2003年6月版

─ 輸出環境の悪化と国内需要の停滞で4〜6月期はマイナス成長か ─

【輸出の減少が続き4〜6月期の基調は弱い】
日本の経済成長率は、昨年7〜9月期以降、期を追って鈍化し、本年1〜3月期には遂にゼロ成長となった(図表1参照。詳しくはこのHPの「最新コメント」欄"1〜3月期ゼロ成長は景気後退の始まり"H15.5.16 参照)。その後4月に入ってからも引続き基調は弱い。4〜6月期はマイナス成長になるかも知れない。
4月の生産実績は、予測指数(前月比−0.9%)を下回る−1.2%の低下となった。5月と6月の予測指数は、夫々+2.6%、+1.1%と2ヶ月連続の上昇となっているが(図表2参照)、昨年の中頃から実績が予測を大きく下回る傾向が続いているので、これ程上昇するとは思えない。4〜6月期の平均は、前期比横這い、場合によっては微減となるのではないか。
5月と6月の予測指数で生産上昇を支えているのは、電子部品・デバイス、電気機械、情報通信機械、一般機械、自動車など輸出関連業種である。しかし実質輸出は、本年1〜3月期に前期比−0.8%の減少となったあと、4月は1〜3月平均に比し更に−1.5%の落込みとなっている。

【米国に続き中国を含む東アジアも成長鈍化】
輸出の背後にある海外経済をみると、米国経済のみならず、ここへ来て東アジア経済が弱くなってきたのが目立つ。
米国では、イラク戦争前のガソリン高騰で年初から消費者心理が冷えていたが、戦争の短期終結に伴ない少し明るさを取戻している。しかし、資本財の受注は4月迄落込んでおり、企業心理の回復は見られない。鉱工業生産も3月、4月と2ヶ月連続で低下し、4月は前年水準を下回った。雇用者数も4月迄減少を続けている。この先回復に向うとしても、4〜6月期はまだ大底圏内の動きであろう。
東アジアの経済も、米国向け輸出の鈍化から、韓国、香港などを中心に成長率が低下している。第1四半期まで好調であった中国も、新型肺炎の影響で第2四半期以降鈍化すると見られる。

【4月以降の個人消費は弱い】
経済の弱基調を反映して、2月以降所定外労働時間と常用雇用の両方が前月比で減少傾向となっている。このため、所定外労働時間の前年比上昇幅は縮小し(図表3参照)、常用雇用の前年比減少幅は拡大している。
一人当り名目賃金は2年連続で前年比減少を続けている。雇用と賃金の悪化で、個人所得の減少は改まっていない。
1〜3月期の個人消費が前期比+0.3%と予想外のプラスとなったのは、消費性向の上昇によるものであろう。しかしこれには限度があるので、その反動から4月以降の消費動向は強くない。
4月の百貨店・スーパーの売上高は前月比−2.6%と大きく減少した。4〜5月の乗用車新車登録台数は1〜3月平均比−7.0%低下し、6四半期振りに前年水準を下回りそうである(図表3参照)。もっとも、これには4月以降のグリーン税制強化に伴なう3月迄の駆込み需要とその反動も響いている。

【不透明になってきた製造業設備投資の先行き】
国内需要で唯一底入れの気配を示していた製造業の設備投資にも、やや心配な動きが出てきた。
一般資本財の出荷は、本年1〜3月期に前期比+1.3%、前年比+1.1%(図表3参照)となったあと、4月は前月比−6.1%と大きく落込み、前年比も+0.6%と1〜3月期に比して上昇幅を縮小した。4月の動きだけではまだ判断出来ないが、心配なのは先行指標である機械受注の動向である。
機械受注(民需、除船舶・電力)は、1〜3月期に前期比+5.8%と大きく伸びたが、4〜6月は前期比−10.5%の大幅下落の予想となっている。もし実績がこの通りであれば、1〜3月期の増加は帳消しとなる。とくに、底入れ傾向を示していた製造業からの受注が、1〜3月+5.4%のあと、4〜6月は−8.9%の落込み予想となっている。

【設備投資を引き出す規制撤廃が必要】
4〜6月期の予想調査の時点が、丁度イラク戦争で企業マインドが慎重化していた時期であったし、最近は実績が予想を上回る傾向が続いているので、設備投資の先行きについてはもう少し様子を見る必要があろう。
業種別にみると、製造業の中で設備投資に動意が窺われるのは、デジタル家電向けの電子部品・デバイスの増設と素材(鉄鋼、化学など)の維持補修である。いずれも規模の大きな投資ではないので、今後回復してきたとしても、景気の牽引力は限られているのではないか。
やはり、医療、介護、教育、農業への法人企業参入を全国規模で認めるような思い切った規制撤廃がないと、大規模な設備投資のうねりは生まれないであろう。