2017年5月版
2年連続の1%台前半の成長率の下、人手不足は進み、インフレ率はプラスの領域へ

【金融超緩和を背景に成長率は1%を超え、需給逼迫からインフレ率はプラスの領域へ】
 昨日(5/18)公表された本年1〜3月期の実質GDPは、前期比+0.5%(年率+2.2%)と前期(同+0.3%、1.4%)を上回る成長率となり、2016年度の成長率は+1.3%(前年度は+1.2%)に達した(図表3)。
 これは1%未満の潜在成長率をはっきりと上回っているため、2月と3月の完全失業率は2.8%と22年振りに2%台に下がり(図表2)、1〜3月期の消費者物価(除、生鮮食品)と国内企業物価は、下表の通り、夫々+0.2%、+1.0%と前期までのマイナスからプラスに転じ、「デフレではない」状態となった。
 これらの背後には、下表の通り、銀行・信金貸出残高の伸びが高まり、マネーストックの増勢が高まるという金融面からの支えがある。金融政策は、昨年1月以来、操作目標を「量から金利」に転換し、市場の実質イールド・カーブを一段と低下させているが、明らかにその効果が出て来たと言える。


【生産、出荷は3月下落のあと、4月は大幅上昇の見込み】
 3月の鉱工業生産、出荷は、前月比、夫々−1.9%、−0.8%の低下となったが、製造工業生産予測調査によると、4月は同+8.9%の大幅上昇、5月は同−3.7%の反落となっている(図表1)。
 3、4、5月の乱高下を繰り返している業種は、汎用・生産用・業務用機械、電子部品・デバイス、輸送機械などの機械工業であるが、ならしてみると、いずれも増勢を示している。このため、1〜3月の鉱工業生産は、前期比+0.2%の増加にとどまったあと、4〜5月の製造工業生産予測の平均は、1〜3月の月平均に比し+6.7%の高水準に達する。機械工業の乱高下はあるものの、鉱工業生産・出荷の増勢は保たれている。

【鉱工業製品の国内向け総供給は増勢を持続】
 3月の鉱工業出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けは前月比−1.2%、輸出は同−1.9%であった。輸出には前月急増(同+8.4%)の反動があり、1〜3月平均は前期平均に比し+1.0%の増加である。
 国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+5.7%と急増したため、全体は同−0.2%の微減にとどまった。国内向け総供給は月毎の振れが激しいが、ならしてみると、1〜3月期の前期比は+0.6%と3四半期連続して増加している。

【雇用拡大に支えられて家計消費は堅調】
 国内需要の動向を見ると、3月の「実質消費活動指数+」(日銀試算)は104.8と高水準を維持し、1〜3月平均は105.0と前期比+0.7%となり、3四半期連続して増加した(図表2)。GDP統計でも、1〜3月期の実質家計消費は前期比+0.3%となり、年率2.2%の成長率に対する寄与度は+1.4%(寄与率63.6%)に達している。
 3月の実質賃金は前年比−0.8%、1〜3月は同−0.3%と消費者物価上昇率の高まりに喰われて振るわないが、雇用者数の前年比は3月+1.0%、1〜3月+0.9%と着実に増加しており(図表2)、これが底固い消費を支えている。
 完全失業率は、2月に続いて3月も2.8%と2%台を維持した(図表2)。3月の有効求人倍率は1.45と引き続きジリジリと上昇している。

【設備投資はやや勢いを欠く】
 投資動向を見ると、GDP統計における1〜3月期の実質設備投資は、前期比+0.2%と2期連続して増加したものの、微増にとどまった。足許の設備投資を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)も、1〜3月期の前期比−3.5%と4四半期振りの減少となった(図表2)。もっともこれには、鉱工業生産の乱高下に関連して述べたように、機械工業の大きな振れが響いており、4月は再び大きく伸びる可能性がある。
 先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、3月に前月比+1.4%と2か月連続して増加したものの、1〜3月期の前期比は−1.4%と3四半期振りの減少であった(図表2)。また4〜6月期の見通しは、前期比−5.9%である。設備投資の先行きは、やや勢いを欠いているように見える。

【住宅投資は高水準で強含み、公共投資は弱含み横這い】
 GDP統計における1〜3月期の実質住宅投資は、前期比+0.7%と5四半期連続の増加となった。先行指標の新設住宅着工戸数は、1〜3月期も975千戸(年率)、前期比+2.3%の高水準を続けている(図表2)。住宅投資は住宅ローンの積極的貸出姿勢に支えられ、今後も高水準で推移すると見られる。
 1〜3月期GDP統計の実質公共投資は、前期比−0.1%の微減となり、3期連続の減少となった。1〜3月の公共建設工事受注額は、前年比+1.0%と、ほぼ前年並みであった。予算規模から考えても、公共投資の大勢は、今後も弱含み横這いで推移しよう。

【輸入増加から外需の成長寄与度は後退】
 最後に外需の動向を見ると、1〜3月期GDP統計の実質「純輸出」は、成長に対し+0.1%と3四半期連続のプラス寄与となったものの、輸出の伸び率鈍化、輸入の伸び率上昇から、寄与度は小さくなる傾向にある(図表3)。
 貿易サービス収支の四半期別の動向を見ると(図表2)、黒字額は昨年10〜12月期がピークで、1〜3月期は昨年上期並みまで縮小している。
 4月上旬・中旬の通関ベースの輸出入動向を見ると、輸出は前年同期比+6.5%、輸入は同+15.4%と輸入の伸びが輸出の伸びを上回る傾向が続いており、通関ベースの貿易収支は赤字に転落している。
 昨年7〜9月期から3四半期続いた外需依存型の成長は1〜3月期で最後となり、4〜6月期は内需のみに牽引された成長パターンに変わってくると見られる(図表3)。