2014年6月版
駆け込み需要の反動減は想定内、企業の中期的な雇用、投資態度が今後の鍵を握る

【4月の鉱工業生産と出荷は予想通りの大幅下落】
 消費税率引き上げ前の国内民間需要の駆け込みによって、1〜3月の実質成長率は年率5.9%に達し(図表3)、13年度の実質成長率は2.3%となったが、予想通り4月はその反動で、鉱工業生産や国内民間需要が落ち込んだ。
 4月の鉱工業生産は前月比−2.5%の減少となり、5月と6月も製造業生産予測調査によると、同+1.7%の増加のあと再び同−2.0%の落ち込みとなる。仮に5月と6月の鉱工業生産が製造工業生産予測調査通りになったとすると、4〜6月期は前月比−2.4%と1〜3月の同+2.9%の8割強の落ち込みとなる(図表1)。
 4月の鉱工業出荷は前月比−5.0%の大幅下落となったが、これは国内向け出荷が同−6.8%の急落となったためで、輸出向け出荷は同+1.8%の増加となった。国内向け出荷の下落幅が大きかったのは、消費増税前の駆け込み需要が大きかった資本財(同−10.2%)と非耐久消費財(同−11.2%)である。
 なお、国産品の国内向け出荷に輸入を加えた鉱工業製品の国内向け総供給は、輸入が前月比−8.6%と減少したため、全体では同−6.4%の減少となった。

【出荷の落ち込みは想定内で在庫率は上昇せず】
 4月の出荷の落ち込みが大きかった割には、4月の鉱工業製品在庫と同在庫率は上昇しておらず、前月比それぞれ−0.5%、−1.8%の減少となった。また、景気回復に伴い昨年中一貫して低下傾向を辿ってきた在庫率の水準は、2月、3月に反転上昇したものの、前述のように4月には下がり、ほぼ適正水準を保っているように見える(図表1)。
 これは、1997年度の消費税率引き上げ時の経験もあって、企業が駆け込み需要の反動を十分に考慮し、生産を早めに調整していたためで(因みに本年2月の生産は早くも前月比−2.3%の減少)、4月の出荷下落はいわば「想定内」であったと見られる。
 問題は、今後の出荷回復の時期と幅である。4月の景気動向指数の先行指数は、前月比−0.5%ポイントと3か月連続して下落した。しかしその下落幅は、2月−4.4%ポイント、3月−1.4%ポイント、4月−0.5%と、月を追って縮小している。

【4月の家計消費と設備投資は大幅な反動減】
 国内需要の反動減の様子を需要項目別に見ると、家計消費は、4月の「家計調査」の実質消費支出(全世帯)が前月比−13.3%と前月の増加幅(同+10.8%)を上回る減少幅となった。他方、4月の小売業販売額は、前年比−4.4%と3月の同+11.0%の増加幅を下回る減少幅にとどまった。
 足許の機械に対する設備投資動向を示す資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、1〜3月期に前期比+11.6%の大幅増加となった反動で、4月は前月比−9.3%、1〜3月平均比−8.7%の減少となった。
 先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、1〜3月期に前期比+4.2%と4四半期連続の増加となり、4〜6月期の見通しも同+0.4%となっている。4〜6月期の設備投資は1〜3月期(実質GDP統計で前期比+4.9%増)に比し鈍化するものの、増勢を維持するかも知れない。

【住宅投資と公共投資は今後弱含み】
 4月の新設住宅着工戸数(年率)は、906千戸と前月比+1.2%の微増となったが、1〜3月平均に比べると−3.0%減少した(図表2)。1〜3月期の実質GDP統計で、住宅投資は前期比+3.1%と8四半期連続の増加となったが、新設住宅着工戸数が消費増税前の駆け込みとその反動で、昨年10〜12月期にピークを打ち、その後減少傾向に入っているので、住宅投資も今後弱含み傾向に転じる可能性が高い。
 なお、民間需要ではないが、公共投資は1〜3月期の実質GDP統計で−2.4%と5四半期振りの減少となった。前年度末の補正予算と今年度の当初予算の合計は101.3兆円と、前々年度末の補正予算と前年度の当初予算の合計105.6兆円を4.3兆円下回っていることから見て、公共投資は次第に頭を打ち、弱含みに転じると見られる。

【貿易収支の大幅悪化は4月に底打ち反転】
 4月の輸出入動向を通関ベースで見ると、季調済み前月比で、輸出が+0.6%増、輸入が−9.9%減となり、貿易収支の赤字は8446億円と1〜3月平均(1兆5274億円の赤字)に比し縮小した。数量ベースの前年比は、輸出が+2.0%と2か月振りに増加し、輸入は−1.3%と2か月振りに減少した。
 前述の鉱工業製品の出荷でも、4月は輸出が前月比+1.8%、輸入が同−8.6%となった。
 1〜3月期の実質GDP統計では、純輸出の成長に対する寄与度は−0.3%ポイントと3四半期連続してマイナス寄与が続いているが、4〜6月期にはマイナス寄与が縮小しそうである。

【企業の雇用と設備投資の拡大が今後の鍵を握る】
 以上のように、4月の経済指標から判断すると、4〜6月期は国内民間需要が落ち込み、公共支出も強くないので、純輸出に多少の改善があっても、全体として大幅なマイナス成長となるであろう。
 しかし、企業の雇用と設備投資に対するこれからの態度は、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減が一巡した後、日本経済がどのような成長軌道に乗るかの予測に懸っている。
 4月の「毎勤」の常用雇用、「労調」の就業者、雇用者は、季調済み前月比でそれぞれ+0.2%増、−0.4%減、−0.5%減と区々である。完全失業率は、3.6%と横這いであった。有効求人倍率は1.08倍と前月比+0.01上昇したが、新規求人倍率は1.64倍と同−0.02下落した。雇用改善は遅々としている。
 本年度の設備投資計画については、一部の新聞の調査で前年比+7.6%と出ていたが、3月調査「日銀短観」の+0.9%と開きが大き過ぎる。7月1日発表の6月調査「日銀短観」の設備と雇用の計画調査が待たれる。