2010年8月版
リーマン・ショックの反動による急回復期を過ぎ、成長は巡航速度へ、秋以降は賃金・雇用の動向が鍵

【4〜6月期の生産、出荷の上昇は耐久消費財を中心に大きく鈍化】
 家計消費の停滞を中心とする国内需要の鈍化を主因に、昨年4〜6月期から本年1〜3月期までの急回復(1年間に+4.6%成長)は終わり、4〜6月期に入って緩やかな成長に変わってきた。しかし7〜9月期以降も経済が足踏み状態になる蓋然性は低く、引き続き根強い拡大が続くとみられる。
 まず6月の鉱工業生産は、予測指数の前月比+0.4%とは裏腹に、同−1.5%と4か月振りの減少となり、出荷も同−0.2%の微減となった。先行きの生産予測指数の前月比は、7月−0.2%、8月+2.0%となっているが、実績が予測通りになったとしても、7〜8月平均は4〜6月平均比−0.2%の微減となる。図表1をみれば明らかなように、生産は5月以降、明らかに頭打ち傾向を示している。
 1〜3月期と4〜6月期の四半期別推移をみても、前期比増加率は生産が+7.0%から+1.4%へ、出荷が+7.2%から+1.5%へ鈍化した。財別にみると、下表の通り各財とも伸び率が鈍化しているが、とくに大きいのはマイナスに転じた耐久消費財である。


【エコポイント対象の絞り込みで耐久消費財の販売が反動減】
 4〜6月期の耐久消費財出荷の前期比−1.7%を国内向けと輸出向けに分けると、国内向けが−1.6%、輸出向けは+0.1%である。減少の主因は国内消費の落ち込みとみられる。また国産と輸入を合計した耐久消費財の国内向け総供給も、1〜3月期の+6.5%の増加から4〜6月期は同−0.4%の減少となった。
 「販売統計」を調べると、4〜6月の小売業販売額は前年比+3.7%、季調済み前期比+0.1%となったが、このうち家電販売額だけを取り出すと、前年比+8.2%、季調済み前期比−1.0%である。
 以上のことから、エコポイント制度の対象となるテレビが本年4月1日から絞られたため、3月までの買い急ぎの反動が4〜6月期に大きく出たことが、鉱工業生産、出荷の鈍化を招いた大きな原因とみられる。

【雇用情勢は引き続き厳しい】
 このような攪乱を除く家計消費の基調を判断するため、雇用・賃金の動向をみると、4〜6月期の雇用は「労調」の雇用者が前年比−0.3%と前期(−0.3%)と変わらぬ減少幅となり(図表2)、「毎勤」の常用雇用は同+0.2%と前期(+0.1%)よりも僅かに増加幅を高めたが、全体としてみると大きな変化はみられない。この間4〜6月の完全失業者(季調済み)は3月の331万人から6月の347万人へ16万人増加したため、完全失業率は3月の5.0%から6月は5.3%へ上昇した(図表2)。有効求人倍率も3月の0.50から6月の0.47へ低下した。雇用情勢は引き続き厳しい。ただ、新規求人は3月から前年を上回り始め、6月は前年比+12.8%となり、新規求人倍率は3月の0.77から6月は0.88まで上昇した。

【時間外と賞与の増加で賃金と可処分所得は増加】
 次に「毎勤」の実質賃金をみると、1〜3月期に前年比+1.4%と増加に転じたあと、4〜6月期は同+2.2%と増加幅を拡大した。雇用が増加していない下で経済が拡大しているため、所定外(時間外)給与が前年に比べて増えており、加えて6月は夏期賞与が3年振りに前年を上回ったため、特別に支払われた給与も前年比+3.3%の増加となった。
 このような賃金の動向を反映して、「家計調査」の実質可処分所得(勤労者世帯)は、6月に前年比+7.1%と大きく伸び、4〜6月期全体も同+2.2%と前期(+1.4%)を上回って伸びた(図表2)。
このような可処分所得の伸びに伴い、6月の消費水準指数は前年比+0.6%と増加したが、4〜6月期全体としては、前述した耐久消費財消費の落ち込みが響き、同−0.2%の減少となった。
 これに伴い平均消費性向は大きく低下して購買力が先送りされているので、猛暑の7〜8月の夏物消費は、かなり活発化している模様である。

【設備投資は製造業を中心に緩やかな回復を持続】
 次に設備投資の動向をみると、足許の機械に対する投資を示す資本財(除輸送機械)の国内向け総供給(国産と輸入の合計)は、4月(前月比−1.6%)、5月(同−4.5%)と減少したあと、6月は同+10.9%と大きく伸びたため、4〜6月期全体としても前期比+2.7%の増加となった。これは1〜3月期の同+14.9%からは大きく鈍化しているが、昨年4〜6月期、7〜9月期並みの伸びである(図表2)。実質GDPベースで2四半期続いて増加した設備投資は(図表3)、4〜6月期も緩やかながら上向いている可能性が高い。
 先行きを示す4〜6月期の機械受注(民需、除船舶・電力・携帯電話)は、前年比+7.9%と前期(同+1.3%)よりも増加幅を拡大したが、季調済み前期比は−0.1%とほぼ横這いにとどまった。また7〜9月期の民需(除船舶・電力)の見通しは、前年比+6.2%と増加幅を拡大し、季調済み前期比は+0.8%と製造業を中心に4四半期続けて緩やかに増加する予想となっている。

【アジア向け輸出を中心に4〜6月の実質貿易収支の黒字は大きく拡大】
 最後に外需の動向をみると、日本銀行の推計した実質ベースで、6月は輸出が前月比−0.3%減、輸入が同+1.1%増となり、実質貿易収支の黒字は前月比−4.8%縮小しやが、4〜6月期全体では、輸出が前期比+9.5%増と輸入の同+6.5%増を上回って伸びているため、実質貿易収支(実質GDPの「純輸出」に対応)は同+19.1%と前期(同+14.6%)を更に上回る増加となった。
 このところ名目輸出の前年比増加率は、本年2月の+45.3%をピークにジリジリと落ちているが、アジアNIEs、ASEAN、インドを中心とするアジア向け輸出の伸び(6月は+31.7%)が全体を牽引して6月も+27.7%とかなり高い伸びを維持している。
 ただ、米国(+21.1%)、EU(+9.0%)など回復が遅れている先進国と、成長の行き過ぎを抑制している中国(+22.0%)に向けた輸出の伸びは鈍っている。

【4〜6月期は年率2%台中頃の成長に鈍化するが、7〜9月期も引き続きプラス成長が続こう】
 以上を総括すると、来週8月16日(月)に公表される4〜6月期実質GDP(1次速報)は、家計消費の停滞、設備投資の小幅増加、住宅投資の頭打ち、公共投資の減少持続などによって、内需全体はほぼゼロ成長圏内にとどまる蓋然性が高い。
 しかし、「純輸出」は前期(成長寄与度+0.7%、年率+2.7%)並みの拡大を続けているので、実質GDP全体としては年率2%台中頃のプラス成長になったのではないかと予測される。
 これは、1〜3月期の年率+5.0%成長(図表3)からは大きな鈍化であるが、日本経済の拡大がこのまま足踏み状態に入る兆しとはみられない。リーマン・ショックからのリバウンドによる09年4〜6月期から10年1〜3月期までの+4.6%という異常な高成長が収まり、いわば巡航速度に入っていく動きとみられる。
 7〜9月期は猛暑に伴い、4〜6月期に低下した消費性向が再び回復し、夏物消費の増加を中心に引き続き、プラス成長が続く公算は高いとみられる。
 秋以降の鍵を握っているのは、厳しい情勢を続けている雇用がいつから回復を始めるか、また賃金の回復テンポが高まってくるか、など雇用・賃金情勢であろう。それは、当面の企業業績の回復がどの程度賃金・雇用の回復に還元されてくるかという事でもある。