2004年3月版

── 本年秋頃までは輸出・投資リード型の回復が続く ──

【1〜3月期の鉱工業生産は増勢鈍化の気配】
   1月の鉱工業生産指数(実績、速報)は前月比+3.4%増と、ほぼ予測指数(+3.6%増)並みの大幅上昇となった。しかし、2月の予測指数は−4.1%の大幅反動減となり、3月の予測指数は+0.7%の小幅上昇である(図表1参照)。その結果、2月、3月の実績が予測通りになった場合の1〜3月期は、前期比+0.6%の小幅上昇にとどまる。実績が予測を下回る傾向が続いているので、実際はもう少し伸びが低くなるかも知れない。
   10〜12月期に前期比+3.7%増と急伸し、10〜12月期の実質GDPの年率7%成長の中心となった鉱工業生産活動は、本年1〜3月期にはやや伸び率鈍化の気配を示している。
   1月の生産実績の大幅上昇と2月の生産予測の大幅低下、3月の生産予測の微増は、業種別にみるといずれも電子部品・デバイスの増減に大きく左右されている。恐らくこの業種の一時的な事情によるものであり、実勢は1〜3月平均並みの増勢鈍化の動きであろう。

【1月の個人消費と住宅着工は比較的よい動き】
   1月の指標をみると、設備投資の伸びは引続き確かりしているが、輸出は伸びが落ち、実質貿易収支がやや悪化した。個人消費は昨年末に続いて比較的よい。また住宅着工に持直しの気配がある。公共投資は相変わらず急減している。
   まず個人消費をみると、勤労者世帯の消費水準指数は、図表2に示したように、前年比+3.3%の増加と、昨年11月、12月に続いて前年比増加率の幅を拡大した。これを季節調整済み前月比でみると、前月比+6.0%の上昇になる。1月の小売業販売額も前年比+1.3%、季節調整済み前月比+4.5%と増加した。1月の乗用車新車登録台数も、前年比+4.2%となった(図表2参照)。
   賃金・雇用情勢には目立った改善はなく、勤労者家計の消費性向が1月は87.2%と2003年平均(74.9%)よりもかなり高いことから見て、可処分所得の裏付けのある消費増加ではなく、寒気到来が早かったことなどによる一時的な動きではないか。
   住宅着工戸数も、1月は年率125万戸と2003年平均(116万戸)を上回り、図表2に示したように、前年比も+7.3%増と12月(同+9.4%)に続いて伸びた。これが住宅投資回復の兆かどうかは、もう少し見る必要があろう。

【設備投資は順調な回復で景気をリード】
   設備投資の回復傾向は、年明け後も続いている。一般資本財出荷は前年比+11.7%(図表2参照)、季節調整済み前月比+7.9%と高い伸びを示している。
   先行指標も、10〜12月期の季節調整済み前期比でみて、機械受注額(民需、除く船舶・電力)が+11.3%、建設工事受注額(民間等、除く住宅)が+18.0%と共に高い伸びを示している。日銀(短観)を始め各研究機関の2004年度設備投資調査が今月中には出揃うと思われるが、輸出関連製造業を中心に、2003年度に続き2004年度も1桁の増加率を続けるものと見られる(大企業製造業は2桁の伸びか)。

【1月の実質貿易収支は一時的に悪化】
   設備投資と並んで景気回復をリードしている輸出は、年明け後やや弱くなっている。1月の実質輸出は季節調整済み前月比で+1.8%の増加にとどまり、実質輸入の同+3.6%を下回った。このため1月の実質貿易収支は同−3.5%の悪化となった。
   しかし、米国と中国の高い成長は続いているので、日本の輸出は少なくとも本年夏頃までは順調に伸びるであろう。1月の動きは、恐らく一時的なものであろう。

【問題は2004年秋以降にある】
   10〜12月期の実質GDPは、年率換算7.0%の高成長と発表され、2003暦年の実質成長率は2.7%と発表された。この年平均成長率は1996暦年の+3.4%、2000年度の+3.0%にはまだ届いていない(図表3参照)。
   2003年度の成長率が+3.0%に達するためには、本年1〜3月の成長率が前期比で+0.5%(年率+2.0%)以上となり、また昨年10〜12月の成長率が下方修正されないという二つの条件が必要である。
   本年1〜3月期の成長率が、前期比で+0.5%を上回るかどうかは、1月の計数だけではまだ判断がつかない。恐らく鍵は個人消費が握っているであろう。設備投資と純輸出は程度の差はあれ、成長に対してプラスに寄与するであろう。他方、公共投資は減少を続ける。住宅投資はどちらにころんでも、寄与度は低い。
   高い消費性向が2月の暖冬で反転下落することはないかどうか、また3月の消費環境がどうなるか、注目されるところである。
   大きくトレンドを見れば、本年1〜3月がどうなろうと、本年7〜9月期頃までは輸出と輸出関連設備投資にリードされた回復が続くであろう。問題は10〜12月期以降2005年の経済動向である。
   米国が秋以降成長鈍化を示し、日本の輸出に響かないか。2002年第2四半期から始まった設備投資の回復(図表3参照)が3年間に近付く頃から、ストック調整原理で失速しないか。企業のリストラ努力による人件費総額の抑制、ひいては消費の低調がいつ迄続くか、などが重要なチェック・ポイントである。