2017年10月版
7〜9月期は内需の順調な拡大に加え、外需も成長に寄与

【株価は「失われた15年」に陥った97年以来の最高値を記録】
 日本経済は、昨年10〜12月期以降7〜9月期まで、潜在成長率(1%弱)を上回る1.5〜2.0%程度の成長テンポで着実に拡大を続けており、労働需給が引き締まる中で、消費者物価(除、生鮮食品)の前年比上昇率も、+1.0%に向かってジリジリと高まっている(図表2)。株価は本日(10/11)の終値で、「失われた15年」に陥った1997年以来の最高値をつけた。

【鉱工業生産と出荷は引き続き順調に拡大】
 8月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ+2.1%、+1.8%の増加となった。製造工業生産予測調査によると、この先9月は同−1.9%、10月は同+3.5%と一高一低のうちに、上昇傾向を続ける見込みである(図表1)。
 8月の出荷を国内向けと輸出に分けると、前者が前月比+1.0%、後者が同+5.4%と共に増加しているが、輸出の伸びの方がやや高い。他方、8月の輸入は前月比−1.9%と減少したため、国産品の国内向け出荷と輸入を合計した国内向け総供給は、−0.2%の微減となった。財別に見ると、資本財、耐久消費財、生産財が増加し、建設財と非耐久消費財が減少した。

【家計消費は8月に天候不順で足踏みしたものの総じて底固い推移】
 需要動向を見ると、8月の「実質消費活動指数+」(日銀試算)は105.0と前月比−0.6%の微減となった。7〜8月平均も105.3と4〜6月期平均(105.9)を−0.6%下回っている(図表2)。「家計調査」(2人以上の勤労者世帯)によると、8月は可処分所得が前年比+1.6%の増加となったにも拘らず、消費性向の低下から消費支出は同−0.8%の減少となった。8月は天候不順の影響もあって、家計消費は勢いを欠いた。
 しかし、9月の景気ウォッチャー調査によると、現状判断指数は51.3と前月より1.6ポイント上昇し、9か月振りに50を上回った。8月の消費の不冴えは一時的で、家計消費は引き続き底固く推移していると見られる。
 8月の現金給与総額は前年比+0.9%の増加となったが、消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)が同+0.8%と前月(同+0.6%)よりやや上昇率を高めたため、実質賃金は同+0.1%の増加にとどまった(図表2)。
 他方8月の雇用(季調済み)は、「労調」の就業者、雇用者、「毎勤」の常用雇用者とも揃って前月比で増加を続けている(それぞれ+0.3%、+0.1%、+0.1%)。他方、完全失業率は、完全失業者が前月比−2.1%の減少となったため、2.76%と前月(2.82%)比0.06ポイント低下した(図表2)。

【設備投資の拡大続く】
 足許の設備投資動向を反映する資本財(除輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷+輸入)は、前2か月減少の反動もあって8月は前月比+5.5%と大きく伸びた。しかし、7月の水準が低かったので、7〜8月平均の4〜6月平均比は−0.4%の微減となっている(図表2)。7〜9月期の前期比は9月の計数次第であるが、8月の水準は4〜6月期の平均を2.2%上回っている。
 先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、8月に前月比+3.4%となり大幅に伸びた前月(同+8.0%)に続き、2か月連続の増加となった(図表2)。7〜8月の平均は、4〜6月平均を+7.1%上回り、7〜9月の見通し(前期比+7.0%)とほぼ等しい。1〜3月(同−1.4%)と4〜6月(同−4.7%)に減少した機械受注は、7〜9月に持ち直したようだ。
 以上のような足許の動きと先行指標の動向から見て、5四半期連続して増加しているGDPベースの実質設備投資は、7〜9月期も増勢を維持していると見られる。

【住宅投資は引き続き増勢、公共投資は総じて高水準横這い】
 8月の新設住宅着工戸数(季調済み、年率)は942千戸と前月比−3.2%の減少となり、高水準ながら頭を打ってきた(図表2)。7〜8月の平均(958千戸)はピークとなった4〜6月(平均1,002千戸)を−4.3%下回っている。7〜9月期の住宅投資は高水準で横這い圏内の動きとなろう。
 8月の公共建設工事受注額は、前年比−7.6%と久方振りに前年水準をやや大きく下回り、頭打ちの気配が見られる(図表2)。4〜6月期には前年比+8.3%となったので、7〜9月期の公共投資が大きく下がるとは思えないが、大勢としては横這い気味の動きとなろう。

【貿易収支の黒字拡大と所得収支の受取超拡大から経常収支の黒字は一段と増加】
 8月の貿易サービス収支(季調済み、以下同じ)は、著増した前月の黒字(4002億円)を更に上回り、5763億円の黒字となった(図表2)。これは、5月の輸出が前月比+0.7%の増加となった反面、輸入は同−0.9%の微減にとどまったためである。また5月の第1次所得収支の受取額が1兆9114億円に達したため、経常収支は2兆2669億円の黒字となった。7〜8月の経常収支の黒字平均は、4〜6月の黒字平均を35.3%上回っており、7〜9月期の成長率に対する外需(純輸出)の寄与度はかなり大きくなりそうである。

【7〜9月期は内外需揃って成長にプラス寄与】
 以上の諸指標の動きから判断すると、7〜9月期の実質成長率は、内需が引き続き家計消費と設備投資を中心に拡大するうえ、外需(純輸出)の成長寄与度が前期のマイナスからプラスに転じるため、やや高めの成長率となる可能性がある(図表3)。