2011年1月版
家計消費の駆け込み需要の反動と輸出の伸び率鈍化から10〜12月期は小幅のマイナス成長か
【生産・出荷の下落は11月に底を打ち反転上昇へ】
鉱工業生産は、乗用車、電子部品・デバイスなどの生産調整を中心に、昨年5月から6か月間連続して下落してきたが、昨年11月に底を打って上昇に転じた。同月の生産と出荷は、前月比それぞれ+1.0%、+2.5%の増加となり、製造業生産予測調査によると、12月は同+3.4%、1月は同+3.7%とかなり大幅な上昇を続ける見込みである。仮に実績が予測通りになると、本年1月には下落前のピークである昨年5月の水準を+2.4%上回る形となる(図表1)。
予測と実績には乖離があるので、実際にそうなるかは分からないが、エコカー補助金の打ち切りやエコポイント制度の対象絞り込みなどに伴う、乗用車や電子部品・デバイスの駆け込み需要に備えた増産とその反動調整が生み出した鉱工業生産の下落が、一巡したことは確かであろう。生産の再上昇は、一定のラグを伴って、今後の雇用情勢の好転に反転されてくると思われる。
【11月の家計消費では7〜9月期の駆け込み需要の反動がまだ尾を引いている】
さて、11月の需要動向を家計消費から見ていくと、「販売統計」では小売販売額は前月比+1.9%の増加となり、前年比も10月の−0.2%から11月は+1.3%に回復した。エコカー補助金の打ち切りに伴う乗用車新車登録台数の減少は続いているが、12月からエコポイントがほぼ半減される前の駆け込みで、家電販売額は10月に前月比+8.8%となったのに続いて、11月は更に同+23.0%と大幅に伸びた。
「販売統計」から判断すると、7〜9月期の消費増加による10〜12月期の反動減は、12月の動向にもよるが、さほど大きくないと思われる。
「家計調査」を見ると、11月の消費水準指数(全世帯)は前月比+1.7%の増加となったが、前年比では10月の−0.3%に続いて11月も−0.1%とまだ前年の水準を下回っており、7〜9月期(同+1.2%)からの反動減がまだ尾を引いているようにみえる(図表2)。
【雇用の緩やかな回復を主因に可処分所得は増加傾向】
この間消費の背後にある可処分所得は比較的確りしている。11月の実質可処分所得は前年比+0.5%と10月に同+8.1%と大きく伸びたあともプラスを維持しており、7〜9月期の同+0.5%に比し、10〜12月期は前年比の伸びを高めそうな気配である。
これは、雇用が徐々にではあるが回復しているためと見られる。11月の「労調」の雇用者数は前年比+0.3%と3か月連続で前年を上回っている(図表2)。11月の「毎勤」の常用雇用者数も同+0.6%と10月の同+0.7%に続いて7〜9月期の同+0.5%を僅かに上回る伸びを見せている。
他方、11月の実質賃金は、前年比−0.5%と11か月振りに前年を下回った(図表2)。これは「特別に支払われた給与」(賞与)が前年を下回ったためである。
【設備投資と住宅投資は増勢持続】
次に投資動向をみると、7〜9月期に前期比+1.2%となった実質GDPベースの住宅投資は、新設住宅着工戸数の動向から判断して、引き続き10〜12月期も増加を続けているとみられる。
7〜9月期の住宅着工戸数は、812千戸と前期比+6.8%の増加となったが、10〜11月の平均は830千戸と更に7〜9月期の水準を+2.2%上回っている(図表2)。
09年10〜12月期から10年7〜9月期まで4四半期連続して増加している設備投資は(図表3)、国産と輸入を合計した資本財総供給(除輸送機械)の前月比から判断すると、10〜12月期に入って勢いを失っているようにみえる。10〜11月の平均は7〜9月期の平均を−1.1%下回った。もっとも、この計数は振れが大きいので、12月の実績を見ないと10〜12月期の最終的な判断は下せない。
先行指標の機械受注(除く船舶、電力、携帯電話)が5四半期連続して増加傾向を辿っていることや、12月調査の「日銀短観」で本年度下期の設備投資計画(全産業)が前年比+8.2%の伸びとなっていることから判断すると、設備投資は10〜12月期も着実に増加している可能性が高い。
【輸出の伸び率鈍化から「純輸出」の成長寄与度はマイナス】
最後に外需の動向をみると、11月の通関ベースで、輸出は前月比+1.7%、前年比+9.1%のそれぞれ増加となったが、輸入の伸びはこれを上回り、前月比+14.2%、前年比+5.1%となったため、貿易収支の黒字は前月や前年同月に比べて縮小した。
これを実質ベースに換算すると(日銀推計)、前月比で輸出は−1.7%、輸入は+1.2%となり、GDPベースの純輸出に対応する実質貿易収支の黒字は前月に続いて縮小した(図表2)。
7〜9月期に成長寄与度が−0.0%と6四半期振りにプラスではなくなった純輸出(実質、図表3)は、10〜12月期にマイナスの寄与度がやや大きくなるかも知れない。
輸出先別にみると、10月に比べ11月に輸出増加率が大きく下がったのは米国向け(前年比+4.7→+1.2%)で、中国向け(同+17.5→+18.3%)などアジア向け(同+11.3→+13.0%)は、10月に比し前年比伸び率を高めている、
【10〜12月期はマイナス成長の蓋然性が高い】
多くの調査機関が、10〜12月期は前期比マイナスになると予測しているが、果たしてそうなるかどうかは、12月の計数が判明するまで早断は出来ない。しかし、外需の成長寄与度がマイナスとなり、内需の主柱である家計消費の寄与度も駆け込み需要の反動で若干のマイナスになるとすれば、設備投資、住宅投資など民間投資だけのプラス寄与度で、成長率全体がプラスを維持するのは難しそうである。
マイナス成長になるか、なったとしてその幅がどの程度になるかは、12月の家計消費と外需の動向に懸っている。
しかし、仮にマイナス成長になったとしても、家計の可処分所得が徐々にではあるが着実に回復していること、輸出の伸び率低下がアジア向けを中心に底を打ったこと、などから判断すると、本年1〜3月期以降もマイナス成長を続ける蓋然性は低いように思われる。