2013年1月版
景気の踊り場から再上昇への転換局面

【生産は10〜11月に底を打ち、12月から回復の気配】
 昨年4月から9月までの6か月間に−9.5%減と急落した鉱工業生産は、10月、11月に底を這ったあと、12月から回復に転じる気配を示している。
 11月の鉱工業生産は、前月上昇(前月比+1.6%)のあと再び同−1.7%と下落したが、製造業生産予測調査によると、12月は同+6.7%、1月は同+2.4%と比較的大きく回復する見込みである。実勢がほぼ予測通りになれば、昨年4月から急落した生産は、10〜11月に底を打ち、12月から回復することになる(以上図表1)。
 業種別に見ると、生産の底入れから回復への動きを主導する主な部門は、電子部品・デバイス(モス型半導体集積回路<CCD>、固定コンデンサ、シリコンウェア等)と輸送機械(乗用車、普通トラック等)である。

【電子部品・デバイスと自動車が生産・出荷の底入れ、回復をリード】
 11月の鉱工業出荷は、前月比−1.1%減と3か月続けて下落したが、これを国内向けと輸出に分けると、国内向けは同−1.2%減と前月横這いのあと再び下落したが、輸出は同+0.6%増と3か月振りに増加した。
 このうち国内向けと輸出が揃って増加した業種は、電子部品デバイスと輸送機械である。両業種共に在庫調整が完了し、生産、出荷が揃って回復に向かっている。
 次に国産品の国内向け出荷と輸入を合わせた11月の国内向け総供給を見ると、国産品の減少に加え、輸入も同−0.6%の減少となったため、全体は同−1.3%減と6か月連続して減少した。
 鉱工業製品に対する国内需要は、総じて見れば引き続き弱いようだ。ただその中にあって、11月に国内向け総供給が増加した主な業種は、輸送機械、精密機械、電子部品デバイス、石油・石炭製品、非鉄金属である。
 なお、鉱工業製品の貿易収支は、前月は輸出の減少率(−1.8%)が輸入の減少率(−5.1%)を下回り、11月は輸出が増加し、輸入が減少したため、2か月連続して好転した。

【11月の家計消費は確りした動き】
 需要動向を項目別に見て行くと、11月の家計消費は比較的底固い動きを示した。「販売統計」では、11月の小売業販売額は前年比+1.3%増と前月減少(同−1.2%)のあと再び増加し、乗用車新車登録台数は9月、10月と2か月続けて前年水準を下回ったあと、11月は同+0.2%増と前年水準を回復し、季節調整済み前月比では+10.7%の増加となった。エコカー補助金が途切れたあと減少傾向にあった乗用車の売れ行きは、底を打った模様である。
 「家計調査」によると、11月の消費水準指数(全世帯)は前年比+0.3%増と3か月振りに前年を上回った(図表2)。また、11月の実質可処分所得(勤労者世帯)も、前年比+1.1%と3か月振りに前年を上回って増加した(図表2)。

【雇用情勢は厳しい中で徐々に立ち直ってきたが賃金はなお足踏み】
 背後にある賃金・雇用の動向を見ると、11月の実質賃金(全産業)は前年比−1.0%の減少となった(図表2)。これは、特別に支払われた給与(賞与)が前年比−26.8%と大きく減少したためで、決まって支給する給与は前年を0.3%上回った。
 11月の雇用は、「労調」の雇用者が前年比+0.3%(図表2)、季調済み前月比+0.2%と夫々増加したが、「毎勤」の常用雇用は前年比+0.6%増の水準ながら、季調済み前月比では−0.1%と微減した。
 この間、11月の完全失業者は前年比−7.5%の減少、季調済み前月比は−0.7%の減少となり、完全失業率は4.1%と前月に比し1%ポイント低下した(図表2)。11月の有効求人倍率は0.88倍と前月比横這いであったが、新規求人倍率は1.31倍と前月比0.03ポイント上昇した。
 総じて雇用情勢は徐々に回復しているが、依然として厳しく、実質賃金は上昇していない。

【設備投資は前期に続き10〜12月期も減少か】
 次に投資動向を見ると、足許の機械設備に対する投資を示す11月の資本財(除輸送機械)の総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、前月比−0.1%と前月微増(同+0.1%)のあと再び微減し、ほぼ横這い状態となっている(図表2)。10〜11月の水準は7〜9月平均に比して−4.6%低い水準である。
 先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)は、10月に前月比+2.6%と増加したが(図表2)、この水準は7〜9月期の平均を−1.5%下回っている。見通し調査によると、10〜12月期は前期比+5.0%の増加見込みであるが、この見通しに達するには11月、12月の受注がかなり伸びなければならない計算になる。4〜6月期と7〜9月期の機械受注(同)は、2四半期連続で前期比減少しているが(図表2)、果たして10〜12月期に増加に転じるか、注目される。
 10〜12月期の設備投資は、足許の資本財出荷や4〜6月期、7〜9月期の機械受注の動向から見て、前期に続いて減少になる可能性がある。

【住宅投資は好調、公共投資は一時的に足踏みか】
 住宅投資は、4〜6月期、7〜9月期と2四半期連続で増加したが、10〜12月期も確りしている。10月と11月の新設住宅着工戸数の平均は942.5万戸(年率)と7〜9月期(874.7万戸)を+7.8%上回っている(図表2)。
 公共投資は、1〜3月期から3四半期連続して増加しているが、特例公債法案の成立が遅れたことから、公共機関からの建設工事受注は9〜11月の3か月間に前年を下回った(図表2)。この遅れは急ピッチで取り戻され、更に補正予算と来年度予算(いわゆる15か月予算)で公共事業予算が積み増されると思われるので、本年1〜3月期以降は増勢を強めると見られるが、10〜12月期には足踏みする可能性がある。

【10〜12月期がプラス成長かマイナス成長かを予想するのは時期尚早】
 最後に外需の動向を見ると、10月の実質貿易収支(2005年=100の指数)は7〜9月平均を+3.8%上回る好転を示した(図表2)。また鉱工業製品の貿易収支は、前述の通り、10月、11月と2か月続けて輸出の伸びが輸入の伸びを上回った。
 他方、通関ベースの季調済み貿易収支を見ると、10〜11月平均の赤字額は、7〜9月平均を+14.7%上回っている。
 実質ベースと金額ベースの違い、また対象範囲の違いがあるので、11月の国際収支ベースの経常収支や実質貿易収支が入手できるまでは、10〜12月期の外需(純輸出)が7〜9月期に比して好転するかどうかは、判断できない。
 以上を総括すると、10〜12月期が7〜9月期(図表3)に続いてマイナス成長となるか、あるいはプラス成長に戻るかは、内需、外需共にデータがまだ不足していて判定は時期尚早である。