計によると、常用雇用者数(季調済み)は前期比+0.6%増加したが、実質賃金(同)は−0.5%の減少であった。

【設備投資は小幅の増加】
 投資動向を見ると、7〜9月期GDP統計の実質設備投資は、前期比+0.2%と4四半期連続の増加となったが、増加幅は縮小した(図表3)。7〜9月期の資本財(除く輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、前期比−0.6%の微減となった(図表2)。
 先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、7〜9月期に前期比+4.7%の増加となったが、10〜12月期の見通しは同−3.5%の減少である。
 設備投資は勢いに欠けるが、なお緩やかな増加基調にあると見られる。

【住宅投資と公共投資は頭打ち】
 7〜9月期のGDP統計では、実質住宅投資は前期比−0.9%、実質公共投資は同−2.5%と共に減少した(図表2)。
 新設住宅着工戸数や公共建設工事受注額は共に頭打ちから弱含みに転じており(図表2)、補正予算や金融緩和の下支えによって高水準を保つものの、弱含み横這い圏内で推移しよう。

【7〜9月期は外需主導型成長】
 7〜9月期の経常収支(季調済み)は6兆1349億円の黒字と前期比+28.7%の好転となった。これは輸出伸長に伴う貿易収支の黒字幅拡大に加え、日本企業の海外投資拡大を反映して、第1次所得収支が5兆4164億円の受取超過となったためである。
 この結果、7〜9月期の実質成長率(+0.3%)に対する「純輸出」の寄与度は、+0.5%に達し、国内需要の寄与度が消費の減少から−0.2%に落ち込んだのを帳消しにした。