2004年2月版

── 10〜12月期は7四半期目の連続プラス成長、2003年成長率は2.2〜2.3%に止まる予想 ──

【10〜12月期の生産は年率15%の急上昇】
 12月の鉱工業生産(速報)は、予測指数の−0.4%減少を上回る−1.0%の低下となった。もっとも、図表1に見られるように、9月以降の生産上昇のピッチが早かったので、10〜12月期を平均してみると、前期に比して+3.6%(年率15.2%)の急上昇である。
また先行きの予測指数は、1月が+3.6%の上昇、2月は逆に−1.0%の下落となっているが、仮に実績がこの予測通りになると、1〜2月平均は10〜12月平均比+1.0%の上昇持続となる。このところ一貫して実績が予測を下回っているので、もう少し低いかも知れないが、1〜3月期も生産の上昇が続く可能性は高い。
  生産の上昇を支えている部門は、引続き電子部品・デバイス、情報通信機械、電気機械であり、予測指数では一般機械の上昇も加わっている。デジタル家電とその部品・デバイス、および部品・デバイスの製造機械が好調を続けているためだ。

【設備投資と輸出の増加で10〜12月期の一般資本財出荷は年率30%の急伸】
  プラズマ・液晶などの薄型テレビ、DVDレコーダー、デジカメ付携帯電話などの輸出とそれらを増産する設備投資は、大きく伸び続けている。
  10〜12月期の実質輸出は、前期比+7.9%増と前期(同+3.8%増)に比して加速した。10〜12月期の実質輸入は+1.8%と低い伸びにとどまっているので、10〜12月期の実質貿易収支は前期比+34.7%と急増した。10〜12月期の実質GDPは、引続き外需(純輸出)に大きく依存してプラス成長を持続するであろう。
  足許の設備投資動向と一部は輸出動向も反映している一般資本財出荷は、12月も+1.1%の増加となり、10〜12月平均の前期比は+6.8%(年率+30.1%)の急伸となった。10〜12月期の実質GDPは、輸出と並んで設備投資が大きく伸び、7四半期目の連続プラス成長を実現したと見られる(図表3参照)。

【ようやく雇用面に改善の動き】
  設備投資の先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)の10〜11月平均は、7〜9月平均比+10.0%の増加となっており、特に製造業からの受注は+12.2%の大幅上昇となっている。本年の設備投資も、少なくとも夏場までは伸び続けるものと見られる。
  このように、輸出と設備投資に支えられて7四半期目の連続プラス成長を続けているため、さすがに雇用面に変化が出てきた。12月の完全失業者は前月比22万人減って322万人となり、完全失業率は前月比0.3%ポイント低下して4.9%となった(図表2参照)。
  また前月に比べた雇用者数は、11月+0.4%、12月+0.7%と連続して増加し、12月の前年同月比は+0.7%の伸びとなった。反面、時間外労働は、前月比で11月−0.6%、12月−0.1%と減少し始め、前年同月比の増加率は、図表2に見られる通り頭を打った。雇用を抑えたまま時間外労働で生産増加を賄う傾向に限界が見えてきたのかどうか、注目される。

【企業の人件費総額抑制は続いている】
  しかし、人件費総額や厚生年金保険料負担を抑えようという企業の努力は続いている。雇用者数は前述の通り11月と12月に連続増加したが、割高な常用雇用をみると11月も12月も前月比−0.1%づつ減少している。12月の前年同月比は−0.4%と前年水準を下回ったままだ。また10〜12月のパート比率は22.84%と7〜9月の22.69%よりも高まっている。給料も割安で保険料負担のないパートを増やす傾向は続いている。
  この結果、1人当り名目賃金の前年比は、10〜12月平均で−0.9%、とくにボーナス月の12月は−1.6%と前年を下回っている。
  このような所得面の動向を反映して、個人消費は引続き冴えない動きを続けている。百貨店・スーパーの売上高合計は、10〜12月平均の前期比でみると+1.0%と年末商戦を中心にやや持直したように見えるが、前年の水準に比べると−3.2%と低迷している。

【2003年の平均成長率は2%強にとどまろう】
  新設住宅着工戸数は、12月に分譲・賃貸両マンションの着工が増えたため、10〜12月平均は年率117.5万戸、前期比+4.9%と増加した。住宅減税延期の決定もあって、4〜6月の着工集中のあと反動減となっていた住宅投資は、ここへ来てやや持ち直している。
  他方、公共工事請負額は前年比2桁のパーセンテージで急落を続けている(図表2参照)。
  以上のGDP項目の動向を総括してみると、2月18日頃に発表される10〜12月期の実質GDPは、純輸出と設備投資が大きく伸び、個人消費と住宅投資も横這い圏内の動きか若干のプラスとなりそうなので、7〜9月期の成長率(前期比+0.3%)を上回り、前期比1%強の成長率となるのではないか。
  しかし、この場合でも2003年の年間平均の成長率は2%台前半にとどまる(2.2〜2.3%か)。7四半期連続のプラス成長となっても、輸出と輸出関連設備投資だけにリードされているため、前回(2000年中心)や前々回(1995〜96年)の連続プラス成長期(3%台成長)に比して勢いは強くない(図表3参照)。