2010年9月版
7〜9月期の成長率は家計消費を中心にやや持ち直しへ
【成長率は4〜6月期上方修正のあと、7〜9月期は更に高まる可能性】
4〜6月期の実質成長率が、設備投資と在庫投資の上方修正により、1次速報値の年率0.4%から同1.5%に改定された(図表3)。
7〜9月期は、猛暑効果に加え、エコカー補助金の打ち切りに伴う乗用車の駆け込み需要もあって、4〜6月期に横這いであった家計消費が伸びるため、実質成長率は4〜6月期を上回るとみられる。
しかし、10〜12月期はその反動で家計消費が頭打ちとなり、また円高・株安の影響が出てくる可能性もあるので、成長が足踏みする恐れがある。
このため、菅政権は本年度予備費から9200億円を使って追加経済対策を実施することを決めた。小沢代表候補は、代表選挙に勝てば予備費2兆円を全額使って年度下期の景気下支えを図ると言っている(このHPの<論文・講演>「新聞」“成長戦略産業の育成に本腰を”(H22.9.9)参照)。
従って、10〜12月期、1〜3月期の景気足踏みが、これらの政策によって防げるかどうかが、今後の注目点となろう。
しかし、取り敢えず本年1〜6月の実質GDPの平均年率は、前年比+2.7%に達しているので、10歴年の実質成長率が3%を超える可能性がある。また本年4〜6月期の実質GDP(年率)は、前年度の平均比+1.7%となっているので、本年度の実質成長率が2%台中頃になる可能性もある。
【生産財の減産を主因に鉱工業生産の上昇テンポは鈍化】
7月を中心とする最新の景気指標をみていくと、まず7月の鉱工業生産は前月比+0.3%の増加となり、先行きの生産予測指数の前年比は8月+1.6%、9月+0.2%と緩やかながら3か月続けて上昇する形となった。実績が予測通りになったとすると、7〜9月期は前期比+0.7%と4〜6月期(同+1.5%)よりも更に減速しながら緩やかな上昇を続ける(図表1)。
業種別にみると、減速の主因は鉄鋼、電子部品・デバイスなど中間製品の減産で、生産財全体でみると、6月は前月比−2.2%、7月は同−0.5%と2か月連続で生産が落ちた。資本財、耐久消費財など最終製品の上昇テンポの鈍化のシワが中間製品に寄ったのであろう。
【7〜9月期の家計消費は増加】
最終需要の動向をみると、実質GDP統計で4〜6月期に前期比−0.0%となった家計消費は、7月以降持ち直している。「家計調査」によると、4〜6月期に前年比−0.2%となった消費水準指数(全世帯)は、7月に同+1.2%に回復した(図表2)。
また「販売統計」によると、4〜6月期に前期比+0.1%にとどまった小売販売額は、月ベースでみると、6月に前月比+0.4%、7月に同+0.7%と2か月連続して上昇し、7月は4〜6月平均比+5.1%となった。猛暑効果は、家電販売額のエアコンとコンビニの冷菓・清涼飲料などにでている。
またエコカー補助金打ち切り前の駆け込み需要が9月上旬まで続いた乗用車の新車登録台数は、7〜8月平均で4〜6月平均を+12.8%上回り、8月の前年比は+40.1%に達した。
【雇用・賃金は緩やかに持ち直し】
家計消費の背景にある雇用・賃金の動向をみると、「労調」の季節調整済みの計数で7月は就業者が前月比21万人増、完全失業者が同6万人減となり、完全失業率は前月比0.1%ポイント低下し、5.2%となった(図表2)。
このような雇用・賃金の動向を反映し、「家計調査」の実質可処分所得(勤労者世帯)は、6月に前年比+7.4%と大きく伸びたあと、7月の反動減も同−0.3%にとどまった(図表2)。
【設備投資は緩やかながら着実に増加】
次に設備投資の動向をみると、4〜6月期1次速報で前期比+0.5%増にとどまっていた実質GDPベースの設備投資は、4〜6月期の「法人企業統計」(名目)で前期比+6.4%増となったのを受けて、2次速報で同+1.5%に上方修正された(図表3)・
7月の資本財(除輸送機械)の総供給指数をみると、国内向け出荷と輸入の合計は、前月急増(前月比+10.5%)の反動で、同−2.4%と減少したが、7月の水準は4〜6月平均を+2.6%上回っている。昨年10〜12月期から3四半期連続して緩やかに回復している設備投資は、7〜9月期も引き続き上昇するとみられる。
先行指標である機械受注(民需、除く船舶、電力、携帯電話)は、7月に前月比+6.4%、前年比+17.7%とかなり大きく伸び、7月の4〜6月平均比は+5.4%となった。このような先行指標の着実な上昇からみて、今のところ円高・株安の影響は現れていないと判断される。
【住宅投資は底這い、公共投資は減少】
7月の新設住宅着工戸数は、772千戸(季調済年率)と前月比+2.9%増、4〜6月平均比+1.5%増となった(図表2)。実質GDP統計の住宅投資は、昨年1〜3月期から10〜12月期まで、4四半期連続で減少した後、本年1〜3月期に前期比+0.3%と微増したが、4〜6月期には再び同−1.3%の減少に戻った。
しかし、7月の住宅着工の持ち直しから判断すると、住宅投資はこのまま減少を続けるのではなく、一高一低のうちに底を這う蓋然性が高い。住宅着工統計をみても、大底は昨年7〜9月期であり、そこ後はやや持ち直した水準で一高一低となっている(図表2)。
次に実質GDPベースの公共投資は、昨年7〜9月期から4四半期連続して下落しているが(図表3)、予算の減額を背景に公共工事請負額が本年1月から一貫して前年比マイナスを続けていることからみて(図表2)、今後も減勢を辿るものと思われる。
【外需の成長寄与は続く】
最後に外需の動向をみると、輸出の前年比増加率は本年2月の+45.3%をピークに増加幅を縮め、7月は同+23.5%となったが、輸入の伸びはなお輸出の伸びを下回っており、貿易収支の黒字は拡大傾向を崩していない。
これを実質ベースに換算すると(日銀推計)、7月は輸出が前月比+2.4%増、4〜6月平均比+2.5%増、輸入が前月比−0.6%減、4〜6月平均比+2.3%となっており、7月の実質貿易収支(GDP統計の純輸出に対応)は前月比+11.6%増、4〜6月平均比+2.7増%となっている。
4〜6月期の前期比+0.4%増の実質成長率のうち、+0.3%は純輸出の増加によるものであるが(寄与率75%)、7〜9月期も外需の大きな成長寄与が続くであろう。円高の影響が出てくるとすれば、10〜12月期以降とみられる。