2003年9月版

─ 輸出関連の大企業製造業に偏った緩やかな回復が始まる ─

【大企業製造業の回復予想が株価に強く反映されている】
    1ヶ月程の間9千円台で足踏みをしていた日経平均株価が、ここへ来て1万円の大台に乗り、東証株価指数も1000を突破した。景気、ひいては企業業績の先行き感が、少し好転したようだ。
    これは、「輸出」と輸出関連の大企業製造業の「設備投資」が下期の景気を引張り、緩やかな回復局面に入るという予想が強まってきたためである。本年度4〜6月期の実質GDPは、既に前年度の平均実質GDPに比して+1.2%の増加となっているので、下期の緩やかな回復予想が的中すれば、本年度の実質成長率は2%台に乗り、政府見通しの+0.6%を大きく上回ることになる。
    そうなれば企業業績の予想も上方修正され、それが株価に反映されるのは当然である。特に製造業のシェアは、実質GDPでは4分の1にすぎないが、株価指数では半分を占めているので、製造業中心の回復予想は株価により強く反映されることになる。

【米国景気の回復加速を反映して輸出が順調】
    図表1に示したように、純輸出は3四半期連続して実質GDPを押し上げているが、米国景気の回復が大型減税の効果などで下期に加速するにつれ、この傾向は更に強まりそうである。
    貿易統計によれば、7月の実質輸出は4〜6月平均に比して既に+0.9%の増加となっている。反面、実質輸入は同+0.5%にとどまっているので、純輸出の増加が実質成長率を高める効果は、7〜9月期に一段と強まって行くのではないか。
    財別にみると、4〜6月以降、IT関連と資本財・同部品の輸出増加が目立つ。米国におけるIT不況の終焉と、設備投資回復の動きを反映している。

【生産も輸出好転のIT関連などを中心に上昇に転じる兆】
    輸出の回復傾向は、国内の生産動向にも反映されている。7月の鉱工業生産は+0.5%の上昇と予測(+0.7%)をやや下回ったが、8月と9月の予測指数は夫々+2.0%、+1.5%の大幅上昇となっている。もし実績が予測指数通りになるとすれば、図表2に示したように、生産は再びはっきりと回復傾向に転じることになる。
    実際は、実績が予測を下回る最近の傾向がまだ続くと思われるが、それを考慮しても、図表2から直観的に分かるように、下期に向けて生産が再び上昇傾向に転じる可能性が出てきたと見られる。
    生産増加の財別内訳は、輸出の場合と同じように、電子部品・デバイスが目立ち、次いで一般機械、情報通信機械、自動車などである。

【輸出関連製造業を中心に設備投資は緩やかな増加】
    これらの輸出関連大企業製造業を中心に、設備投資も図表1に示したように、緩やかに回復している。先行指標の機械受注(民需、除船舶、電力)や建設工事受注(大手50社、民間、除住宅)も、4〜6月期には前期比で夫々+3.4%、+27.1%の増加となった。また機械受注(同)の7〜9月期の予想は、前期比+2.2%の続伸となっている。
    しかし、こうした大企業製造業を中心とした回復が、国内経済全般に浸透する動きは限られている。前述のように、製造業はGDP全体の4分の1に過ぎないし、銀行貸出に至っては、その5分の1に過ぎないからである。

【大企業製造業中心の回復では勢いは出ない】
    また大企業製造業は、割高につく40才台、50才台の常用雇用をリストラし、社会保険料負担も無く賃金も割安な若年や女性の臨時雇用に切り換えている。このため、臨時雇用を含む雇用者数全体は前月比で6月+0.3%、7月+0.2%と増えていても、常用雇用は同じベースで6月−0.1%、7月−0.1%(前年比では−0.6%)と減り続けている。
    図表3に示したように、実質消費(全世帯)や新車登録台数(乗用車)が4〜6月期に前年水準を下回っているのも、このような雇用情勢の反映とみられる。
    前述のように、本年度は2%台の成長になるとしても、決して勢いのよい回復ではなく、非製造業、中小企業、地方経済を置き去りにしたままの動きとなろう。