2016年6月版
国内景気に立ち直りの気配がある中、海外からの攪乱で円高・株安が進む

【円は対ドル・ユーロで上昇、株価は下落】
 6月に入って、金融市場は荒れ模様である。米国では、5月の雇用統計が予想外に弱かったため、6月の政策金利引き上げは中止された。また6月23日に迫った英国のEU離脱の是非を決める国民投票では、事前調査で離脱派が残留派を上回るという予想がやや強まり、離脱の場合の世界経済と金融市場への衝撃が心配されている。
 このため、米欧の株価下落、市場金利低下が進んでいるが、6月央の日本では、株価が日経平均で1万5千円台に下がり、円相場は対ドルで104円台、対ユーロで117円台の円高となっている。
 このような金融市場の動揺が一時的なものに終わるか、立ち直りが期待されている日本国内の景気を再び足踏み状態に戻すことになるのか、しばらくは予断を許されない状況が続くと見られる。

【鉱工業生産は3月以降4か月連続上昇の予測】
 4月の鉱工業生産と出荷は、前月比、それぞれ+0.3%、+1.5%と、いずれも2か月連続して増加した。製造工業生産予測調査によると、5月は前月比+2.2%、6月は同+0.3%と更に2か月連続の上昇となっている(図表1)。仮に鉱工業生産がこの予測のように、5月と6月にも上昇すると、生産は4か月連続の上昇となる。これは、14年4月の消費税増税前の駆け込み需要に備えて連続上昇した13年9月〜14年1月以来のこととなる(図表1)。
 4か月連続上昇の可能性を主導している業種は、電気機械、汎用・生産用・業務用機械などである。鉱工業生産の実績は、製造工業生産の予測に比して下振れすることが多いので、果たして4か月連続の上昇となるかどうかは、現時点では判定し難い。

【資本財(除輸送機械)と消費財の国内向け総供給が増加】
 4月の鉱工業出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けは前月比+1.0%、輸出は同+0.8%であった。
 この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比−6.2%と生産財(同−9.4%)と資本財(除輸送機械)(同−2.6%)を中心に大きく落ち込んだため、全体として同−0.6%の減少となった。
 財別に見ると、総供給が減少せず、増加したのは、資本財(除輸送機械)の同+2.7%と、消費財の同+4.6%である。逆に減少したのは、建設財の同―1.9%と生産財の同−2.3%であった。

【4月の消費、雇用、賃金は底固い動き】
 国内の需要動向を見ると、4月の家計消費は、「実質消費活動指数+」が前月比+0.6%(図表2)、実質消費支出(2人以上の世帯)が同+2.9%と共にやや増加した。
 4月の雇用は、「毎勤」の常用雇用者、「労調」の雇用者と就業者が、季調済み前月比でそれぞれ+0.2%、+0.4%、+0.3%と揃って増加した(図表2)。失業率は3.2%と前月比横這いであったが(図表2)、有効求人倍率は1.34、新規求人倍率は2.06といずれも前月比上昇し、労働力の需給は引き続き着実に引締っている。
 4月の実質珍金は前月比+0.6%と3か月連続して前年を上回っている(図表2)。

【設備投資、住宅投資、公共投資に揃って立ち直りの兆し】
 投資動向を見ると、足許の設備投資動向を示す4月の資本財(除輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、前述の通り前月比+2.7%と2か月連続して増加し、4月の水準は1〜3月平均比+1.7%となった(図表2)。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)が10〜12月期、1〜3月期と2期連続して前期比増加しているので、1〜3月期に減少したGDP統計の実質設備投資(前期比−0.7%)は、4〜6月期に再び増加する可能性が高いように思われる。
 住宅投資は、実質GDP統計で2四半期連続して減少したが、新設住宅着工戸数は、昨年12月をボトムに立ち直っており、4月は1〜3月平均比+5.1%となった。2月から始まったマイナス金利政策に伴い、住宅ローンの金利が低下傾向にあることも考慮すると、4〜6月期から住宅投資が緩やかに増加し始める公算は高いと見られる。
 GDP統計の実質公共投資は、このところ3四半期連続して減少したが、年度末の集中発注と本年度予算の前倒し執行を反映して、公共建設工事受注額は3月に前年比+16.8%と著増したあと、4月も同+1.9%と前年を上回っているので(図表2)、4〜6月期には下げ止まり、ないし反転上昇に転じるかも知れない。秋の補正予算で公共事業予算が追加されることとなっているので、2年間減少傾向を辿った公共投資は、間もなく反転して上昇傾向に転じると見られる。

【4月の貿易サービス収支の黒字は高水準】
 4月の貿易サービス収支の黒字(季調済み、以下同じ)は、前月比−4.2%の微減となり、経常収支の黒字も同−14.1%の減少となった(図表2)。この4月の水準を1〜3月期の平均と比較すると、貿易・サービス収支の黒字は+32.9%、経常収支の黒字は−4.7%となる。1〜3月期まで3期続けてプラスの成長寄与度となっていた「純輸出」が、4〜6月期にどうなるかを判定をするには、4月の計数だけでは尚早であろう。