2009年12月版
政策効果と消費者物価下落による実質消費の増加およびアジア向け輸出の回復に支えられ、10〜12月期もプラス成長持続の公算

【生産、出荷は12月に前年同月比を上回る見込み】
 日本経済は、需給ギャップは大きく、失業率は高いものの、4〜6月期以降の回復基調が続いている。
 10月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ+0.5%、+1.3%と8か月連続の上昇となり、11月と12月の生産予測指数も、それぞれ+3.3%、+1.0%と上昇を続ける形となっている(図表1)。
 実績が予測通りであれば、10〜12月期は前期比+5.2%と3四半期連続の増加となる。また、前年は7月から生産、出荷が低下し始め、リーマン・ショックの10月以降に急落しているため、回復を続ける本年の生産、出荷は、実績が予測通りになれば、12月に前年同月を上回るに至る。もっとも、前年6月のピークに比較すれば、12月の生産予測指数はまだ−14.9%の低水準にとどまっている。
 回復をリードする業種としては、8月以降12月まで、一般機械の上昇が目立つ。
 
【雇用の悪化は底を打ち、実質賃金は2か月連続して前年比上昇】
 10月の雇用は、「労調」の就業者が前年比−1.8%、雇用者が同−1.4%(図表2)、「毎勤」の常用雇用が−0.2%といずれも前年水準を下回っている。ただし、季節調整すると、いずれも本年6〜8月中に底を打ち、9月、10月と僅かに回復している。
 完全失業率も7月の5.7%をピークに3か月連続して低下し、10月は5.1%となった(図表2)。有効求人倍率も、僅かに上昇に転じた。雇用の悪化は止まったようにみえる。
 他方、消費者物価の下落に助けられて、実質賃金は9月(前年比+0.6%)に続いて10月も同+1.3%と2か月連続して上昇した。

【政策効果を反映し実質消費は家電・乗用車を中心に増勢持続】
 このような雇用と実質賃金の底打ちは、「家計調査」の実収入(勤労者世帯)や可処分所得(同)の実質ベースの増加には反映されていないが、実質の消費支出(全世帯と勤労者世帯)は、下表の通り、8月から10月まで3か月連続して増加した。これは消費者物価の下落による実質購買力の上昇に加え、エコ・ポイント制度、エコ・カー減税、車の買い替え支援などの政策効果によって、消費性向が高まっているためである。


 このことは、「販売統計」を見ると、一層はっきり読み取れる。10月の小売販売額は、前年比−0.9%と若干のマイナスであったが、家電販売額は同+7.7%、乗用車新車登録台数は同+24.7%と大幅に伸びている。また11月の乗用車新車登録台数は、同+24.7%と更に大幅な伸びを記録した。

【7〜9月期GDP統計の設備投資と成長率は下方修正されよう】
 設備投資は7〜9月期の実質GDP統計において、前期比+1.6%と6四半期振りの増加に転じた。他方一般資本財出荷は、7〜9月期に前期比+5.3%と7四半期振りに増加したあと、10月は再び前月比−1.3%の減少となった。もっとも、10月の水準は7〜9月期平均比+5.2%の水準にあり、10〜12月期の設備投資が再び腰折れするとみるのは早計であろう。
 やや気懸りなのは先般発表された7〜9月期の「法人企業統計」である。設備投資(ソフトウェアを除く)は、7〜9月期に季調済み前期比で−8.8%の大幅減少となった。
 下表のように、「実質GDP統計」の設備投資と「法人企業統計」(名目)のそれは必ずしも一致しているわけではないが、今月9日(水)に公表される実質GDPの「2次速報値」では設備投資が下方修正され、つれて7〜9月期の実質成長率(年率4.8%)が下振れすることは免れないと思われる。



【10月の実質貿易収支の黒字は大きく拡大】
 最後に外需の動向をみると、10月の通関輸出は前年比−23.2%と前月(同−30.7%)に比して大きく減少幅を縮め、季調済み前月比は+2.5%の増加となった。他方、輸入は季調整済み前月比で−2.0%の減少となったため、季調済みの貿易収支黒字は大きく拡大した。
 これを実質GDP統計の「純輸出」に引き直すため、日本銀行の試算した実質ベースの輸出入と貿易収支でみると、10月実質輸出は季調済み前月比で+3.3%、実質輸入は同−6.5%、実質貿易収支の黒字は同+53.9%の拡大となる(図表2)。これは、7〜9月期平均に比べても+46.7%の大幅拡大である。
 輸出は下表のように対アジア向けを中心に、着実に回復している。


【10〜12月期も3四半期連続のプラス成長の可能性】
 以上、10月の動向から判断すると、7〜9月期における内需の6四半期振りの増加、外需の2四半期連続の増加という回復の基調(図表3)は、10〜12月期に入ってからも続いているように思われる。
 「法人企業統計」の設備投資の弱さと「鉱工業統計」の一般資本財出荷の強さとの乖離は、解釈に苦しむところであるが、仮に設備投資がやや減少しているとしても、政策効果と消費者物価の下落に支えられた実質個人消費の増加があるので、先行き10〜12月期に内需が再び減少に転じるリスクは小さい。また外需は着実な増加を続けている。
 従って、4〜6月期、7〜9月期に続いて、10〜12月期もプラス成長を維持する蓋然性はかなり高いと考えられる。