2015年2月版
輸出数量の立ち直りと原油価格の下落から貿易収支の赤字が縮小、設備投資と家計消費の回復も加わって10〜12月期は大幅なプラス成長の公算

【10〜12月期に上昇に転じた鉱工業生産は1〜3月期も上昇を持続する可能性】
 輸出、家計消費、設備投資の回復にリードされ、10〜12月期はかなりのプラス成長になった模様である。
 12月の鉱工業生産は前月比+1.0%と製造工業生産予測の+2.3%を下回る増加にとどまったが、10〜12月期としては前期比+1.8%と3四半期振りの増加に転じた(図表1)。
 製造業生産予測調査によると、1月は前月比+6.3%、2月は同−1.8%、1〜2月平均の10〜12月平均比は+5.8%の増加となっている。最近は鉱工業生産の実績が製造業生産の予測を下回る傾向が続いているので、1月以降の鉱工業生産の実績は予測ほど大幅に上昇しない可能性が高いが、それでも、10〜12月期にプラスに転じた鉱工業生産が1〜3月期も増勢を辿る公算は高い。
 12月の生産増加を主導した業種は、電子部品・デバイス、情報通信機械などであり、1月の大幅な生産増加と2月の反動減の中心業種は、汎用・生産用・業務用機械、輸送機械、情報通信機械などである。

【10〜12月期の鉱工業製品の貿易収支は大幅好転】
 12月の鉱工業出荷は、前月比+1.1%の増加となったが、これは国内向け出荷が同+1.6%の増加となったためで、輸出は同+0.1%に増加にとどまった。もっとも、10〜12月をくくって見ると、輸出は前期比+6.9%と最近にない高い伸びを示し、3四半期振りに増加に転じた国内向けは同+1.3とモダレートな伸びにとどまった。
 この国内向け出荷に輸入を加えた12月の国内向け総供給は、輸入が前月比−0.8%の減少となったため、同+1.2%の増加にとどまった。10〜12月期を見ても、輸入は前期比+0.2%の増加にとどまり、上述の輸出(同+6.9%の増加)との格差が開き、鉱工業製品の貿易収支は大きく好転した。

【実質消費支出は前年を下回る水準で徐々に回復】
 需要動向を見ると、12月の「家計調査」の実質消費者支出(2人以上の世帯)は、前月比+0.4%と4か月連続して増加した(図表2)。四半期ベースの推移を見ると、4〜6月期は消費増税前の買い急ぎの反動で前期比−9.3%の大幅減少となり、7〜9月期はその落ち込んだ水準で横這いとなっていたが、10〜12月期に至り、同+2.3%の増加に転じた。
 もっとも、12月の水準も10〜12月期の水準も、前年に比べれば夫々−3.4%、−3.6%とかなり下回っている。名目消費支出の前年比増加率が、消費者物価の前年比上昇率(図表2)を下回っているからである。この傾向は、消費増税の影響が消費者物価の前年比から消える本年4月まで続こう。
 名目消費支出の伸びを反映し、小売業販売額の前年比は、12月も+0.2%と6か月連続で増加し、10〜12月期は+0.7%と2四半期連続して増加した。

【12月の完全失業率は1997年の水準まで低下】
 12月の現金給与総額は、ボーナスが前年比+2.6%の増加となったため、全体で同+1.6%の増加となったが、消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く)の上昇率(同+2.9%)を下回っているため、実質では同−1.4%の減少であった(図表2)。これを反映して12月の勤労者世帯の実質可処分所得は、雇用者数が前年比+1.1%の増加となったものの、前年比で−0.3%の減少となった。
 なお雇用は、上記雇用者数のほか、就業者数が前年比+0.6%、常用雇用者数が同+1.7%とジリジリ改善しており、完全失業率は3.4%と1997年頃の水準にまで低下した。

【10〜12月期の設備投資は増加、住宅投資は下げ止まり、公共投資は頭打ち】
 投資動向を見ると、足許の設備投資動向を反映する資本財(除輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷+輸入)は、12月に前月比+1.3%、10〜12月期に前期比+4.3%の伸びとなった(図表2)。GDP統計の実質設備投資は、4〜6月期、7〜9月期と2四半期連続して減少したが、10〜12月期には増加すると見られる(図表3)。
 先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、7〜9月期に前期比+5.6%の増加となったが、10〜11月平均の7〜9月平均比は−2.6%の減少となった。10〜12月期の見通しは、前期比−0.3%である。
 住宅投資は、駆け込み需要の反動から、4〜6月期と7〜9月期に大きく減少したが、10〜12月期の新設住宅着工戸数が下げ止まっているので(図表2)、ぼつぼつ底を打つのではないかと思われる。
 公共投資は、13年度末補正予算の執行を背景に、4〜6月期、7〜9月期と増加してきたが、公共建設工事の受注高の前年比が、7〜9月期に+1.2%増と頭を打ち、10〜12月期には−3.3%の減少となったことから見て、ぼつぼつ横這い圏内の動きとなりそうである(図表2、図表3)。

【10〜12月期の実質貿易収支は大幅に好転】
 最後に外需の動向を見ると、税関ベースの輸出(季節調整済み)は、12月に前月比+2.0%増、10〜12月に前期比+5.8%増と順調に伸びているのに対し、輸入(同)は12月に同+1.1%増、10〜12月に同+2.8%増と輸出の伸びを下回った。このため、貿易収支の赤字は3か月連続して縮小し、10〜12月期の赤字は前期比−15.6%の縮小となった。
 日銀推計の実質貿易収支(2010年平均=100、季調済み)は、昨年1〜3月期(−98.0)が最悪で、その後4〜6月期(−33.6)、7〜9月期(−26.0)と徐々に改善していたが、10〜12月期は一気に+11.3と前期比+37.3ポイント改善した(図表2)。これは、米国景気の回復や海外にシフトしていた輸出工場の円安に伴う国内回帰などによって円安の輸出数量促進効果がようやくでてきたことが、一因とみられる。また、金額ベースでは原油価格の値下がりなどから、日本の交易条件が好転していることも貿易収支の改善に寄与している。
 このため、10〜12月期の実質GDPの純輸出は、成長率に対して大きなプラス寄与になると思われる(図表3)。

【10〜12月期はかなり大幅なプラス成長の公算、但し消費増税前の駆け込みで膨らんだ1〜3月期の水準には達しない】
 以上を総括すると、2月16日(月)に公表される10〜12月期GDP統計の1次速報値では、2四半期連続してマイナス成長を続ける実質GDPが、かなり大幅なプラス成長に転じる公算が高いと思われる(図表3)。まず4〜6月期、7〜9月期と2四半期連続して実質成長に対してマイナス寄与となっていた国内需要は、設備投資が増加に転じ、家計消費の増加幅が拡大することを主因に、プラス寄与に転じると見られる。また小幅なプラス寄与にとどまった純輸出は輸出の立ち直りと輸入の鈍化から大幅なプラス寄与に転じる可能性が高い。このため、10〜12月期はかなり大きなプラス成長となるが、消費増税前の駆け込み需要で急成長した1〜3月期の水準には、まだ達しそうもない。