2009年2月版

輸出の激減と消費・投資マインドの冷え込みでマイナス成長が続く

【輸出急落に伴う鉱工業生産の大幅減産は年明け後も続いている】
 輸出と鉱工業生産・出荷の急落が続いている。
 日本銀行が試算した実質輸出は、11月の前月比−14.0%の大幅減少に続き、12月も同−9.8%と急落している。この結果、10〜12月期の実質輸出は前期比−15.2%と大きく減少した。他方、10〜12月期の実質輸入は、前期比+0.6%と微増しているため、同期の実質貿易収支は同−53.5%の大幅減少となった(図表2)。10〜12月期の実質GDP統計においては、「純輸出」が実質成長率に対してかなりのマイナス寄与となるであろう。
 このような輸出の急落が続いているため、12月の鉱工業出荷は、輸出の主力製品である乗用車、電子部品・デバイス、一般機械などを中心に、前月比−8.0%、前年同月比−20.5%と大幅に落ち込んだ。12月の生産も出荷の減少に対応して抑えられ、前記3業種を筆頭に総ての業種で減産となり、全体では前月比−9.6%、前年同月比−20.6%の大幅下落となった。
 しかし、このような急激な生産調整にも拘らず、12月の鉱工業生産在庫は前月比+0.1%とほぼ横這いにとどまり、在庫率は前月比+6.5%、前年同月比+33.5%の上昇となった。このため1月以降も生産調整が続き、生産予測指数の前月比は、1月−9.1%、2月−4.7%と大幅な続落が見込まれている。1〜2月の生産予測指数の平均は、10〜12月平均比−19.7%とほとんど2割の下落が見込まれている(以上、図表1参照)。

【完全失業率は4.4%に急上昇】
 製造業の急激な減産に伴い、派遣社員など非正社員を中心に解雇が増加し、社会問題化している。
 12月の雇用者は前年同月比−0.1%とほとんど落ちこんでいないが(図表2)、業種別の内訳を見ると、製造業(前年同月比−13万人、−1.2%)、運輸業(同−23万人、−7.3%)、建設業(同−10万人、−2.3%)の減少が目立つ。
 他方、前年同月比で増えているのは、医療・福祉(同+25万人、+4.5%)、サービス業(同+23万人、+2.9%)、飲食店・宿泊業(同+10万人、+3.9%)である。国民生活に密着したこれらの業種の雇用が、どこまで全体を下支えていけるのか、今後の推移が注目される。
 他方、12月の就業者(雇用者+自営業主+家族従業者)は前年同月比−65万人、−1.0%の減少となり、完全失業者は同+39万人、+16.9%とかなり増加した。このため季節調整済みの完全失業率は4.4%と前月(3.9%)から大きく上昇した。

【消費マインドは慎重化】
 毎月労働統計の名目賃金は、12月に前年比−1.4%、10〜12月期も同−0.9%とここへきて前年を下回り始めた(図表2)。決まって支給する給与のうちの定例外給与(ボーナス)が、12月は前年比−11.2%、10〜12月期は同−7.0%と大きく減少しているのが主因である。
 これに対して、家計調査の可処分所得(勤労者世帯)は、12月に前年比+1.7%、10〜12月期も同+1.6%の増加と名目賃金の動きとはやや食い違いを見せている。
 しかし、12月の家計消費は、家計統計からみても、販売統計からみても、弱くなってきた。家計統計の消費支出は、12月に前年比−4.2%、10〜12月期も同−2.0%と共に前年水準を下回った。可処分所得は前年を上回っているので、10〜12月期の平均消費動向(勤労者世帯)は前年同期の64.5%に対し、62.0%の低さとなった。景気後退のニュースが毎日のように伝えられるため、先行き不安から消費者の態度が慎重化し、貯蓄を増やしているためと見られる。

【住宅投資も弱気化】
 販売統計では、小売業販売額が12月に前年比−2.7%の減少、10〜12月期も同−1.5%と7〜9月期の+0.8%からマイナスに転じた。乗用車新車登録台数も、8月に前年比−8.0%と減少に転じたあと、毎月減少幅を拡大し、本年1月は同−20.0%まで落ち込んでいる。
 家計の慎重な態度は、住宅投資にも窮われる。図表2に見られるように、新設住宅着工戸数は、昨年7月以来、前年比プラスを続けていたが、11月には前年比0.0%、12月には同−5.8%とマイナスに転じた。前年の水準が高いわけではなく、季節調整済みの年率で、10〜12月期は101万戸と1〜3月期〜7〜9月期の112〜114万戸を下回り始めたのである。

【企業の投資マインドは一段と冷え込み】
 企業の投資マインドも一段と冷えている。足許の機械に対する設備投資と機械輸出の動向を反映する一般資本財出荷は、月を追って前年比マイナス幅を拡大しており、12月は前年比−27.7%まで落ち込んだ(図表2)。
 機械に対する投資に6〜9か月先行する機械受注(民需、除く船舶・電力)は、11月に前年比−27.7%と下落幅を大きく拡大した(図表2)。これは、10〜12月期の見通し(同−6.9%)をかなり上回る落ち込み幅で、当初の見通しからはかなり下振れしていると見られる。
 非居住用の建築着工床面積も、12月は前年比−17.7%、10〜12月は同−8.4%と落ち込んでいる。

【10〜12月期は3四半期連続のマイナス成長】
 以上のように、米国発の金融危機に端を発する世界同時不況の日本経済に対する影響は、月を追って強まっている。
 2月16日(月)発表予定の10〜12月期のGDP統計では、内需の2本柱である家計消費と設備投資が共に減少する上、外需(純輸出)も落ちるため、4〜6月期(前期比−1.0%)、7〜9月期(同−0.5%)に引き続き、10〜12月期の実質成長率も前期比で3%前後の大幅なマイナスになるのではないかと思われる(図表3)。
 マイナス成長は1〜3月期も続き、戦後最長のマイナス成長の記録を更新していくこととなろう。
 09年度に入ってマイナス成長が止まってくるとすれば、現地の在庫調整一巡で輸出の減少率が縮まり、他方マイナス成長を反映して輸入が減少し始め、「純輸出」が上振れしてくること、円高と国際原料品市況の下落で消費者物価(除生鮮食品、12月は前年比+0.2%)が下がり始め、実質ベースの賃金・所得が下げ止まりないしは増加すること、第1次第2次補正予算の景気刺激効果が出てくること、などが切っ掛けとなろう。
 円高メリットを活かし、内需志向企業が積極化することも、期待される。