2014年4月版
駆け込み需要の反動に備え企業は生産、出荷を調整、問題は4月以降
【消費増税後の反動減を見越してメーカーは2月から生産を絞り込んでいる】
4月1日の消費増税前に起こる駆け込み需要に備え、企業は1月まで生産を急増させていたが、2月に入ると、消費増税実施後の反動的需要減退を見越して、早くも生産を絞り、過剰在庫の発生を避けようとしているようだ。
鉱工業生産は、1月に前月比+3.8%と急増し、08年のリーマン・ショックで落ち込んで以来の最高水準に達したが、早くも2月には同−2.3%とやや大きく下落した。これには大雪の影響もあるが、製造工業生産予測調査によると、更に3月は+0.9%の上昇にとどまり、4月は再び−0.6%の下落になると予測されている。企業は需要の反動減に備えて2月以降の生産を絞っていると見られる。(図表1)。
このため、製品在庫は昨年7月、製品在庫率は昨年8月をピークとして大きく低下し、2月現在過剰在庫は発生していない(図表1)。
このような生産、在庫の動きを主導している品目は、普通乗用車、エアコン、システムキッチン、パソコン、携帯電話、ボイラ部品、カメラ用交換レンズなどの耐久消費材や汎用資本財で、消費増税前に買い急ぎが起こった品目である。
【国内向け出荷も2月から一転して減少】
2月の鉱工業出荷も1月の前月比+5.1%の大幅増加から一転して、同−1.0%と6か月振りの減少となった。これは、国内向けが1月の同+5.2%増から2月は−1.5%減に転じたためで、輸出向けは1月の同+5.5%の大幅増加に続き、2月も同+0.4%の増加であった。
輸出が大きく伸びた品目と地域は、アジア向けの一般機械(前年比+18.8%増)、電気機器(同+12.3%増)、乗用車(同+48.2%増)、米国向けの鉄鋼(同+14.2%)などである。
他方、国内向けで落ち込みが大きい業種は資本財(除、輸送機械、同−8.3%減)と耐久消費財(同−6.6%減)で、品目別には汎用・生産用・業務用機械(同−9.3%減)、情報通信機械(同−9.4%減)など駆け込み需要の発生した業種や品目である。
【買い急ぎの反動で鉱工業製品の輸入も減少】
この国内向けの減少と並んで、2月は輸入も前月比−2.9%と3か月振りに減少したため、両者を合計した国内向け鉱工業製品の総供給は、同−2.3%減とこれも3か月振りの減少となった。
国産品の国内向け出荷の減少が目立つ資本財(除、輸送機械)は、輸入も前年比−11.3%の大幅な落ち込みとなり、ほかに非耐久消費財の輸入も−5.4%の減少となった。
【2月の家計消費は大雪の影響で冴えない】
鉱工業製品のメーカー段階の生産と出荷は、このように2月から早くも調整が始まっているが、末端の家計消費は3月まで買い急ぎの動きが続いた模様である。もっとも2月は、二度にわたる週末の大雪に出鼻を挫かれ、「家計調査」の実質消費支出(全世帯)は、前月比−1.5%の減少となった(図表2)。他方、小売業売上高は、2月も前年比+3.6%と7か月連続で前年を上回った。
【物価上昇に喰われ実質賃金、実質可処分所得は前年割れ】
賃金・雇用の動向を見ると、2月の月間給与総額は前年と同水準であったが、消費者物価が上昇しているため、実質賃金は前年比−1.9%とマイナス幅をジリジリ拡大している(図表2)。
他方、2月の雇用は、「毎勤」の常用雇用、「労調」の就業者、雇用者が前月比それぞれ−0.1%減、+0.2%増、−0.1%減と横這い圏内の動きであった。ただ、就業者が増加し、完全失業者が減少(前月比−3.7%減)したため、完全失業率は3.6%と前月比1%ポイント改善した(いずれも季調済み、図表2)。
実質賃金が低下し、雇用が横這い圏内の動きとなっているため、「家計調査」の実質可処分所得(勤労者世帯)は、7か月連続して前年水準を下回り、2月は前年比−1.3%減であった。
【設備投資は緩やかに増加】
足許の機械に対する設備投資の動きを示す資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、1月に前月比+16.2%と急増した反動で、2月は−8.8%減となったが(図表2)、1〜2月の平均は10〜12月の平均を+11.6%上回っている。汎用性の高い機械や付け替え用機械部品などを中心に、資本財にも駆け込み需要が出ているので、1〜3月の総供給増加がそのまま設備投資に対応しているとは思われないが、3四半期続けて増加しているGDP統計の設備投資が、1〜3月期にも増加する蓋然性は高いと思われる。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、1月に前月比+13.4%とやや大きく増加した(図表2)。この水準は10〜12月平均に比し+4.0%高い。1〜3月期の見通しは、前期比−2.9%の減少であるが、1月の水準は1〜3月期の見通しの平均を既に+7.1%上回っている。
【住宅投資と公共投資は引き続き堅調】
新設住宅着工戸数は、12月をピークに減り始めており、2月も前月比−6.9%の減少となった(図表2)。完工・引き渡しが3月末までの住宅に従来の5%の消費税率が適用されるため、駆け込み着工のピークが昨年12月になったもので、住宅投資としては1〜3月がピークになると思われる。
公共機関からの建設工事受注(大手50社)の前年比増加率は、昨年10月をピークに低下していたが、2月は再び前年比+38.6%と11〜1月の前年比より高まった(図表2)。駆け込み需要の反動で成長率が落ち込む蓋然性の高い4〜6月期と7〜9月期に向けて、25年度末に成立した補正予算を前倒しで執行することとなるので、公共投資は1〜3月期まで6四半期続けて増加したあと、4〜6月期以降も落ち込まずに推移する可能性がある。
【2月の貿易赤字は縮小、経常収支も表面では黒字に戻る】
最後に外需を見ると、既に見たように、2月は鉱工業製品の輸出(前月比+0.4%)が輸入(同−2.9%)を上回って伸びたが、国際収支(金額、季調済み)ベースでも輸出(同−1.1%)が輸入(同−7.8%)を上回ったため、貿易収支の赤字は縮小した。また2月の経常収支も、表面では6127億円の黒字と5か月振りの黒字に戻った。もっとも季節調整すると、まだ414億円の赤字と僅かに逆超である。
【経済見通しの焦点は4月以降】
3月は大雪などの天候に左右されなかったので、家計消費、住宅投資などは駆け込みで盛り上がり、経常収支の極端な悪化も峠を越えたので、1〜3月期は内外需揃って回復し、比較的高い成長率となろう(図表3)。
問題は4月以降である。消費増税のネガティブ・インパクトが、駆け込みとその反動で一巡したあと、どう出てくるかを慎重に見極めなければならない。
詳しくは、4月13日(日)にこのHPに掲げる『世界日報』への寄稿、“消費増税と今後の日本経済の推移”を参照されたい。