2017年1月版
足許の景気回復は確りしてきたが、今後はトランプ施風に要注意
【10〜12月期の鉱工業生産・出荷は2年半振りの高い伸び】
1月20日に米国次期大統領に就任する予定のトランプ氏の発言で、円高・株安などの波乱が金融市場で起こっている。他方、日本の実体経済は、11月迄の景気指標から見る限り、景気回復の足取りが、引き続き確りしてきている。
11月の鉱工業生産は、前月比+1.5%と4か月連続して増加し、出荷は同+1.0%と3か月連続して増加した(図表1)。10〜11月の平均水準は、7〜9月平均に比し、生産は+1.6%、出荷は+3.3%高い水準にある。
製造工業生産予測調査によると、12月は前月比+2.0%、1月は同+2.2%と6か月連続で上昇する予想となっている(図表1)。仮に12月の鉱工業生産の実績が予測と同じ伸び率になると仮定すると、10〜12月期は前期比+2.5%と3四半期連続の増加となる。製造工業の生産予測は、鉱工業の生産実績より高い伸びとなることが多いので、これ程の伸びにはならないとしても、消費税率引き上げ後(14年4〜6月以降)で一番高い伸びとなる可能性がある。
【10〜11月の鉱工業製品の国内向け総供給は、資本財(除輸送機械)を中心に急増】
11月の鉱工業出荷を国内向け出荷と輸出に分けると、輸出が前月比+6.3%の大幅な伸びとなった反面、国内向けは前月著増(前月の前々月比+3.0%)の反動もあって−0.3%の減少となった。しかし、10〜11月平均の7〜9月平均比は、輸出が+3.4%、国内向けが+3.5%と共に高い伸びとなっており、いずれも確りとした増加基調を示している。
11月の国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+3.8%と大幅に増加したため、全体で同+1.1%の増加となった。この結果、国内向け総供給の10〜11月平均の7〜9月平均比は、+2.9%と消費税率引き上げ後の四半期ベースでは例を見ない高い伸びとなった。
財別に見ると、10〜11月の国内向け総供給の伸びに大きく寄与したのは資本財(除輸送機械)で、10〜11月平均の7〜9月平均比は+4.2%と急増した(図表2)。
【家計消費活動指数は10〜11月もジリジリと上昇】
国内需要の動向を見ると、11月の「実質消費活動指数+」は、前月比−0.2%の微減となったが、10〜11月平均の7〜9月平均比は+0.7%の水準にあり(図表2)、家計消費の基調は底固いと見られる。
11月の現金給与総額は前年比+0.2%となったが、このところ消費者物価指数の前年比が生鮮食品の高止まりと石油製品のジリ高から上昇しているため、実質賃金は前年比−0.2%と11か月振りのマイナスとなった。
11月の雇用者数は前年比+1.4%の増加であった(図表2)。11月の求人倍率は、有効・新規とも引き続きジリジリと上昇している。
11月の「家計調査」の実質可処分所得(勤労者世帯)は、前年比+1.4%の増加となった。
【10〜12月期の機械設備に対する投資は強い】
投資動向を見ると、足許の機械設備の投資動向を示す「資本財(除輸送機械)国内総供給」(図表2)は、前述の通り10、11月とかなり増加し、10〜11月平均の7〜9月平均比は+4.2%と高い伸びとなった。
先行指標の機械受注(除船舶・電力)は、11月に前月比−5.1%の減少となったが(図表1)、これは非製造業(除船舶・電力)が前月比−9.4%と前月増加した鉄道車両の反動減から大きく減少したためで、製造業は同+9.8%の増加であった。
四半期ベースでは、7〜9月期に前期比+7.3%と増加したあと、10〜12月期の見通しは同−5.9%の減少となっているが、10〜11月の平均は7〜9月平均比−1.5%の減少にとどまっている。
【住宅投資と公共投資は高水準持続】
11月の新設住宅着工戸数(年率)は、937千戸と高水準ながらやや弱含みで推移している(図表2)。住宅ローン金利低下の刺激も一巡してきたようで、3四半期増加を続けている実質GDPベースの住宅投資は、次第に高水準横這いに転じると見られる。
11月の公共建設工事受注は、前月比−12.7%と前月に引き続き前年を下回った(図表2)。しかし、9月の受注額が前年比+37.9%とかなり大きかった上(図表2)、第2次補正予算がこれから執行時期に入ることを考えると、公共投資は緩やかな増勢を保つと見られる。
【経常収支の黒字拡大続く】
11月の貿易収支(季調済み、以下同じ)は、輸出が前月比+4.2%増、輸入が同+3.4%増となったため、前月比+12.2%の黒字拡大となり、10〜11月平均の7〜9月平均比も+1.4%の黒字増加となった。
このため、10〜11月の経常収支平均は、7〜9月平均に比し、+12.4%の黒字増加となった。
【10〜12月の成長率はやや高まるが、その後はトランプ施風次第】
2月13日に公表される予定の10〜12月期実質GDPは、国内で家計消費が底固く推移し、設備投資も前期のマイナスからプラスに転じ、加えて海外の「純輸出」も成長に対してプラス寄与となるため、全体として7〜9月期(前期比+0.3%、年率+1.3%)を上回る成長となるであろう(図表3)。
問題は、トランプ発言に振り回される為替相場や株式相場が、1〜3月期以降の国内のビジネスセンチメントにどう響いてくるかであろう。しばらくは、トランプ施風と国内の反応から目が離せない。