2003年2月版

−10〜12月期から緩やかなな景気後退局面に入った可能性−

【10〜12月期の生産は4四半期ぶりの落ち込み】
12月の生産指数の実績は、予測指数の前月比+0.3%の増加とは逆に,前月比−0.1%の減少となった(図表1参照)。このため10〜12月期の平均は前期比−0.9%の減少となり、4四半期ぶりの落ち込みを示した。
年明け後の予測指数の動きを見ると、1月は前月比+2.1%,2月は同−1.1%と再び水準が上がる形となっている(図表1参照)。業種別に見ると、輸出が比較的順調な一般機械と電気機械が水準を上げると予測されている。
しかし、このところ実績指数は常に予測指数を下回っているので、1〜2月の実際の水準が図表1のように10〜12月の水準を上回るかどうかは、まだ分からない。
年明け後の輸出が立直らない限り生産が上向く可能性は低い。

【10〜12月期の純輸出はプラス、先行きは不透明】
その輸出動向を見ると、昨年10〜12月期に前期比+2.4%となり、輸入の同+1.6%を上回った。この結果10〜12月期の純輸出は増加し、成長に対してプラスの寄与となる可能性が高い。
地域別に見ると、EUと東アジア向けの輸出はデジカメ付携帯電話や液晶パネルに支えられて伸びているものの、その伸びはIT部品の不振から鈍化している。この地域の景気の鈍化ないしは頭打ち傾向から見て、本年1月以降再び立直るかどうか疑問である。
また対米輸出は、10〜12月期には前期のマイナスからプラスに転じたが、自動車の人気車種の押し込み輸出による面が大きい。米国自身の経済成長率は、10〜12月期に年率+0.7%と大きく鈍化している。年明け後も、対イラク戦争を巡る不確実性の増大から様子見気分が広がっており、消費マインドと投資マインドは共に萎縮している。
本年の日本経済が対米輸出の好転によって再び立ち上がるシナリオは、見えていない。

【消費者コンフィデンスの悪化もあり消費は弱い】
国内を見ると、10〜12月期の個人消費は弱かった。
全世帯消費支出(実質)の前月比は10月−2.3%、11月−2.2%と連続して減少している。販売統計の10〜12月期を見ると、百貨店とスーパーの売上合計が前期比−1.4%の減少、乗用車新車登録台数が同−1.8%の減少と揃って落ち込んだ。
その上、消費者態度指数の前期比が12月は4期ぶりに低下した。消費者コンフィデンスは、長引く雇用情勢の悪化や年末ボーナスの落ち込みで再び悪化しているようだ。勤労者世帯の消費性向も、暑さが厳しかった9月の一時的上昇(75.0%)をピークに、10月は72.7%、11月は71.9%と低下している。
12月の常用雇用(事業規模5人以上、全産業)は前年比−0.7%と25ヶ月連続して前年を下回り、一人あたり名目賃金(同)も前年比−2.4%と20ヶ月連続して前年を下回った。個人所得は悪化する一方である。
その中にあって時間外労働は、図表2に示したように6ヶ月連続して前年を上回っているが、基礎給与とボーナスが前年を下回っているため、名目賃金全体としては前年より低いままである。

【企業収益の改善が雇用・賃金・投資の回復に結びつかない】
企業は給料が割高の男子世帯主の40歳台、50歳台の常用雇用を切り、若年と女子の臨時雇用及び時間外労働で企業活動を支える傾向を強めている。このため12月の完全失業率は5.5%と再び戦後最悪の水準に高まった(図表2参照)。しかし企業業績の方は、売上高が横這いであっても本年度は増益を実現し、来期の見通しも低い増収率の下で増益を続ける体質に変わっている。
問題は、このようなキャッシュ・フローの改善が設備投資の回復に結びつく兆候が今のところ見られないことだ。10〜12月期の一般資本財出荷は前年比−2.4%(図表2)、前期比−2.2%といずれも落ち込んでいる。先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)も、11月は再び前年比マイナスとなり(図表2)、10〜11月平均の7〜9月平均比は−1.4%の低下となっている。
企業のキャッシュ・フロー改善が、雇用、賃金、投資の改善に結びつかないところが、現局面の特色であろう。これには二つの理由が考えられる。一つは、バブル期に購入した不要不動産の損切り売り、無駄な設備の繰上げ償却、過大な借入金の返済にキャッシュ・フローが使われていることだ。もう一つは、日本の景気やイラク情勢など先行きの不透明感が強すぎることである。

【10〜12月期はマイナス成長もあり得る】
以上のように、10〜12月期の個人消費と設備投資は弱かった。また住宅投資と公共投資も、図表2に示したように、住宅着工戸数と公共工事請負額が前年比でマイナスを続けていることから見て、回復の見込みはない。
従って10〜12月期の実質GDPの成長率は、外需がプラスの寄与、内需がマイナスの寄与となり、ゼロ成長近傍で若干のマイナス成長となった可能性がある。
そうなると、図表3に見られるように、2001年10〜12月期以来4四半期ぶりのマイナス成長となる。鉱工業生産が10〜12月期に下落に転じたことと併せて考えると、景気は緩やかな後退局面に入ってきたのかもしれない。