2016年3月版
年明け後も家計消費を中心に弱基調

【鉱工業生産は足踏み状態】
 日本経済は、昨年10〜12月のマイナス成長(年率−1.1%)のあと(図表3)、今年に入っても、家計消費を中心に弱い動きが続いている。
 1月の鉱工業生産は前月比+3.7%と前月(同−1.7%)、前前月(同−0.9%)減少の反動もあって3か月振りの増加となったが、2月と3月の製造業生産予測調査によると、2月は同−5.2%、3月は同+3.1%と足踏み状態が続く予測となっている。仮に2月と3月の鉱工業生産がこの予測通りと仮定すると、1〜3月期は前期比−0.3%と再び減少する(図表1)。

【鉱工業出荷も一進一退】
 1月の鉱工業出荷も前月比+6.6%と前2か月減少の反動から3か月振りの増加となった。これを国内向け出荷と輸出に分けると、国内向けが同+2.4%、輸出が同+4.1%といずれも3か月振りの増加となった。
 昨年11月以来、鉱工業生産と出荷に乱高下をもたらしている主な業種は、輸送機械、電子部品・デバイス、汎用・生産用・業務用機械などの資本財で、一部部品工場の事故による生産停止がサプライ・チェーンを通じて最終財の生産、出荷に波乱を起こしていることも響いている。
 国内向け出荷に輸入を加えた1月の鉱工業製品の総供給は、前月比+3.4%と、これも3か月振りの増加となった。

【家計消費の弱基調続く】
 1月の「家計調査」の実質消費支出(2以上の世帯)は、前月比−0.6%と10〜12月期の前期比−1.9%減少のあとも、減少を続けている(図表2)。10〜12月期のマイナス成長(年率−1.1%)の主因は、実質家計消費の年率−3.6%の減少(成長率に対する寄与度は−2.1%)であったが、年明け後も家計消費のこの弱基調が続いている。これには、家計(勤労者世帯)の消費性向が、前年よりも−1.5%ポイント低下していることが響いている。

【雇用は引き続きジリジリと改善し完全雇用へ】
 雇用・賃金の動向を見ると、1月の雇用は「労調」の就業者、雇用者、「毎勤」の常用雇用者の季調済み前月比は、それぞれ+1.0%、+0.9%、+0.2%と、いずれも増加している。
 この結果、1月の完全失業率は3.2%と前月比1%ポイント低下し、有効求人倍率は1.36と前月比0.02%ポイント上昇した(図表2)。これらの水準は、ほぼ完全雇用の領域に入ってきたと言える。
 1月の現金給与総額は、定例給与が前年比同水準、特別給与が同+7.1%となったため、全体で同+0.4%となった。他方、1月の持ち家の帰属家賃を除く消費者物価が前年と同水準となったため、実質ベースでも賃金が前年比+0.4%となった(図表2)。
 このように労働力の需給が徐々に引き締まり、賞与を中心とする賃金が伸びていることから判断すると、家計消費の停滞は消費マインドの弱さ(消費性向の低下)に起因すると見られる。

【設備投資は確り、住宅・公共投資は減勢】
 投資動向を見ると、実質設備投資は、7〜9月期(前期比+0.7%)、10〜12月期(同+1.5%)と2四半期上昇したあと、1月の資本財(除輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、前月比+3.8%の増加となった(図表2、3)。
 先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、10〜12月期に前期比+2.6%と増加したあと、1〜3月の見通しも同+6.4%の増加と見込まれている。1月の実績は製造業の大口案件があったことも響いて、前月比+15.0%の大幅増加となった。
 このような動向から判断すると、実質設備投資は1〜3月期も増勢を保つと見られる。
 住宅投資は、10〜12月期に前期比−1.2%と4四半期振りの減少となった。新設住宅着工戸数が昨年6月にピーク・アウトしたから見て(図表2)、今後は緩やかな減勢を辿る可能性が高い。
 公共投資は、7〜9月期、10〜12月期と2四半期続けて減少したが、公共工事の受注額が昨年1〜3月期から前年を下回り続けていることから見て(図表2)、今後は大型補正予算が組まれてない限り、緩やかな減勢を辿ると見られる。

【貿易サービス収支は黒字基調へ】
 最後に外需の動向を見ると、貿易・サービス収支(季節調整済み)は、主として輸入の落ち込みから、昨年11月から本年1月まで、3か月連続して黒字を続けている(図表2)。このため、経常収支は高水準の黒字を続けており、実質GDPベースの「純輸出」は、7〜9月期、10〜12月期と2四半期続けて成長にプラスの寄与をしたが、1〜3月期も増勢を示す可能性が高い。
 以上を総合すると、1〜3月期は、家計消費に不安はあるものの、「うるう年」の関係で1日多いこともあって、プラス成長に戻る公算が高いと見られる。