2008年11月版

輸出、設備投資、個人消費の下振れから7〜9月期は小幅のマイナス成長の可能性
―実体面に顕在化し始めた金融危機の影響


【金融面は小康状態となったが実体面では欧米諸国が揃ってマイナス成長へ】
 米国の金融危機に端を発した各国の金融システムの動揺は、各国中央銀行の流動性供給や欧米主要国の公的資金投入スキームの創設などによって、一先ず落ち着きを取り戻しつつある。世界の同時株安も暴落のあと底這いの状態となった。しかし、実体面への悪影響が次々と表面化しつつある。
 既に米国では7〜9月期のGDP統計(速報)が発表され、GDPの7割を占める個人消費が17年振りにマイナスに転じた。その上、住宅投資、設備投資も下がって内需は総崩れとなり、輸出も鈍化したため、前期比年率−0.3%のマイナス成長となった。マイナス成長は、更に10〜12月期、1〜3月期も続く可能性がある。
 他方欧州では、英国が7〜9月期にマイナス成長となり、ユーロ圏も、既に4〜6月期に年率−0.2%のマイナス成長となったあと、7〜9月期と10〜12月期にも同−0.1%ずつのマイナス成長が続くと予測されている(欧州委員会)。

【日本の鉱工業生産、出荷の下落テンポは加速】
 日本では、国際商品市況の高騰と円安による輸入物価の大幅上昇により、企業収益の圧迫と実質個人所得の減少(交易損失の拡大)が生じ、4〜6月期は年率−2.4%の大幅なマイナス成長となった(図表3)。7〜9月期も、以下に見るように小幅のマイナスか、ゼロ成長近傍の動きと予想される。
 まず、鉱工業生産の動きを見ると、9月は前月の大幅な下落(前月比−6.2%減)の反動で、前月比+5.5%の上昇となったが、7〜9月期の平均は、前期比−4.3%と3四半期連続の下落となり、下落幅も期を追って拡大している。10月と11月の生産予測指数も、夫々前月比−2.3%、同−2.2%の続落となり、更に下落テンポを早める形になっている(以上図表1)。
 出荷もほぼ同様の下落傾向を辿っており、在庫率は8月に高まったあと、9月は高水準で横這いとなった(図表1)。出荷の減退に加え、在庫面からも生産調整圧力が働くと思われる。

【7〜9月期の非耐久消費財と家電に猛暑効果とオリンピック効果】
 生産、出荷の下落傾向の中心は、一般機械、電気機械、電子部品・デバイス、乗用車、鉄鋼など、輸出と設備投資に関連した業種である。
 その中で、唯一上昇傾向を維持している分野は、非耐久消費財である(下表参照)。


 販売統計を見ても、乗用車新車登録台数は7〜9月期も前期比−2.2%と2四半期連続して減少したが、小売業販売額(中心は非耐久財)は7〜9月期に前期比+0.4%と猛暑効果もあって3四半期振りに増えた。また7〜9月期の家電販売額は、非耐久財ではないが、猛暑効果によるエアコンとオリンピック効果によるTVの販売好調から、前期比+3.4%と大幅な伸びを示した。

【消費者物価の大幅上昇で実質ベースの所得と消費は減少】
 しかし、消費全体を見ると、消費者物価の上昇に喰われ、実質ベースの家計消費が7〜9月期に前期比プラスになったとは判定し難い。
 家計統計を見ると、7〜9月期の可処分所得(勤労者)は前年比+0.8%、消費支出(全世帯)は同+0.2%と、名目値ではいずれも増加している(図表2)。
 しかし、7〜9月期の全国消費者物価は、ガソリンの高騰がピークに達し、食料品の値上げも始まったため、総合で前年比+2.2%、除く生鮮食品で+2.3%と、大きく上昇している。このため、家計統計の可処分所得も消費支出も、実質では前年比マイナスである。
 7〜9月期の国内最終需要で、唯一増加したと見られるのは、民間住宅投資である。新設住宅着工戸数の前年比は、7月からプラスに転じ、7〜9月期では+40.2%の大幅上昇となった(図表2)。もっともこれは、前年のこの時期に、建築基準法の改正に伴う混乱で、着工が大きく落ち込んだことが響いている。しかし、季節調整済み年率の着工戸数を見ても、7〜9月期は前期比+1.4%の増加となっている。

【急激に冷え込む企業の投資マインド】
 次に、企業の動向を見ると、金融危機に伴う世界経済の成長減速を見込み、このところ投資態度はかなり慎重化しつつある。設備投資と輸出の一部の動きを反映する一般資本財出荷は、7〜9月期に前期比−5.7%と4四半期連続で減少し、その減少テンポは期を追って加速している。このため前年比減少幅も拡大し、7〜9月期は−11.2%に達した(図表2)。
 先行指標である機械受注(民需、除く船舶・電力)は、4〜6月期の前年比+5.3%から7月は同−4.7%、8月は同−13.0%と急落に転じた(図表2)。これを季節調整して見ると、07年7〜9月期から08年4〜6月期まで4四半期連続して増加していた受注額が、月ベースで6月から下落に転じ、前月比で6月−2.6%、7月−3.9%、8月−14.5%と下落テンポを早めている。
 金融危機と株価暴落は、企業の投資マインドを急激に冷え込ませているように見受けられる。

【4〜6月期に続き7〜9月期も外需は成長に寄与しない見込み】
 世界経済の成長減速の影響は、日本の輸出に徐々に響き始めている。通関統計を元に日本銀行が推計した実質輸出は、8月に前月比−1.5%、9月に同−0.5%と2か月連続で減少した。ただ、その前に7月まで3か月連続して増加したため、7〜9月期の平均は前期比+1.6%の小幅増加となった。しかし、7〜9月期の輸入は同+2.7%と輸出を上回って伸びているため、7〜9月期の実質貿易収支は前期比−1.0%と僅かに減少した(図表2)。 GDPベースの「純輸出」は、4〜6月期の前期比横這いに続き、7〜9月期もほとんど増えないのではないかと思われる。

【7〜9月期の実質GDPは小幅のマイナス成長か横這い圏内の動き】
 以上を総括してみると、7〜9月期の日本経済は、内需の二本柱である家計消費と設備投資がマイナスとなるため、住宅投資と在庫投資(過剰在庫の積み上がり)が若干プラスになる可能性があるものの、内需全体は4〜6月期の前期比−0.6%に引き続き、マイナスになる蓋然性が高い。
 他方、純輸出は4〜6月期ほどではないにしろ、若干のマイナスか、横這い圏内の動きになるのではないかと思われる。
 この結果、7〜9月期の実質成長率は、4〜6月期の年率−2.4%(図表3)よりは下落幅が縮小するものの、2四半期連続のマイナス成長となるか、良くてもほぼ横這いで推移するのではないかと予測される。