2014年8月版
4〜6月期は1〜3月期の高成長を帳消しにする反動減

【4〜6月期の鉱工業生産、出荷の反動減は大きい】
 消費増税に伴う駆け込み需要の反動減が6月も続いている。4〜6月期は、かなり大きなマイナス成長となった模様だ。
 6月の鉱工業生産は、前月比−3.3%と大きく減少し、昨年6月と同じ水準にまで下がった(第1図)。4〜6月期は前期比−3.7%と、駆け込み需要で同+2.9%とやや大きく伸びた1〜3月期の増加を完全に帳消しにして落ち込んだ。
 6月の鉱工業出荷も前月比−1.9%と5か月連続の減少となり(第1図)、4〜6月期の前期比は−6.8%の大幅下落となった。
 これを国内向け出荷と輸出に分けて見ると、6月は国内向けが前月比−1.5%と3か月連続の減少、輸出は同−2.4%と2か月連続の減少であった。4〜6月期をくくって見ると、国内向けは前期比−7.4%と4四半期振りの大幅減少となり、駆け込み需要の反動がかなり大きかったことを示している。他方輸出は、同−3.4%と2四半期連続の減少となった。

【出荷の反動減が大きいのは耐久消費財、建設財、生産財】
 国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、6月に前月比+0.4%と3か月振りに増加した。これは、輸入が同+8.2%と大きく増加したためである。四半期ベースで見ると、4〜6月期は前期比−7.4%と1〜3月期の同+4.5%を帳消しにする大幅減少となった。
 財別に見ると、4〜6月期に1〜3月期の増加を帳消しにして落ち込んだのは、耐久消費財(+6.6%、−11.0%)、建設財(+1.6%、−4.9%)、生産財(+2.7%、−6.1%)で、これらの分野で駆け込み需要の反動が特に大きかったことが分かる。
 反面、資本財(除、輸送機械)では、4〜6月期の落ち込みが前期比−9.4%と1〜3月期の駆け込み需要の増加に伴う同+11.6%の増加の範囲内であった(図表2)。

【消費増税後の家計消費の趨勢に不安】
 需要動向を見ると、6月の実質家計消費(季調済み)は前月比+1.5%と3か月振りの増加となったが、その水準は4月よりも低い。4〜6月平均の1〜3月平均比は−9.3%の大幅減少で低水準に落ち込んでおり、買い急ぎの反動がかなり大きいことを示している(図表2)。
 小売業の販売額も、6月は前年比−0.6%と4月以降3か月連続で前年水準を下回っている。
 買い急ぎがあれば、その反動が出て減少するのは当たり前であるが、問題は消費増税後の消費者物価が前年比3.5%を超える上昇となっている下で、実質家計消費の趨勢がどうなるかである。6月の実質可処分所得(勤労者所帯)は、前年比−8.0%の大幅減少となり、6月の平均消費性向は前年(50.1%)よりも高い52.0%となっているが、それにも拘らず、実質消費支出は前年を−4.5%下回っている。

【消費者物価上昇の下で実質賃金はかなり減少】
 このような可処分所得の低下は、6月の現金給与総額(全産業)が前年比+0.4%にとどまり、6月の全国消費者物価の前年比+3.6%を大きく下回って、実質賃金が前年比でかなり減少しているからである(図表3)。
 労働需給は引き続きジリジリと引き締まっており、6月の雇用者数の季調済み前月比と前年比は、「労調」の就業者数が+0.0%と+0.9%、雇用者数が+0.3%と+0.8%、「毎勤」の常用雇用者数が+0.3%と+1.5%と増勢を続けている。
 6月の完全失業率は3.7%と前月比+0.2%ポイント上昇したが(図表3)、これは雇用情勢の好転を見て非労働力人口から労働力人口に移った人が増えたためである。6月の新規求人倍率は1.67(前月1.64)、有効求人倍率は1.10(同1.09)といずれも上昇を続けている(共に季調済み)。

【4〜6月期は設備投資と住宅投資が減少】
 投資動向を見ると、足許の機械に対する設備投資の動向を示す資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、6月に前月比+2.2%と2か月振りの増加となったが、四半期ベースで見ると、1〜3月期に前期比+16.6%の著増となったあと、4〜6月期は−9.4%の反動減となった。駆け込みとその反動は耐久消費ほど大きくはなく、ならして見れば、1〜3月、4〜6月を通じて緩やかな増勢を保っていると見られる。
 住宅投資は、駆け込みとその反動が大きい。6月の新規住宅着工戸数は前月比+1.3%増と下げ止まったものの、四半期ベースでは、昨年10〜12月期をピークに1〜3月期、4〜6月期と下げ続けている(図表3)。4〜6月期の住宅投資は9四半期振りに減少したと見られる。
 公共投資は、公共機関からの建設受注が4〜6月期も前年比+30.0%と高い伸びを示していることから見て、引き続き増勢を保っていると見られる(図表3)。

【外需が若干のプラス寄与となっても4〜6月期は大きなマイナス成長】
 最後に外需の動向を見ると、4〜6月期の税関ベース(季調済み)の輸出は前期比−1.1%の減少となったのに対し、輸入は同−8.5%とやや大きく減少したため、4〜6月期の貿易収支の赤字は1〜3月期の3分の2程度に減少した。GDPベースの「純輸出」は、4〜6月期に4四半期振りにはっきりと好転したと見られる。
 しかし、4〜6月期の国内需要は、既に見た通り、家計消費、設備投資、住宅投資が揃って大きな反動減となるため、「純輸出」が若干のプラス寄与となっても、実質成長率は1〜3月期の年率+6.7%を帳消しにする大幅なマイナス成長になったと見られる(図表3)。
 7〜9月期は、落ち込んだ4〜6月期の水準に較べればプラス成長になると見られるが、どの程度の趨勢的な回復力を示すかが、注目される。