2013年2月版
景気は緩やかな上昇局面入り

【鉱工業生産は12〜2月に3か月連続上昇の予測】
 昨年12月頃から、わが国の景気は再び緩やかな上昇を始めたと見られる。昨年4〜6月期、7〜9月期と2四半期続いたマイナス成長は10〜12月期には下げ止まり、横這い、ないしは僅かなプラス成長となった模様である。回復のリード役は、家計消費、住宅投資、公共投資であり、輸出と設備投資の持ち直しは、恐らく年明け後と見られる。
 12月の鉱工業生産は前月比+2.5%の上昇となり、製造工業生産予測調査によると、1月は同+2.6%、2月は同+2.3%と3か月連続してかなり確りと上昇する見込みである(図表1)。
 仮に実績が予測通りになると、2月の生産水準は昨年落ち込みが始まる直前の4月の水準にあと2.2%の所まで戻ることになる。この再上昇をリードする品目は、在庫調整が完了し、末端需要にも立ち直りの兆しのある普通乗用車、電子部品・デバイスなどである。

【12月の出荷は国内向けを中心にやや大きな伸び】
 12月の鉱工業出荷は、4か月振りの増加となり、増加幅も前月比+4.4%とやや大きかった(図表1)。
 出荷の内訳を国内向けと輸出向けに分けると、国内向けは同+5.1%と大幅に伸び、輸出向けは同+1.5%にとどまった。
 品目別にみると、国内向けが大きく伸びたのは、乗用車を中心とする耐久財(同+10.9%)、資本財(除輸送機械、同+10.5%)、建設財(同+6.3%)である。12月の回復は、国内の消費と投資にリードされていることが窺われる。
 国内向け出荷と輸入を合計した国内向け総供給を見ても、合計は前月比+5.3%の大幅増加である。品目別には資本財(除輸送機械、同+9.9%)、耐久消費財(同+8.7%)、建設財(同+6.2%)の大幅増加が目立つ。

【家計消費は底固い動き】
 需要面の動向を見ると、まず家計消費関係の「販売統計」では、12月の小売業販売額が前年比+0.4%増と2か月連続して前年水準を上回り、10〜12月平均も同+0.2%の増加となった。エコカー補助金の予算切れで落ち込んでいた乗用車新車登録台数(季調済み)も、10月を底に2か月連続して立ち直り、11月は前月比+10.7%、12月は同+2.8%の増加となった。
 「家計調査」では、12月の勤労者世帯の実質消費支出が前年比+2.2%と11か月連続して前年を上回った。背後の可処分所得も、12月は前年比+0.8%、10〜12月平均は同+0.5%と共に前年を上回っている(図表2)。

【賃金は賞与の減少から伸び悩み、雇用は緩やかに改善】
 賃金・雇用の動向を見ると、12月の「毎勤」の実質賃金は前年比−1.3%と2か月連続して前年を下回った(図表2)。これは、「特別に支払われた賃金」(賞与)が前年を下回っているためである。
 雇用は、「労調」の雇用者数が12月は前年比−0.1%の減少となったが、10〜12月平均では同+0.7%の増加となった。「毎勤」の常用雇用は12月に前年比+0.7%、季調済み前月比+0.1%、10〜12月平均では前年比+0.7%、季調済み前期比+0.2%のそれぞれ増加となった。雇用は7〜9月期に続き、10〜12月期も徐々に改善している。
 12月の完全失業率は4.2%と前月比+0.1%ポイントの上昇となったが、趨勢としては、7〜9月期の4.2%強から10〜12月期の4.2%弱へ僅かながら改善している。

【2四半期低下した設備投資は10〜12月期に下げ止まりか】
 投資動向を見ると、足許の機械に対する設備投資動向を示す資本財総供給(輸送機械を除く、国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、12月に前月比+9.9%の大幅増加となったが、8月と9月の落ち込み幅が大きかったためマイナスのゲタを履き、10〜12月の前期比は−1.6%と僅かに減少した(図表2)。
 先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、10、11、12月と3か月続いて前月比で増加しており、10〜12月の7〜9月比は+2.0%の増加となった(図表2)。見通し調査によると、1〜3月期は前期比+0.8%と2四半期続いて増加する予想である。
 7〜9月期に前期比−3.0%の減少となった設備投資は(図表3)、10〜12月期に下げ止まり、1〜3月期から立ち直る可能性が高い。

【住宅投資と公共投資は着実な増勢】
 4〜6月期、7〜9月期と2四半期連続して増加した住宅投資は、10〜12月期の新設住宅着工戸数が前期比+4.9%と更に増加したことから見て(図表2)、3四半期連続の増加になったものと思われる。
 既に3四半期連続して増加している公共投資は(図表3)、特例公債法案の成立が遅れたことから、9、10、11月の発注がやや減少したが、12月の建設工事受注(公共機関発注、大手50社ベース)は前年比+21.5%と大きく回復している。本年度の大型補正予算が間もなく成立し、来年度予算と合わせた15か月予算として大型の公共事業が執行されることを考えると、大勢として、10〜12月期を含め、公共投資の大幅な増勢は続くものと見られる。

【外需の悪化はぼつぼつ下げ止まりの局面へ】
 最後に外需の動向を見ると、季節調整済みの通関ベースで、10月は輸出が前月比+2.4%、輸入が同+1.2%となり、貿易収支の赤字は−6.0%縮小した。しかし10〜12月の平均では、輸出が前期比−2.8%、輸入が同+0.1%となり、貿易収支の赤字は+18.6%拡大した。
 他方、前述の鉱工業製品の出荷を見ると、10〜12月期は輸出が前期比−2.2%、輸入が同−2.9%となり、数量ベースの収支はやや改善している。
 11月までの国際収支統計によって季節調整済みの実質貿易収支を見ると(図表2)、10〜11月の平均は、7〜9月の平均に比して−1.9%悪化した。また経常収支を見ると、10〜11月の月平均の黒字は7〜9月に比べて+1.0%と僅かに改善した。
 以上から判断すると、昨年4〜6月期、7〜9月期と2四半期続けて成長の足を引っ張った実質GDPベースの「純輸出」は、10〜12月期にはほぼ中立的になったのではないかと見られる。

【10〜12月期の成長率はゼロ近傍で若干のプラスか】
 以上を総括すると、2月14日(木)に公表される予定の10〜12月期の実質GDP統計は、前期比で家計消費、住宅投資、公共投資がプラス、設備投資が弱含みとなり、内需は全体として成長に対して僅かなプラス寄与となる可能性が高い。
 他方、外需(純輸出)は中立的か若干のマイナス寄与となろう。
 その結果、10〜12月期の成長率は3四半期振りに僅かのプラス成長となるか、ゼロ近傍のマイナス成長が続くか、という辺りではないかと推測される。
 日本経済の成長率がはっきりプラスに転じるのは本年1〜3月期からで、4〜6月期、7〜9月期には本年度の大型補正予算の影響と円安や米国・中国などの成長立ち直りによる輸出の回復で、かなり高目の成長になるのではないかと見られる。