2012年4月版
景気の立ち直りは引き続き緩やかであるが、2月の輸出には持ち直しの気配

【2月の生産減少は一時的で1〜3月期平均は大幅な増加となる見込み】
 景気は引き続き緩やかに持ち直しており、先行き輸出にも立ち直りの兆しがある。
 2月の鉱工業生産は前月比−1.2%と3か月振りに減少したが、製造工業生産予測調査によると、3月はその反動もあって同+2.6%とかなり増加し、4月も同+0.7%と続伸する予想となっている(図表1)。3月の実績が予測通りになった場合には、1〜3月期の生産は前期比+3.6%の大幅増加となる。
 2月の生産減少は、納期ずれ込み(電気機械)、定期修理延長(化学)、うるう年調整などの特殊要因によるもので、生産は大勢として緩やかな持ち直しが続いていると見られる。2月に生産が落ちた輸送機械(普通自動車)や情報通信機械(携帯電話)などが、3月と4月には再び増産に戻る予想となっていることから見ても、2月の生産減少は一時的な要因によるものと考えられる。

【出荷は内外共に立ち直りの気配】
 2月の鉱工業出荷は生産とは逆に前月比+1.1%の増加となった(図表1)。出荷の内外需別内訳と見ると、前月減少(同−6.8%)した輸出が同+4.8%と大きく伸び、国内向けは同−0.4%と3か月振りの減少となっている(下表)。輸出が特に大きく伸びた業種は、輸送機械(同+9.4%)、電気機械(同+10.8%)、電子部品・デバイス(同+21.0%)などで、これらは前述のように3月以降に一層の増産が計画されている業種である。
 国産品の国内向け出荷と輸入を合計した2月の鉱工業製品の国内向け総供給は、前述した国産品の減少に加え、輸入も前月比−3.7%の減少となったので、全体として同−1.7%と3か月振りの減少となった(下表)。



 上表によって、11/10〜12と12/1〜2を比較してみると、国産品総出荷と国内向け総供給は、共に立ち直りの傾向を示している。

【雇用の回復は引き続き緩やか】
 賃金・雇用情勢を見ると、2月の実質賃金(全産業)は前年比+0.4%の増加と前月(同−1.0%)のマイナスからプラスに変わったが、所定外(時間外)給与(同+3.4%)には「うるう年」の影響(29日÷28日=1.036)が認められる。
 2月の雇用は、「労調」の就業者と雇用者の前年比が夫々−0.6%、−0.8%のマイナスであったが、季調済み前月比では+0.5%と+0.1%の増加であったため、完全失業率は4.5%と前月比−0.1%ポイント低下した。
 他方2月の「毎勤」の常用雇用者数は、前月比+0.1%と僅かに改善し、前年比は前月と同じ+0.5%であった。
 雇用の回復傾向は、引き続き緩やかである。

【2月の消費堅調は「うるう年」要因が大きい】
 このような賃金・雇用動向の下で、2月の「家計調査」の実質可処分所得(勤労者家計)は、前年比+1.8%と前月(同+1.3%)に続いて増加し、その上昇幅も拡大した。
 これを背景に、2月の家計消費は小売業販売額が前年比+3.5%、乗用車新車登録台数は同+31.7%と「販売統計」は堅調であったが、これには「うるう年」で販売日数が1日多かった影響もあった。
 「家計調査」の実質消費支出(全世帯)にもその影響があり、2月は前月比+1.8%、前年比+2.3%と共に大きく伸びた。「うるう年」を適切に調整した実勢は、ほぼ横這い圏内の動きと見られる。

【住宅投資と公共投資が増加に転じる気配】
 次に設備投資の動向を見ると、2月の資本財(除輸送機械)の総供給(国内向け国産+輸入)は、前月比−0.1%と前月減少(同−3.1%)のあとほぼ横這いとなった(図表2)。足許の設備投資回復は勢いを欠いている。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、10〜12月期に前期比−2.6%の減少となったあと、1月は前月比+3.4%の増加となり、1〜3月期の見通しも前期比+2.3%の増加となっている。
 住宅投資は、GDP統計の10〜12月期に前期比−0.7%と微減したが、1月と2月の新設住宅着工戸数が、82.2万戸(前月比+5.0%)、91.7万戸(同+11.6%)と勢いを増していること(図表2)から判断して、再び増勢に転じたように窺える。
 公共投資は、GDP統計では7〜9月期(前期比−1.6%)、10〜12月期(同−2.2%)と2四半期連続して僅かに減少したが、大手50社ベースの国・地方からの建設工事受注額が、前年比で1月+39.0%、2月+18.6%と10〜12月期平均の+19.36%から上昇幅が高まる傾向を見せているので、第3次補正予算の執行が本格化する下で、増加に転じているのではないかと見られる。

【2月の輸出の立ち直りから見て外需には回復の兆し】
 最後に外需の動向を見ると、10〜12月期の前期比−0.2%成長に対し、純輸出は−0.6%の大きなマイナスの寄与度であったが、2月はやや変化の兆しが出てきた。
 前掲の表に示したように、2月の鉱工業輸出は前月比+4.8%、同輸入は同−3.7%と大幅な輸出超過に転じたが、通関ベースでも2月の輸出数量指数(2005年=100)が97.4と、輸入数量指数の96.0を5か月振りに上回った。
 金額ベースでは、原油高騰を主因に輸入価格が著しく上昇しているため、2月の通関ベースの貿易収支(季節調整済み)は3132億円の赤字であるが、それでも前月(4943億円)に比して約4割縮小した。輸出が前月比+2.9%増加し、輸入が同−0.4%減少したからである。
 言うまでもなく、実質成長率への寄与は数量ベースなので、2月の傾向が3月も続くと、1〜3月期の純輸出はプラスの寄与度に転じ、成長率を押し上げる要因になるかも知れない(図表3)。