2015年9月版
4〜6月期マイナス成長のあと7月も勢いを欠く
【鉱工業生産は在庫調整から一進一退】
日本経済は4〜6月期に前期比年率−1.2%のマイナス成長となったあと、7月も全体として景気は方向感を欠いた区々の動きをしている。
7月の鉱工業生産は、製造工業生産予測調査の前月比+0.5%増を1.1%ポイント下回る同−0.6%減となった(図表1)。業種別には、電子部品・デバイス(同−3.7%減)、情報通信機械(同−8.4%減)、輸送機械(同−1.4%減)の低下が大きかった。
製造工業生産予測調査によると、8月は同+2.8%上昇、9月は同−1.7%低下となり、鉱工業生産の実績がこの通りになった場合の7〜9月期の前期比は+0.6%増と4〜6月期の同−1.4%減のあと微増にとどまる。
このような生産の一進一退は、電子部品・デバイス、輸送機械(自動車)、情報通信機械などで過剰在庫減らしの生産調整が続いているためと見られる。
【国内向けの鉱工業製品総供給は3か月連続して減少】
7月の鉱工業出荷も、前月比−0.3%と3か月連続の減少となり、生産同様、2月以降の一進一退の中で僅かな低下傾向を示している(図表1)。
この出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けは前月比−1.6%と2月以来の減少傾向は顕著である。他方、輸出は同+4.3%と2か月連続で増加し、4〜6月平均比+3.5%増の水準となり、2月以来の減少傾向に反転上昇の気配が窺える。
この国内向け出荷(前月比−1.6%)に輸入を加えた7月の国内向け総供給は、輸入増加が同+0.7%にとどまったため、全体として同−0.7%の減少となった。減少した品目は建設財、非耐久消費財、生産財で、増加した品目は資本財(除、輸送機械)、耐久消費財であった。
【賃金・雇用の改善から可処分所得は増加するも消費態度は不冴え】
国内の需要動向を見ると、7月の実質家計消費(2人以上の世帯)は、季調済み前月比で+0.6%の増加となったが(図表2)、前年同月比では−0.2%の減少にとどまった。他方、実質可処分所得(2人以上の勤労者世帯)は前年を+5.4%上回る水準にあるが、平均消費性向が前年よりも−2.8%ポイント低下したため、消費は冴えなかった。
7月の現金給与総額は、前年比+0.6%と前月減少(同−2.4%)のあと再び前年を上回った。また実質賃金も、7月の全国消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く)がガソリン等のエネルギー価格の下落から前月比+0.3%の上昇にとどまったため同+0.3とほぼ3年振りの上昇となった(図表2)。
労働需給は、引き続きジリジリと引き締っている。7月の完全失業率は3.3%と前月比1%ポイント低下し(図表2)、有効求人倍率は1.21倍と同0.05ポイント上昇した。
【設備投資の増勢は足踏み、住宅投資は増勢持続】
投資動向を見ると、GDP統計の設備投資は、4〜6月期に前期比−0.9%と3四半期振りの減少となったが(図表3)、7月の資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給は、前月比+0.3%増、4〜6月平均比+1.4%増となり、4〜6月期の前期比−0.8%減から立ち直りの気配を見せている(図表2)。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、7月に前月比−3.6%と2か月連続して減少した(図表2)。しかし、昨年7〜9月期から4四半期連続して増加しているうえ(図表2)、7〜9月期の見通しは前期比+0.3%となっているので、緩やかな回復の趨勢に大きな変化が起こっているとは思えない。
住宅投資は、GDP統計ベースで1〜3月期、4〜6月期の2四半期連続して増加しているが、7月の新設住宅着工戸数が年率914千戸と引き続き高い水準にある(図表2)ことから見て、回復の基調は続いていると見られる。
公共投資は、公共建設工事受注高が7月も前年比−13.6%と6か月連続して前年を下回っていること(図表2)から見て、4〜6月期のGDP統計の前期比+2.1%は一時的な増加ではないかと見られる(図表3)。
【米国向け輸出は好調】
GDP統計の外需(純輸出)は、成長に対し1〜3月期(−0.1%)、4〜6月期(−0.3%)と2四半期続けてマイナスの寄与度となった(図表3)。7月は通関ベースの数量指数で輸出は前月比−0.7%減、輸入は同−2.9%減と貿易収支はやや好転した。前述の鉱工業出荷ベースでも、7月は輸出が前月比+4.3%、輸入が同+0.7%と収支尻は好転している。
輸出は、中国の成長減速や天津事故の影響が懸念されるが、米国向けは7月も前年比+18.8%と大きく伸びている。