2015年3月版
円安効果に伴う輸出数量の伸びもあって、1〜3月期は比較的高目の成長となる見込み

【1月の生産、出荷は大きく増加し、在庫率は2か月連続して低下】
 10〜12月期の成長率(2次速報値)は、3四半期振り(消費増税後初)のプラス成長に戻ったが、在庫投資の落ち込みが大きく(成長寄与度前期比−0.2%)、設備投資も予想外の微減となったので、成長率は前期比+0.4%(年率+1.5%)にとどまった。設備投資の減少は、10〜12月期の資本財国内総供給(除、輸送機械)が前期比+4.3%の増加となっていたことから見て、やや違和感がある(図表2、図表3)。なお在庫投資の減少がなければ、10〜12月期の成長率は前期比+0.6%(年率+2.4%)であり、このあたりが実勢と思われる。この差は、成長余力として1〜3月期に持ち越されたと見るとこも出来る。
 年明け後も、鉱工業生産、出荷は大きく回復し、在庫率は前月に続いて大きく低下している(図表1)。1月の鉱工業生産は前期比+4.0%とかなり増加した。製造工業生産予測調査によると、2月は前月比+0.2%増と1月の高水準でほぼ横這いとなった後、3月は同−3.2%の低下となる(図表1)。それでも、鉱工業生産の実績がこの予測指数通りになった場合の1〜3月期の生産は、前期比+3.4%と最近にない高い伸びとなる。
 1月に生産が大きく増加したにも拘らず、3月に生産が低下すると予測される主な業種は、汎用・生産用・業務用機械と電気機械である。

【1月の鉱工業製品国内向け総供給は資本財と耐久消費財を中心に高い伸び】
 1月の鉱工業出荷は、前月比+5.8%と生産を上回る高い伸びとなったが(図表1)、このうち輸出は同+9.3%の大幅な伸びとなっており、国内向けは同+4.4%であった。財別に見ると、輸出の伸びがとくに高かったのは、資本財(除輸送機械)の前月比+14.9%である。
 国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+5.8%の伸びとなったため、同+4.6%となった。
 財別に見ると、国内向け総供給がとくに高い伸びとなったのは、資本財(除輸送機械)の前月比+9.4%と耐久消費財の同+8.9%である。

【家計消費は消費増税の悪影響が尾を引き、引き続き不振】
 需要動向を見ると、実質家計消費(季調済み、2人以上の所帯)は前月比−0.3%と5か月振りの減少となり、10〜12月期の平均と同水準になった(図表2)。また1月の小売業販売額は、前年比−2.0%と7か月振りに前年水準を下回ったが、これは前年が消費増税前の駆け込み需要で異常に高かったためと見られる(前年1月の前々年比+4.4%)。
 1月の現金給与総額は前年比+1.3%、勤労者家計の名目可処分所得は同+0.2%であったが、1月の全国消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年比+2.8%の上昇となったため、実質では賃金が同−1.5%、可処分所得が同−2.5%の減少となった(図表2)。消費者物価の前年比から消費増税の影響が消える4月まではこのような状況が続き、実質家計消費の本格的な立ち直りは3月までは困難であろう。
 1月の雇用は、「労調」の就業者、雇用者、「毎勤」の常用雇用者がいずれも前年をそれぞれ+0.8%、+1.1%、+1.8%と上回っているが、季調済み前月比はそれぞれ−0.0%、−0.1%、+0.1%と横這い圏内の動きであった(図表2)。

【10〜12月期のGDP統計の実質設備投資が微減となったのは他の設備投資関連指標との整合性を欠く】
 投資動向を見ると、GDP統計の実質設備投資は、10〜12月期に前期比−0.1%と3四半期連続して減少した。この弱さは、下表の通り、資本財総供給(除、輸送機械)(図表2)や法人企業統計の設備投資が2四半期連続して増加しているのに比して、やや違和感がある。建設関係の工賃など単価の上昇で実質値が下がっているのであろうが、内閣府は推計方法を早く公表すべきである(1〜3月期のGDP統計公表時から、設備投資と在庫投資の内訳が公表されることになった)。
 なお、先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、10〜12月期に前期比+0.4%と2四半期連続して増加したあと、1月は10〜12月期平均比+4.0%となった(図表2)。1〜3月期の見通しは、前期比+1.5%である。このような先行指標の回復傾向から見ても、GDP統計の設備投資は弱過ぎるように思われる。


【住宅投資に下げ止まりの気配、公共投資の増加は頭を打ちほぼ横這い】
 GDP統計の実質住宅投資は、10〜12月期まで3四半期連続して減少しているが、10〜12月期は前期比−1.2%と下げ止まりの気配が出ている。新設住宅着工戸数は、7月がボトムで、その後緩やかに回復している(図表2)。恐らく1〜3月期には下げ止まるのではないかと思われる。
 GDP統計の実質公共投資は、10〜12月期も前期比+0.8%と3四半期連続して増加した。公共建設工事受注額は、10〜12月期に前年比−3.3%と久し振りに前年を下回ったが、1月には再び前年比+15.4%の増加となっている(図表2)。今後公共投資は、しばらくの間、横這い圏内の動きを続けるものと思われる。

【1月の季調済み貿易収支は僅かながら4年振りの黒字】
 既に見たように、1月の鉱工業製品の輸出は前月比+9.3%、輸入は同+5.8%と輸出の伸びが輸入の伸びを大きく上回ったが、税関ベースの数量指数でも、輸出が同+11.2%、輸入が同−6.3%と輸出と輸入の伸びには大きな差が出た。円安の輸出数量促進効果が、北米とアジア向けを中心にようやく出てきたようだ。
 1月の国際収支統計(季調済み)では、輸出が同−0.6%減、輸入が同−5.7%減となり、貿易収支は僅かながら317億円の黒字となった。月ベースで黒字が出たのは2011年以来のことである。
 また、1月の経常収支の黒字は、1兆581億円、前月比+24.1%増の黒字となった。月ベースで1億ドルの経常収支黒字が出たのも、2011年以来のことである。
 10〜12月期の純輸出は、実質成長率に対して前期比+0.2%(年率+0.9%)のプラス寄与度となったが、1〜3月期の純輸出も比較的大きなプラス寄与度が続くものと思われる。
 1〜3月期は、このような外需のプラス寄与に加え、内需も設備投資と在庫投資の成長寄与度がマイナスからプラスに転じると見られるので、比較的高目の実質成長率を記録すると思われる。