2013年3月版
景気は国内需要を中心に緩やかに立ち直り
【生産は4か月連続の上昇予測】
景気は昨年11月に底を打ち、12月から緩やかに回復している。
1月の鉱工業生産は、前月比+1.0%の増加と、製造業生産予測調査の同+2.6%を下回ったものの、12月から2か月連続の上昇となった。2月の予測調査は前回の同+2.3%から同+5.3%に大きく上方修正され、3月も同+0.3%の上昇と、4か月連続の上昇が見込まれている(以上図表1)。実績が予測通りになると、1〜3月期は前期比+5.9%と4四半期振りの増加となり、増加幅もかなり大きくなる。
12月からの回復をリードしている品目は、引き続き輸送機械(普通乗用車など)、情報通信機械、電子部品・デバイスなど耐久消費財関連である。
【乗用車、情報通信機械の国内向け出荷が堅調】
1月の鉱工業出荷は、前月比+0.1%の増加にとどまったが、これを国内向けと輸出に分けてみると、国内向けが同−0.5%の下落となった反面、輸出は同+4.4%と久しぶりに高い伸びとなった。
他方、国産品の国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が同−3.9%と減少したため、全体として同−0.3%の減少となった。財別にみると、投資財(同−3.3%)と生産財(同−2.5%)が減少した反面、消費財は耐久消費財(同+9.7%)を中心に同+3.9%の増加となった。
生産の回復と同様、国内向け総供給の回復をリードしている品目も、輸送機械(普通乗用車)、情報通信機会(汎用コンピューター、カーナビ、携帯電話)など耐久消費財である。
また、1月の特色として輸出が前年比+4.4%と増加した反面、輸入が同−3.9%と下落し、鉱工業製品の貿易収支が比較的大きく好転したことが挙げられる。
【家計消費は引き続き底固い動き】
需要面の指標を見ても、このところ家計消費が底固い動きをしている。「家計調査」によると、1月の消費水準指数(全世帯)は前年比+2.4%と大きく上昇し(図表2)、実質消費支出(全世帯)は季節調整済み前月比で+1.9%の増加、同(勤労者世帯)は前年同月比で+4.1%の増加となった。
「販売統計」では、1月の乗用車新車登録台数(季節調整済み)が4,814千台となり、前月比+13.4%、10〜12月平均比+18.0%の大幅増加となった。エコカー補助金の打ち切りによって下落していた乗用車需要は、昨年10月を底に立ち直っている。
【消費性向の上昇と世帯主以外の実収入の増加が支え】
このような1月の家計消費の根強い増加は、平均消費性向(季節調整済み)が76.7%と前月比+1.7%ポイント上昇したことと、配偶者など世帯主以外の実収入が大きく増加していることによって支えられている。1月の可処分所得(勤労者世帯)自体は、前年比−0.1%と3か月振りに前年を下回った(図表2)。
背後にある雇用・賃金の動向を見ると、1月の雇用は、「労調」の雇用者が前月比+0.6%増、前年比+0.2%増、就業者が夫々+0.5%増、+0.3%増、「毎勤」の常用雇用者が夫々−0.2%減、+0.5%増とやや区々であるが、総じて見れば緩やかな増勢を保っている。完全失業率は4.2%と前月比1%ポイント低下し(図表2)、有効求人倍率は0.89%と僅かながら上昇した。
他方、「毎勤」の1月の実質賃金は、前年比+0.9%増と、5か月振りに前年を上回った(図表2)。
【設備投資は1〜3月期に底入れを探る展開】
次に投資動向を見ると、企業の設備投資は、実質GDP統計で昨年1〜3月期から10〜12月期まで、4四半期連続して下落しているが、「法人企業統計」の季節調整済み前期比では、昨年1〜3月期から7〜9月期まで、3四半期連続して下落したあと、10〜12月期には+0.9%の微増となった。
また先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、昨年10〜12月期に前期比+2.0%と3四半期振りの増加となったあと、本年1〜3月期には同+0.8%の増加見通しとなっている。
「アベノミクス」の心理的効果で円安と株高が続いていることもあり、企業の先行き見通しに変化があるとすれば、設備投資は本年1〜3月期に底入れを探る展開となろう。しかし、当面1月の資本財総供給(輸送機械を除く国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、前月に大幅に増加(前月比+9.5%)したことの反動もあって、同−5.7%の減少となったが、1月の水準は10〜12月平均比に比べれば+0.2%と僅かに上回っている。
【住宅投資は引き続き増加、公共投資は一時的に足踏みの可能性】
住宅投資は昨年10〜12月期までで3四半期連続して増加しているが、新設住宅着工戸数が、昨年10〜12月期に年率918千戸とリーマン・ショック後の最高水準を記録したあと、1月も同863万戸の高水準を維持していることから見て、引き続き増勢を保っているものと見られる。
公共投資も、昨年1〜3月期から10〜12月期まで4四半期連続して増加したが、公共機関からの建設工事受注(大手50社)は、特例公債法案の成立が年末まで遅れ、また本年度補正予算の成立も2月にずれ込んだことから、10〜12月期に前年比−7.3%と前年を下回ったあと、1月も同−0.9%と前年水準を下回っている(図表2)。
この遅れは徐々に取り戻されるものと思われるが、1〜3月期の公共投資の伸びが一時的に足踏みする可能性がある。
【1月の貿易収支と経常収支はやや好転】
1月の国際収支統計(季節調整済み)によると、輸出は前月比+8.9%、輸入は同+7.0%と輸出の伸びが輸入の伸びを僅かに上回り、貿易収支の赤字は6571億と僅かに縮小した(前月比−4.1%)。輸出の伸びが比較的高い国・地域は、米国(前年比+10.9%)、アジアNIEs(同+12.8%)、ASEAN(同+9.2%)などで、中国(同+3.0%)は低迷し、EU(同−4.5%)は不振である。
貿易赤字の縮小に伴い、1月の経常収支黒字は3646億円と7〜9月期の月平均の2905億円や10〜12月期(同2123億円)の水準を上回った。
【1〜3月期は10〜12月期よりは高いプラス成長の公算】
10〜12月期の実質成長率(年率)は、1次速報値の前期比−0.4%から2次速報値は+0.2%に上方修正され、3四半期連続のマイナス成長は免れた。これは、設備投資、家計消費、公共投資が僅かづつ上方修正されたためである(図表3)。
1月の指標しか分かっていない現段階では確定的なことは言えないが、1〜3月期は設備投資が底入れし、純輸出が4四半期振りにプラスに転じ、家計消費、住宅投資は引き続き増勢を維持し、公共投資が横這い圏内となる蓋然性が高いので、全体として10〜12月期よりは高いプラス成長となる公算が大きい。