2007年1月版

個人消費がプラスに戻り成長率は持ち直し傾向

【日本銀行の再利上げは今年に持越し】
   昨年12月19日の政策委員会・金融政策決定会合において、日本銀行は追加利上げの見送りを決定した。昨年4〜6月期と7〜9月期の実質成長率が、夫々年率で+1.1%、+0.8%と、潜在成長率の2%弱を下回る水準に下方修正され、需給ギャップが再び拡大していることが、追加利上げ見送りの大きな背景であろう(図表1参照)。
   利上げ先送りを受けて、本年大発会の1月4日にかけて、株価の上昇(日経平均で1万7千3百円台)と円安の高進(対ドル119円台)が起った。
   しかし、本年の経済を展望すると、市場の反応は極めて近視眼的である。実勢以上の大幅な円安は、いずれ反転した時に大幅な円高を招き、本年の日本経済を攪乱するリスクをはらんでいる。また海外の投資家から見ると、円安は日本株の買材料にはならない。追加利上げを必要とする程の日本経済の強さこそが、日本株買の持続的動機であり、その時はむしろ円高が進むであろう。

【10〜12月期の個人消費は再びプラスに】
   さて現実の日本経済はどう動いているのであろうか。
   昨年7〜9月期に成長減速を招いた個人消費(図表1参照)は、10月から11月に少し立ち直った。家計調査の実質消費支出(全世帯)の前年比は、9月−6.0%をボトムとして、10月−2.4%、11月は−0.7%と、水準はまだ前年を下回っているものの、減少幅を縮小している。
   これを季節調整済みの前期比でみると、4〜6月期は+0.8%の微増となったあと、7〜9月期には−2.9%の減少となり、成長減速の主因となったが、10月は前月比で+4.1%、11月は同+0.5%と2か月連続して増加している。
   このため10〜11月の平均は、7〜9月平均比+2.8%の増加となっており、10〜12月期のGDP統計では、個人消費が再び増加基調に戻り、成長に寄与すると思われる。

【雇用の緩やかな増加にも拘らず基本給の低下から所得の伸びは低い】
   個人消費の背後にある所得の動向を見ると、家計調査の実質可処分所得の前年比は、9月−0.7%、10月−0.9%と2か月連続で前年を下回ったあと、11月は+1.1%と前年をやや上回った。
   労働統計を見ると、雇用者数の前年比が、9月+0.7%、10月+0.8%のあと、11月は+1.5%と増加幅を少し拡大している(図表2参照)。
   しかし名目賃金の前年比は、7〜9月+0.1%のあと、10月+0.0%、11月−0.2%と低迷している。これは、基本給(所定内給与)が一貫して前年を下回っているためで、11月の時間外給与と賞与は前年比夫々+1.7%、+1.9%と前年水準を上回っている。
   この事から判断すると、個人消費の背後にある勤労所得の伸びの低さは、非正社員の増加と団塊の世代の退職に伴う平均年齢の低下などによる基本給の下落にあり、経済の緩やかな拡大を反映して時間外手当、賞与、雇用者数は少しずつ増えている。

【鉱工業生産の上昇は10〜12月期に加速】
   11月の雇用増加80万人(+1.5%)の業種別内訳を見ると、前年比で医療・福祉+41万人(+7.9%)とサービス業+13万人(+1.7%)が引続き目立っている。
   雇用者全体の19.8%を占める製造業は、前年比+15万人(+1.4%)であった。鉱工業生産の増加傾向を反映して、緩やかな増加である。
   11月の鉱工業生産は前月比+0.7%と、予測(同+2.7%)を大幅に下回る増加にとどまった。しかし、最高水準を更新して緩やかに上昇していることには変りはない。10月と11月の平均は既に7〜9月期の平均を+2.2%上回っており、7〜9月期の前期比+1.0%に比べると、生産上昇がやや加速している(図表3参照)。
   12月と1月の予測指数は、前月比夫々+0.7%、−0.8%とやや足踏みの傾向が見られるが、10〜12月期の上昇加速(12月が予測通りであれば前期比+2.5%)を考えれば、大勢として上昇傾向には変りない(図表3参照)。

【10〜12月期の実質成長率はやや持直す見込み】
   生産上昇をリードしている業種は、引続き自動車、一般機械、電子部品・デバイスなど輸出と設備投資に関連した部門である。
   足許の設備投資と輸出を反映した一般資本財の出荷は、10〜11月平均で既に7〜9月期平均を+2.4%上回っている。
   日本銀行が通関統計から試算した実質輸出・入は、10〜11月平均の7〜9月平均比でみて、輸出が+0.7%、輸入が−1.5%、貿易収支が+6.3%となっている。
   10〜12月期のGDP統計では、引続き設備投資と純輸出が成長をリードすると見られる。
加えて、7〜9月期にマイナスとなった個人消費がプラスに戻ると思われるので、全体として成長率はやや持直すと見られる(図表1参照)。