2016年9月版
景気回復の足取りはやや確りしてきた

【鉱工業生産、出荷は確りした回復傾向に】
 4〜6月期の実質GDPの2次速報値は、1次速報値の前期比0.0%(年率+0.2%)から同+0.2%(同+0.7%)に上方修正され、うるう年要因で実勢より上振れした1〜3月期の同+0.5%(同+2.1%)に続き、2期連続のプラス成長となった。
 7〜9月期に入ってからも、7月の鉱工業生産、出荷は前月比それぞれ−0.4%、+0.7%となったが、この水準は4〜6月平均に比しそれぞれ+0.2%、+0.9%高い水準にある(図表1)。
 また8月と9月の製造工業生産予測調査によると、前月比それぞれ+4.1%、−0.7%となっており(図表1)、鉱工業生産の実績がこの予測通りとなった場合の7〜9月期平均は、4〜6月平均比+2.7%の大幅増加となる。実績が予測を下回る傾向が続いているので、これ程大幅な増加にはならないとしても、7〜9月期の鉱工業生産、出荷が3四半期連続して増加する蓋然性は高い。
 日本の景気は、14年(成長率−0.0%)、15年(同+0.5%)の足踏み状態を脱し、16年から緩やかな回復傾向に入ってきたと見られる。

【資本財(除輸送機械)と耐久消費財が立ち直りを主導】
 7月の鉱工業出荷の前月比を国内向けと輸出に分けると、国内向けが前月比+1.1%とやや大きく伸びたのに対して、輸出は同−0.6%の減少であった。
 この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比−0.7%の減少となったため、同+0.7%の増加にとどまった。それでも、この7月の水準は4〜6月平均比+1.0%増となり、7〜9月期の国内向け総供給は3四半期振りの増加となる可能性が高まっている。
 財別に見ると、7〜9月期の総供給の立ち直りを主導しているのは、資本財(除、輸送機械)と耐久消費財で、建設財と非耐久消費財は比較的弱い。

【賃金・雇用の改善持続を背景に7月の消費はやや回復】
 国内需要の傾向を見ると、日銀試算の7月の「実質消費活動指数+」は、前月比+1.4%、4〜6月平均比+1.2%と高まった(図表2)。
 背後の賃金・雇用の動向を見ると、7月の現金給与総額は、賞与(前年比+4.2%)を中心に同+1.4%となった。他方、7月の消費者物価は、エネルギー価格の低迷持続から総合および持ち家の帰属家賃を除くベースで共に同−0.4%と下落しているため、実質賃金は2か月連続で前年比+2.0%の上昇となった(図表2)。
 他方7月の雇用は、「労調」の就業者、雇用者、「毎勤」の常用雇用者の前月比および前年比が、それぞれ+0.3%と+1.5%、+0.2%と+1.6%(図表2)、+0.3%と+2.1%、といずれも揃って増加しており、他方「労調」の完全失業者は−3.4%と−8.6%と大きく減少し、完全失業率は3.0%と前月比0.1%ポイント低下した。

【資本財(除輸送機械)の国内総供給は4〜6月期から回復傾向】
 投資傾向を見ると、4〜6月期の実質GDP統計の設備投資は、1次速報値の前期比−0.4%から2次速報値の同−0.1%に上方修正されたが、なお2四半期連続の減少である。これに対して、資本財(除輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、4〜6月期に前期比+2.4%と6四半期振りに増加となったあと、7月も前月比+0.7%、4〜6月平均比+0.6%の増加となっている(図表2)。
 また先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)の前期比は、10〜12月期、1〜3月期と増加したあと、4〜6月期は減少したが、7月の4〜6月平均比は+10.1%、7〜9月期の見通しは4〜6月期に比し+5.2%と再び増加傾向を示している(図表2)。
 このように、資本財(除輸送機械)出荷や機械受注の傾向とGDP統計の設備投資動向は異なった動きをしているが、各種の本年度設備投資計画が前年比増加となっていることから見て、設備投資がここで失速しているとは見られない。いずれGDP統計が上方修正されてくるのではないか。

【住宅投資は堅調、公共投資は横這い圏内】
 新設住宅着工戸数は、7月まで3か月続いて年率百万戸台の高水準で推移しており(図表2)、4〜6月期まで4四半期連続して増加している住宅投資は、今後も住宅ローン金利の低下を背景に堅調に推移すると見られる。
 他方、公共投資は15暦年に前年比−2.5%減少したあと、本年1〜3月期と4〜6月期には前期比やや増加した。公共建設工事の受注額は、1〜3月期に5四半期振りに前年を上回ったが、4〜6月期以降、7月も前年を下回っている。本年度公共事業予算の前倒し執行と秋の本年度第1次補正予算の影響が、今後どう出てくるかが注目される。

【「純輸出」は横這い】
 最後に外需の動向を見ると、4〜6月期の実質GDP統計の「純輸出」は、輸出の減少が輸入の減少を上回り、成長に対し−0.3%のマイナス寄与度となった。名目輸出入額の季調済みで見ると、7月も4〜6月平均に比し、輸出は−1.2%、輸入は−0.5%と輸出の減少の方が大きく、7月の貿易サービス収支の黒字は4〜6月平均比−10.7%の減少となった(図表2)。
 もっとも、7月の企業物価指数によると、円ベースで輸出物価は−0.9%、輸入物価は+0.3%となっているので、これでデフレートすれば実質ベースの輸出入の伸びにほとんど差はない。実質ベースである前述の鉱工業出荷の輸出入を見ても、7月の輸出は前月比−0.6%、輸入は同−0.7%とほとんど同じである。従って、7月の実質ベースの「純輸出」には、大きな変化はなかったと見てよい。