2017年8月版
設備投資と家計消費を中心とする内需主導型で17年度は2%成長に近づく可能性
【4〜6月期は内需主導の年率4.0%成長】
家計消費と設備投資を中心とする国内需要の回復に支えられて、このところけいき上昇の足取りが確りしてきたことは、かねてこの<月例景気見通し>で指摘してきたが、これを明白に裏付けるマクロ経済統計が公表された。本年4〜6月期のGDP統計である。
4〜6月期の実質GDP(季調済み)は、前期比+1.0%(年率+4.0%)の大幅な伸びとなった。これは国内需要の成長寄与度が、前期比+1.3%に達したためで、外需(純輸出)の寄与度は、輸出が減少したため、前期比−0.3%と6四半期振りの減少となった(以上、図表3)。
7〜9月期以降は、国内需要の増加基調が続くうえ、4〜6月期にマイナスとなった外需も、海外経済の持続的拡大にささえられて輸出が再び増加に転じてプラスに戻ると見られるため、4〜6月期ほどの高い伸びではないとしても、着実な成長を続け、需給基調は引き続き引き締まっていくと見られる。
【4〜6月期に加速した生産、出荷の増勢は機械工業を中心に7〜9月期も持続する勢い】
個々の経済指標を見ていくと、まず6月の鉱工業生産と出荷は、前月比、それぞれ+1.6%、+2.3%の増加となり、4〜6月期の生産と出荷も、前期比それぞれ+1.9%、+1.4%の比較的高い伸びとなった。製造工業生産予測調査によると、7月は前月比+0.8%、8月は同+3.6%と高い伸びを続け、鉱工業生産が製造業予測と同じ伸びをすると仮定すると、7〜8月平均の4〜6月平均比は、+2.4%に達する(以上、図表1)。
増勢をリードしている業種は、輸送機械、電気機械、電子部品・デバイス、汎用・生産用・業務用機械、などの機械工業である。
【国内向け出荷は5四半期連続で増加、輸出は4四半期振りに減少】
6月の鉱工業出荷を国内向けと輸出に分けると、国内が前月比+2.2%増、輸出が同+2.9%増であった。輸出は、前月から2か月連続して増加しているが、4月の落ち込みが大きかったため、4〜6月期は前期比−1.2%の減少となった。他方国内向けは、4〜6月期も前期比+1.8%増となり、5四半期連続して増加している。
この国内向け出荷に輸入を加えた6月の国内向け総供給は、輸入が前月比−1.2%の減少となったため、全体では同+1.3%の増加にとどまった。しかし4〜6月期をくくって見ると、輸入も前期比+1.5%の増加となったため、全体では同+1.6%増と4四半期連続して堅調な増勢を示している。
【雇用拡大を背景に家計消費は堅調】
国内需要の動向を見ると、家計消費は6月の「家計調査」の実質消費支出(2人以上の世帯、季調済み)が前月比+1.5%と3か月連続して増加し、4〜6月期の前期比は+1.0%の増加となった。日銀試算の「実質消費活動指数+」も4〜6月期は前期比+1.1%と2四半期続けて上昇している(図表2)。4〜6月期のGDP統計では実質家計消費は前期比+0.9%の増加(成長率に対する寄与度+0.5%、寄与率50%)となった(図表3)。
この背景には、4〜6月期の実質雇用者報酬が前期比+0.7%の増加となったことがある。4〜6月期の実質賃金は前年比−0.4%の減少であったが、6月の「労調」の雇用者数は前年比+1.5%、「毎勤」の常用雇用者数は同+2.6%と大きく伸びており、雇用者報酬全体を押し上げている。
6月の完全失業率は再び2.8%に低下し(図表2)、有効求人倍率は1.51と続伸した。労働需給の引き締まりは、1980年代後半の水準に近づいている。
【設備投資は確りとした増勢】
足許の設備投資動向を反映する資本財(除輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、1〜3月期の前期比−3.4%の反動もあって、4〜6月期は同+7.2%と著増した(図表2)。4〜6月期のGDP統計では、実質設備投資が前期比+2.4%(成長率に対する寄与度+0.4%、寄与率40%)と大きく伸びた。
先行指標の機械受注(除、船舶・電力)は、4〜6月期に前期比−4.7%と2四半期連続して減少したが(図表2)、7〜9月期の見通しは同+7.0%と大きく伸び、直近のピークである昨年10〜12月期の水準を+0.6%上回る見込みとなっている。
【第2次補正予算の執行で公共投資は高い伸び、住宅投資も増勢を維持】
新設住宅着工戸数(季調整済み、年率)は、6月も100.3万戸と高水準を続け、4〜6月期は前期比+2.7%増の100.2万戸とピークを更新した(図表2)。このような動向を反映して、4〜6月期のGDP統計における実質住宅投資は、前期比+2.4%の増加となった。実質住宅投資は7〜9月期も増勢を続ける公算が高い。
公共工事請負額は、5月に前年比+28.3%と著増したため、4〜6月期は同+8.3%と3四半期振りの高い伸びとなった(図表2)。これは、前年度第2次補正予算の執行によるものと見られる。このため4〜6月期GDP統計の実質公共投資も、前期比+5.1%の数年来見られなかった高い伸びとなった(図表3)。
【4〜6月期は6四半期振りに「純輸出」がマイナス】
4〜6月期GDP統計では、実質「純輸出」が、6四半期振りに、成長に対しマイナスの寄与となった(寄与度−0.3%)。これは、実質輸出が前期比−0.5%と4四半期振りのマイナスとなった反面、実質輸入は同+1.4%の増加となったためである。
国際収支統計(季調済み)でも、4〜6月期は輸入が増加した反面、輸出が微減したため、貿易収支の黒字は6908億円と前期の1兆3347億円から大きく縮小した。貿易サービス収支の黒字も、5214億円と前期の8999応援、前々期(16年10〜12月期)の1兆4530億円から大きく縮小した。
今後を展望すると、EUと中国の景気立ち直りと米国の底固い回復から、輸出は徐々に立ち直り、国際原油市況の回復の遅れから輸入の増加は頭を打ってくると見られるので、「純輸出」の悪化は4〜6月期が底となる可能性が高い。
【17年度の成長率は2.0%に近づく可能性】
4〜6月期の実質GDPの前年比は+2.0%となった。7〜9月期以降も、労働需給逼迫を背景とする家計消費の底固い推移と、需給ギャップの縮小を背景とする設備投資の増加基調は続くと見てよいであろう。外需の成長寄与度は小さいとしても、内需中心に前期比で年率1.5%強の成長が続くとみれば、17年度は2.0%に近い年成長率に達する公算が高い。1%弱の潜在成長率の下では、需給は一段と逼迫すると見られるので、現在前年比+0.4%のコアCPIの上昇率は、1%を超えてくる可能性がある。しかし、2%超のインフレ目標に達することはないし、望ましくもない。これ迄の日本経済の経験から判断すると、2%超はマイルド・インフレとミニ・バブルの世界である。