2015年10月版
大企業製造業の業況は悪化、家計消費は物価の落ち着きから底固い
【鉱工業生産が弱く、大企業製造業の業況判断は悪化】
7〜9月期の鉱工業生産は4〜6月期に続き前期比マイナスとなることが確実となり、9月調査「日銀短観」でも、15年度上期の大企業製造業の国内売上計画は、前年比−0.4%の減少となった。このため、同調査の大企業製造業の「業況判断」DIは、前回6月調査比「良い」超幅が3%ポイント縮小した。
国内需要では、家計消費は比較的底固いが、設備投資がやや弱い。
このため、4〜6月期に続き、7〜9月期もマイナス成長を予測する調査機関が出てきた。
【鉱工業生産、出荷は2か月連続して減少】
8月の鉱工業生産は前月比−1.2%と2か月連続して減少した(図表1)。財別にみると、資本財(除輸送機械)が前月(前月比−1.8%)に続き8月も同−3.7%と大きく減少したことが目立つ。
8月の鉱工業出荷は、前月比−0.7%とこれも2か月連続して減少したが(図業1)、これは国内向け出荷が同+0.3%と微増したのに対し、輸出が同−5.1%とやや大きく減少したためである。
この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給を見ると、輸入が同−1.7%の減少となったため、全体は同−0.2%の微減となった。財別にみると、輸入が大きく減少したのは、生産財(原油、石油製品、LPGなど)の同−4.8%である。
【家計の実質消費支出と実質可処分所得は底固い】
国内需要を見ると、「家計調査」の実質消費支出(2人以上の世帯)は、季調済み前月比+2.5%と2か月連続で増加し(図表2)、7〜8月平均の4〜6月平均比は+0.5%と底固さを見せている。
また、8月の実質可処分所得(勤労者世帯)の前年比は、+1.8%と5か月連続で前年を上回った。持ち家の帰属家賃を除く全国消費者物価が、エネルギー関係の値下がりから、8月も前年比+0.3%と落ち着いていることが寄与している。
【実質賃金は物価の落ち着きから増加】
「毎勤」の8月の月間給与総額は、前年比+0.5%の増加となり、消費者物価の落ち着きから、実質賃金の前年比も+0.2%の上昇となった(図表2)。
他方、8月の雇用は「毎勤」の常用雇用者数が前年比+1.8%、季調済み前月比が−0.1%、「労調」の就業者数、雇用者数が夫々+0.3%と−0.0%、+0.7%と+0.1%となり、前年を上回る水準でほぼ横這いで推移した。8月の完全失業率は3.4%と前月比0.1%ポイント上昇した(図表2)。また有効求人倍率は1.23と前月比0.02%ポイントに増加し、引き続きジリジリと上昇を続けている。
このような実質賃金の微増と労働需給の引き締まり傾向が可処分所得を支え、底固い実質消費の背景となっている。
【足許の設備投資関連指標は弱いが、本年度計画は上方修正】
足許の実質設備投資の動向を示す資本財(除輸送機械)国内総供給(国内向け出荷と輸入の合計)の前月比は、4月から4か月連続して増加していたが、8月は−3.0%の減少となった(図表2)。また先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)も、8月は前月比−5.7%減と3か月連続で減少している。
しかし、9月調査「日銀短観」では、製造業・非製造業・金融業の本年度設備投資計画合計(ソフトウェア投資を含み、土地投資を除く)が、前年比+8.4%と前回調査比+2.2%ポイント上方修正され、前年(同+4.3%)を大きく上回る計画となっている。
もしこの計画の通りであるならば、設備投資は年度下期に伸びる可能性があり、今後が注目される。
【住宅投資は緩やかな増勢、公共投資は頭打ちから減少へ】
住宅投資は、新設住宅着工戸数が8月も高水準で推移していることから見て(図表2)、本年1〜3月期以来の緩やかな増勢を続けていると見られる。
他方、公共投資は、公共建設工事受注高が8月も前年比−2.9%と7か月連続して前年を下回っていることから見て(図表2)、今後緩やかに減少すると思われる。
【8月の経常収支はやや改善、7〜9月期の実質成長率はプラスの可能性も】
8月の季調済み経常収支は、1兆5901億円の黒字と前月の黒字を+20.3%上回った。また7〜8月の平均は4〜6月平均比+3.7%の増加となった。これは7〜8月期平均の第1次所得収支が1兆8297億円と4〜6月平均(1兆7799億円)を+2.8%上回る拡大を示し、また貿易・サービス収赤字の7〜8月平均が、2085億円と4〜6平均(2301億円)を−9.4%下回ったためである。
7〜9月期の実質GDP成長率は、鉱工業生産の弱さから4〜6月期に続き再びマイナス成長を予測する調査機関が出てきたが、GDPの6割を占める実質家計消費と純輸出が増加し、若干のプラス成長になる可能性もある(図表3)。9月の諸計数の公表が待たれる。