2014年5月版
1〜3月期高成長の中、先行きを展望した消費マインドは弱気
【1〜3月期の鉱工業生産は大幅増加、4月以降はその3分の2が反動落ちか】
消費増税前の駆け込み需要で、1〜3月期の経済活動は盛り上がったが、その反動的な落ち込みが4月、5月の製造工業生産予測調査や2月、3月の景気動向指数の先行指数に出ている。
3月の鉱工業生産は前月比+0.3%増にとどまったが、1〜3月期の平均は1月に前月比+3.9%と大きく高まったため、前期比+2.8%の大幅増加となった。これは、消費増税前の駆け込み需要に備えた耐久消費財や汎用資本財の増産によるものである。
先行きの製造工業生産予測調査によると、この反動で4月は前月比−1.4%の減少、5月は同+0.1%の増加と落ち込んだ所でほぼ横這いになる。この4〜5月の平均水準は、鉱工業生産の1〜3月平均に比して−2.0%低く、1〜3月期の前期比+2.8%増がかなりの程度4月以降の先喰いであったことが分かる。
【鉱工業の国内向け総供給は資本財、耐久消費中心に大幅な伸び】
3月の鉱工業出荷は前月比−1.2%と2か月連続の低下となったが、これは1月に同+5.1%の大幅上昇となったためで、1〜3月を平均すると前期比+4.2%の著増である。
この1〜3月の出荷平均を国内向けと輸出に分けると、国内向けが同+5.1%の著増、輸出は同−0.2%の微減となる。駆け込み需要に対応した国内向け出荷が、全体を押し上げた。
国内向け出荷に輸入を加えた国内向けの総供給を見ると、1〜3月期は前期比+4.3%増と前期(同+3.7%増)に続き、2四半期連続の大幅な供給増加となる。
1〜3月の総供給でとくに大幅な前期比の伸びとなったのは、資本財(除輸送機械)の+11.2%増(国内+12.6%増、輸入+7.1%増)と耐久消費財の+6.3%増(国内+6.8%増、輸入+6.5%増)で、いずれも駆け込み需要の対象となった品目(汎用資本財、乗用車、家電など)を含む業種である。
【1〜3月の家計消費は著増したが、先行きを展望した消費マインドは弱気】
国内需要の動きを見ると、家計消費は「家計調査」の実質消費支出(全世帯、季調済み)が3月に前月比+10.8%増、1〜3月平均で前期比+3.8%増と、消費増税前の買い急ぎで著しく伸びた(図表2)。販売統計でも、小売業販売額が3月に前月比+11.0%、1〜3月は同+6.5%と著増している。
しかし、消費者の先行き感を含む消費者態度指数(季調済み)を見ると、3月は同−1.0%ポイントと12月から4か月連続で低下している。消費増税と物価上昇を展望し、消費マインドはむしろ弱まっており、これが4月以降の消費動向にどう出てくるかが注目される。
【物価上昇で実質の賃金と可処分所得は前年比マイナス、雇用は緩やかな回復】
3月の「家計調査」の実質可処分所得(勤労者世帯)は、前年比−3.2%と8か月連続で前年を下回った。
3月の「毎勤」の実質賃金も、前年比−1.3%と9か月連続して前年水準を下回った(図表2)。このような状況の下で4月以降の消費税3%ポイント引き上げが加わると、実質の可処分所得と賃金が一段と低下することが懸念される。
他方、雇用情勢は徐々に改善している。3月の「毎勤」の常用雇用者、「労調」の就業者と雇用者を見ると、前年比はそれぞれ+1.0%、+0.8%、+1.0%といずれも小幅ながら前年水準を上回っている(図表2)。もっとも、回復のテンポは遅々としており、3月の季調済前月比は、それぞれ−0.2%、+0.2%、+0.5%とまちまちである。
このような中で、3月の完全失業率は3.6%と前月比横這いとなり、(図表2)、有効求人倍率は1.07倍と前月比0.02ポイント改善した。
【1〜3月の設備投資は一部に駆け込み需要も加わって堅調】
投資動向を見ると、足許の機械に対する設備投資を示す資本財(除輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、3月に前月比+4.3%、1〜3月に前期比+5.8%と大きく伸びた。汎用性の高い資本財への駆け込み需要も含まれていると見られるが、1〜3月期の設備投資が4四半期連続して伸びたことは確かであろう(図表3)。先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)が昨年4〜6月期から10〜12月期まで連続して増加していることからも、本年1〜3月期の設備投資は増加したと見られる。
【住宅投資と公共投資も高い伸び】
住宅投資の先行指標である新設住宅着工戸数は、消費増税を免れるため、3月末までの完成を目指して着工したケースが多いため、昨年12月がピークとなり、その後は緩やかに低下し、3月も前月比−2.6%減の895千戸(季調済み、年率)となった(図表2)。このような先行指標の動きから見て、1〜3月期の住宅投資は、8四半期連続の増加となったことは間違いない。
公共投資の先行指標である公共建設工事の受注額(大手50社ベース)は、昨年4〜6月期から前年比2桁の伸びを続け、とくに昨年10〜12月期と本年1〜3月期は前年比それぞれ+37.1%、+34.7%と著増している。1〜3月期の公共投資は6四半期連続で高い伸びを示したと見られる。
【外需は1〜3月期もマイナスの寄与】
最後に外需の動向を通関ベースの輸出入(季調済み)でみると、1〜3月期は輸出が前期比−1.2%減、輸入が同+3.3%増と、輸入が原油・LPG・電子部品などを中心に引き続き増加している反面、輸出の立ち直りが遅れている。
所得収支の動向にもよるが、1〜3月期の純輸出は、3四半期連続でマイナスの成長寄与度となる公算が高い(図表3)。
【1〜3月期は昨年上期並みの高成長、問題は4〜6月期以降】
以上を総括すると、本年1〜3月期は、家計消費、住宅投資、設備投資などの国内民間需要が、消費増税前の駆け込みもあって揃って高い伸びを示し、公共投資も増勢を続けるため、外需は3四半期連続のマイナス寄与となるものの、成長率は昨年上期並みの高い伸びを示すものと見られる。
問題は、4〜6月以降の反動減の深さと長さである。景気動向指数の先行指数を見ると、2月、3月と連続して下降しているが、その下落幅は比較的大きく、3月の3か月後方移動平均や7か月後方移動平均で見ても下落した。