2003年1月版

―生産は弱含み横這い傾向に転じ再びマイナス成長も―

【生産は弱含み横ばい傾向に転じた】
11月の鉱工業生産は、予測指数の−0.1%を上回る−2.2%の大幅下落となった。図表1に示したように、これで3ヶ月連続の減少である。12月と1月の予測指数は夫々、+0.3%、+1.2%の上昇となっているが、3ヶ月の落ち込み幅が大きいため、予測指数どおりになったとしても、本年1月の水準は昨年8月のピーク比−1.1%低くなっている。また12月が予測指数通りとした場合(図表1参照)、10〜12月平均は7〜9月平均比−1.2%と、4四半期ぶりのマイナスとなる。
生産は8月以降の横ばい傾向から、次第に弱含み傾向に変わっている。ただ、在庫率には反転上昇の気配は出ていないので(図表1参照)、在庫調整局面に入る恐れは今のところないようだ。
しかし注目すべきことは、この弱含み横這いのレベルが、前回景気後退時の1998年ごろとほぼ同じであることだ(図表1参照)。その意味で生産は回復したというよりも、不況の谷底を脱していないと見るべきであろう。

【企業の先行き感は悪化、雇用・賃金に低下圧力】
このような情勢の下で、企業は先行きを非常に慎重に見ている。
12月調査の「日銀短観」によると、企業(全規模、以下同じ)の「業況判断DI」は昨年12月まで3四半期連続で好転したが、本年3月の予測は4四半期ぶりに悪化すると見られている。
また2002年度全体の売上高と経常利益の予測は、減収幅が−0.4%から−0.1%に下方修正され、つれて増益幅も+12.8%から+11.6%に下方修正された。しかし、依然として減収増益と見ているのは、リストラによる経費削減が進んでいるためであろう。
リストラの影響を受け、11月の常用雇用(全産業、以下同じ)は前年比−0.7%と、24ヶ月連続で前年を下回っている。反面時間外労働は、図表2に示したように、7月から5ヶ月連続で前年を上回っている。賃金割高の40歳台、50歳台の男子常用雇用を減らし、若年や女子の臨時雇用と時間外労働で企業活動を維持する傾向が顕著である。

【雇用・賃金の悪化から10〜12月期の個人消費はマイナスか】
一人あたり名目賃金は、11月も前年比−1.6%と19ヶ月連続で前年を下回っている。時間外手当は前年を上回っているが、ボーナスが大きく前年を下回っているためである。経団連の調査によると、昨年末の冬季賞与は、前年比−3.11%(2万5千円)の減少であった。これは主として大企業のボーナスであり、中小企業を含めればそのマイナス幅は更に大きくなる。因みに「毎月勤労統計」によると、11月の一人あたり名目賃金の内訳である「特別」賃金(賞与)は、前年比−23.4%の大幅低下である。
雇用と賃金の悪化が続いているため、個人所得も減りつづけている。勤労者世帯の可処分所得は、昨年4〜6月期から前年を下回っており、最新計数の11月は前年比−4.1%である。
このため、暑さのために夏物が売れた個人消費も10月以降冷え込んでいる。全世帯消費支出(実質)は、図表2に示したように11月には半年振りに前年比マイナスとなった。季節調整済み前月比では、10月−2.3%、11月−2.2%であり、4四半期連続して増加したGDPベースの個人消費(図表3参照)は10〜12月期にマイナスとなる可能性が出てきた。
個別の販売統計を見ても、10〜12月の乗用車新車登録台数は、前年比プラス幅を縮め(図表2参照)、季調済み前期比では、‐1.5%と減少に転じた。家電販売統計も、前年比で10月−2.5%、11月−2.9%となっている。

【設備投資、公共投資、住宅投資は減少傾向持続】
次に設備投資は、一般資本財出荷が9〜11月と3ヶ月連続して前月比マイナスとなり、図表2に示した11月の前年比もマイナス幅を拡大していることから見て、10〜12月期も減少を続ける可能性が高い(図表3参照)。12月調査の「日銀短観」の2002年度設備投資計画(全規模、全産業)も、3ヶ月前に比べて−0.6%下方修正され、前年比−1.5%の減少である。
先行指標である機械受注(除船舶・電力)は、図表2に示したように、10月に前年比+1.9%となった後、11月は再び−7.2%に落ち込んだ。機械受注下げ止まりはまだ確認できない。先行指標のこのような動きから判断すると、設備投資は当分下落傾向を辿るであろう。
なお、公共投資と住宅投資の関連指標は、図表2の公共工事請負額と新設住宅着工が引続き前年比で大幅なマイナスとなっていることから見て、10〜12月期も減少する可能性が高い。

【10〜12月期はゼロ成長近傍でマイナス成長の可能性も】
最後に外需の動向を見ると、実質輸出は10月と11月に増加し、10〜11月平均の7〜9月平均比は+2.5%となっている。昨年前半に比べれば増勢は鈍化しているが、7〜9月期に比べるとやや伸びが戻った。マイナスとなっていた対米輸出がプラスになったためで、対東アジア、対EUの延びは鈍化してきている。
他方実質輸入は、米国とEUからの輸入が一時的に大きく落ち込んだ為、東アジアからの輸入は延びを高めているにも関わらず、全体として10〜11月平均の7〜9月平均比は、‐0.1%にとどまっている。
このため10〜12月期の外需(純輸出)は、12月を見なければ最終的な判断は出来ないが、経済成長に対してプラスの寄与となる可能性がある。
以上を総合すると、10〜12月期の実質GDPは、内需の寄与度がマイナス、外需の寄与度がプラスとなり、ゼロ成長近傍で場合によってはマイナス成長の可能性もある。