2015年4月版
目先の景気回復の主役は製造業から非製造業へ
【3月調査「日銀短観」では非製造表の回復が目立つ】
3月調査「日銀短観」によると、製造業の「業況判断」DIは3か月前に比して改善せず、足踏み状態であるが、非製造業の「業況判断」DIは、大・中堅・中小の各規模企業において、不動産、小売、運輸・郵便、対個人サービスなど家計支出関係の業種を中心に、改善した。また、「雇用人員判断」DIは、各規模企業において、「不足」超幅が拡大しており、とくに非製造業の「不足」超は、全規模企業合計で24%ポイントに達している。14年度下期の設備投資も、非製造業の上方修正率が高い。
景気回復は緩やかながら、ここに来て、製造業よりも、非製造業の方が回復幅が大きいようである。
【鉱工業生産、出荷の回復テンポはやや鈍化】
2月の鉱工業生産は、前月の大幅増加(前月比+3.7%)の反動もあって、同−3.4%の減少となった。製造業生産予測調査によると、この先3月には更に同−2.0%と低下し、4月に入って同+3.6%の増加になる(図表1)。鉱工業生産の実績がこの予測通りになると仮定すると、1〜3月期は前期比+1.1%と10〜12月期(同+1.7%)よりも増勢は鈍化する。ここへ来て、生産の回復テンポは緩やかになっている。
2月の鉱工業出荷も、前月比−3.4%の減少となったが、このうち国内向け出荷は同−1.3%と比較的小幅の減少であり、10〜12月平均比+3.3%高の水準にある。
これに対して輸出は前月比−9.7%の大幅減少となり、前月の急増(同+9.3%)を帳消しにした形である。財別に見ると、投資財(同−11.9%)、とくに資本財(除輸送機械)が同−15.1%の大幅減少となった。大型案件による攪乱かも知れず、1〜2か月様子を見る必要があろう。
国産品の国内向け出荷に輸入を加えた2月の国内向け総供給は、前月比−0.1%とほぼ横這いであった。これは、輸入が同+2.7%の増加となったためである。
国内向け総供給が前月比プラスとなったのは、建設財(同+1.9%)と非耐久消費財(同+5.2%)であった。
【家計消費は緩やかな回復傾向ながら前年水準には届かず】
国内の需要動向を見ると、2月の「家計調査」の実質消費支出(全世帯)は、前月比+0.8%の増加となり、1月の減少(同−0.3%)を取り戻して9月以来の緩やかな回復傾向を維持している(図表2)。しかし、その水準は前年を−2.9%下回っている。前年水準を上回るのは、前年から消費増税前の駆け込み需要の影響が増え、また消費者物価の前年比から消費増税の影響(2%)が消える本年4月以降であろう。
2月の小売業販売額は、前年比−1.8%の減少となった。これは、前年が駆け込み需要で異常に高まったためで、「短観」の小売業の「業況判断」が好転していることから見ると、4月以降に明らかになる実勢は、それ程悪くないのではないか。
【雇用・賃金は引き続きジリジリと回復】
2月の有効求人倍率は1.15と引き続き上昇傾向を辿り、「短観」にも明らかなように、人手不足感は広がっている。しかし、労働需給のミス・マッチもあって、2月の「労調」(季節調整済み)の雇用者数は前月比−0.2%の減少となり、就業者数は横這いとなった。他方「毎勤」(同)の常用雇用者数は、製造業では横這いであったが、非製造業では増加し、全体で同+0.2%の増加となった。
2月の完全失業率は3.5%と前月より0.1%ポイント低下し、10〜12月平均と同じ水準に戻った(図表2)。
2月の実質賃金が前年比−2.0%の減少となったが、減少幅は昨年5月(同−4.0%)をピークに徐々に縮小している(図表2)。これは、名目賃金の前年比減少幅が定例給与と賞与の双方で少しずつ縮んでいるうえ、消費者物価の前年比上昇率もガソリンの値下がりもあって徐々に低下しているためである。
【設備投資は小幅増加、住宅投資は底入れ、公共投資は頭打ちの傾向】
投資動向をみると、足許の設備投資動向を映す資本財(除輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、1〜2月平均で10〜12月平均比+5.1%の増加となった(図表2)。「短観」によると、製造業と非製造業の全規模企業合計で、2014年度下期の設備投資は前年比+6.4%と上期(同+1.9%)に比して増加率を高めた。GDP統計では、昨年4〜6月期から10〜12月期まで実質本年1〜3月期には増加に転じる公算が高い。
GDP統計の実質住宅投資は、昨年4〜6月期から10〜12月期まで3四半期連続して減少しているが、その減少テンポは期を追って緩やかになっている。新設住宅着工戸数は、昨年7月をボトムに緩やかな回復傾向を辿っているので(図表2)、本年1〜3」月期には底入れする可能性が高い。
GDP統計の実質公共投資は、3四半期連続してジリジリと増加しているが(図表3)、公共建設工事の受注額が頭打ちとなっていることから見て(図表2)、横這い圏内の動きとなってこよう。
【2月の貿易収支は久しぶりに大きく悪化】
最後に外需の動向を見ると、鉱工業出荷の動向で既に述べたように、2月は輸出が減少し、輸入が増加した。これを通関統計で見ると、数量ベースで輸出が前年比−2.1%の減少、輸入が同+4.5%の増加となった。これを季節調整済みの前月比を見ると、輸出が−7.0%、輸入が−3.4%の減少であった。
日銀が推計した季節調整済み貿易収支も、大きく悪化した(図表2)。
1月の貿易収支の好転が大きかっただけに(図表2)、1〜3月の平均は3月の実績を見なければ分からない。このところGDP統計上の実質「純輸出」は、3四半期続けて好転しているたけに、この趨勢が3月の計数に出るかどうかが注目される。