2012年8月版
外需の悪化が止まり、内需主導の緩やかな回復が続く

【鉱工業生産は3か月連続の減少のあと7月は反動的に急増する予測】
 国内需要は、設備投資の立ち直りも加わって底固い回復を続けている。他方、海外需要の悪化は止まってきたものの、立ち直りの動きは見られない。8月13日(月)公表予定の4〜6月期実質GDPの成長率は、1〜3月期の高成長(年率4.7%)からは鈍化するものの、引き続き潜在成長率を上回るプラス成長を続けているものと思われる(図表3)。
 6月の鉱工業生産は前月比−0.1%と3か月連続の減少となり、4〜6月期は前期比−2.2%と4四半期振りの減少となった。しかし製造業生産予測調査によると、7月は前月比+4.5%の大幅反動増となり、8月は同−0.6%とほぼ7月の水準を維持する。このため、鉱工業生産の実績が製造業生産の予測通りであると、7〜8月の平均は4〜6月期の平均を+3.0%上回る(図表1)。
 業種別に見ると、一般機械、電子部品デバイス等の資本財(除輸送機械)の生産は6月を含め上昇傾向を続けているが、乗用車とその部品の生産が、エコカー補助金の予算切れに伴う需要減少を見越して減少に転じている。

【鉱工業製品の国内向け総供給は横這い】
 6月の鉱工業出荷は、前月比−1.5%と2か月続いて減少したが、内外需の内訳を見ると、輸出は同+3.1%の増加となっており、国内向けの同−2.6%の下落が大きく響いた。この国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給も、6月は前月比−2.7%と4か月振りの減少となった。4〜6月期の前期比を財別に見ると、資本財(前期比+4.9%)、建設財(同+4.2%)が大きく伸び、耐久消費財(−5.6%)が大きく落ち込んでいる。また4〜6月期の輸出入を見ると、輸出は前期比−2.9%、輸入は同+0.8%となった。
 このように鉱工業製品の出荷ベースで見ると、4〜6月期は内需が横這い、外需が減少となる。1〜3月期は内需が増加、外需が減少であった。GDP中の鉱工業のウェイトは2割弱なので、これで4〜6月期のGDPがマイナス成長になると判断することは出来ないが、1〜3月期よりも成長率が鈍化する蓋然性は高いと見られる。

【家計消費は引き続き底固い】
 需要項目の動向を見ると、6月の「家計調査」の消費水準指数(全世帯)は前年比+1.7%(図表2)、小売業販売額は同+0.2%となった。これを4〜6月期について見ると、消費水準指数は同+2.8%と1〜3月期(同+0.1%)を大きく上回る伸びとなり(図表2)、小売業販売額は同+3.1%と1〜3月期(同+5.2%)をやや下回る伸びとなった。
 総じて見れば、家計消費は底固く推移していると見られる。
 消費の背景にある実質可処分所得(勤労者世帯)の動向を見ると、6月は前年比+3.7%とやや高い伸びとなり、4〜6月期も同+1.9%と前期に続き2四半期連続で前年を上回った(図表2)。

【賃金は不冴え、雇用は緩やかに回復】
 所得の背後にある賃金・雇用動向を見ると、6月の実質賃金は前年比−0.5%の低下となったが、これは夏期ボーナスが前年を下回ったためで、きまって支給する給与は時間外手当を中心に前年を上回っている。ならして見ると、実質賃金は1〜3月期に続いて4〜6月期も前年を下回っており、回復の兆しは見られない。
 他方、6月の雇用は、「労調」の就業者と雇用者が季調済前月比でそれぞれ+0.4%、+0.8%、「毎勤」の常用雇用者は同+0.1%といずれもやや回復し、就業者と雇用者はほぼ前年並みの水準となり(図表2)、常用雇用者は前年を+0.8%上回った。
 他方、「労調」の完全失業者は前年比−8.3%、季調済前月比−2.8%と減少し、完全失業率は4.3%と前月から0.1%ポイント低下した。
 総じて見れば、賃金に回復の動きは見られないが、雇用の緩やかな立ち直りが可処分所得と家計消費を支えていると見られる。

【設備投資は立ち直り、住宅投資と公共投資は増勢持続】
 次に投資動向を見ると、足許の機械に対する設備投資を示す資本財(除・輸送機械)の総供給(国産品の国内向け出荷+輸入)は、6月に前月比−10.2%の減少となったが、これは4、5月急増の反動が大きい。4〜6月の平均は1〜3月平均比+4.6%と前期減少(同−3.9%)のあと増加した。1〜3月期に減少したGDPベースの設備投資は、4〜6月期に再び増加したと見られる。
 過去3四半期、緩やかに立ち直ってきた住宅投資は、1〜3月期と4〜6月期の新設住宅着工戸数が大きく水準を上げたこと(図表2)から見て、4〜6月期にはやや増加率を高めたと見られる。
 公共投資は、復旧・復興工事の進捗を背景に、昨年4〜6月期から増加傾向を辿っているが、6月と4〜6月期の公共建設工事受注額が前年比それぞれ+39.6%、+29.7%と大きく伸びていることから判断して、やや増加率を高めてくるかもしれない。

【貿易収支の赤字拡大は止まる】
 最後に外需の動向を見ると、6月の通関ベース(季節調整済み)の輸出は前月比−1.4%の減少、輸入は同−6.5%の減少、貿易収支は3007億円の赤字と前月(6182億円の赤字)より赤字幅を縮小したが、引き続き赤字基調を脱していない。
 4〜6月をくくってみると、輸出は前期比+0.7%の増加、輸入は同+0.5%の増加、貿易収支は1兆4048億円の赤字と前期(1兆4361億円の赤字)比−2.2%の微減となった。
 世界景気の底打ちによる輸出の下げ止まり、資源価格上昇の一服による輸入の頭打ちによって、貿易収支の悪化には歯止めが掛ってきたように見受けられる。
 6月の経常収支(季節調整済み)は、貿易収支の赤字縮小を主因に7736億円の黒字と前月(2822億円の黒字)に比し黒字幅を大きく拡大した。しかし、4〜6月期の経常収支は4月と5月に貿易収支の赤字拡大から経常収支の黒字がかなり縮小したため、1兆3444億円の黒字にとどまり、前期(1兆4846億円の黒字)を−9.4%下回った。

【4〜6月期は潜在成長率を上回るプラス成長か】
 以上の動向を総括すると、8月13日公表予定の4〜6月期実質GDPは、底固い家計消費に設備投資の立ち直り、住宅投資と公共投資の増勢も加わって国内需要が成長を支え、外需の成長下押し効果も小さくなるのではないかと思われる。
 このため、1〜3月期(年率+4.7%成長)に比べれば緩やかな成長率となるものの、潜在成長率(約1%)を上回るプラス成長になるのではないか。