2002年12月版
─生産は横這い、男子常用雇用中心に失業率は上昇─
【7〜9月期の3%成長は在庫投資のお陰、実勢は1%弱】
7〜9月期の実質GDP速報(図表1参照)は、前期比+0.7%(年率+3.0%)の増加と発表された。このうち+0.5%は在庫投資の増加によるものであり、最終需要だけでは+0.2%(年率1%弱)の微増である。
最終需要は、3四半期続いた外需(純輸出)主導の増加が予想通り終わり、外需の成長寄与度は−0.1%とマイナスに転じた(図表1参照)。
プラスの成長率寄与はもっぱら個人消費(成長寄与度+0.4%)によるものであり、残りの設備投資、住宅投資、公共投資はいずれもマイナスとなった(図表1参照)。
このうち設備投資のマイナスは、7〜9月の一般資本財出荷が6四半期振りに前期比プラスに転じたことからみて、やや意外である。速報は総固定資本形成の供給側推計値から計算されているので、需要側推計が加味される第2次速報で上方修正される可能性がある。
【生産は頭打ち、設備投資に底入れの兆しはない】
しかし、7〜9月期の短期的な動きを別にすると、設備投資の基調は引続き弱い。先行指標である機械受注(船舶・電力を除く)は、7〜9月に前期比−1.7%となったあと、10〜12月の見通しも同−6.5%とマイナスのままになっている。
また9月調査の「法人企業動向調査」によると、平成14年度の設備投資計画は、前年に較べて上期−10.0%のあと、下期も−6.3%である(年度全体では−8.1%)。景気や企業収益に関する経営者の先行き感が、このところ一層慎重になっていることが背景にある。
事実、足許の生産、出荷の動向は頭打ち傾向を強め、先行き不安が強まっている。10月の生産実績の前月比は、予測指数の+1.2%とは反対に、−0.3%の減少となった。11月と12月の予測指数は、それぞれ−0.1%、+0.6%である。この結果、図表2を見れば明らかなように、8月から12月まで、生産はほぼ横這いである。生産増加の主因であった純輸出がマイナスに転じ、国内最終需要に立直りの気配がないためである。
【常用雇用の削減で男子失業率は一段と上昇】
このような生産頭打ちの下で、企業は常用雇用を整理し、時間外労働と臨時雇用で当面の生産を賄う傾向を一段と強めている。10月の常用雇用は前年比−0.8%と23ヶ月連続で前年水準を下回っており、反面10月の所定外労働時間は、図表3に示したように、前年比+4.7%と4ヶ月連続で前年水準を上回っている。
このため10月の完全失業率は、5ヶ月続いた5.4%の高水準から、昨年末に出した過去最高の記録である5.5%に再上昇した(図表3参照)。とくに常用雇用の対象である40歳台、50歳台の男子世帯主の失業が増えており、男子の失業率は5.9%に達している。
【7〜9月の個人消費の増加は一時的】
雇用情勢が悪化する中で、7〜9月期の個人消費はプラスとなったが、これは暑さが長引いたことによる夏物の売れ行き増加と、デジカメ付携帯電話の伸びなど、一時的要因によるものである。勤労者世帯の家計統計をみると、7〜9月期は雇用悪化やボーナスの減少などを背景に可処分所得が前期比−1.7%と減少しているにも拘らず、消費支出は同+1.0%と増加した。
このため、消費性向は前期の72.4%から74.4%に上昇した。消費性向の上昇による消費増加は、一時的には起こっても長続きはしない。10月以降の家計統計はまだ発表されていないが、10月の百貨店・スーパーの売上高は、前月比−2.6%、前年同月比−1.9%とかなり落込んでいる。
【純輸出は7〜9月にマイナスのあと10月はプラス】
最後に、生産頭打ちの元凶である輸出入の動向をみると、7〜9月期は実質輸出が前期比+0.7%の微増にとどまったのに対し、実質輸入は同+3.4%と輸出を上回る伸びを示したため、実質貿易収支は同−6.1%の悪化となった。実質GDP統計でも、純輸出は前期比−3.7%の減少となり、成長率に対して−0.1%のマイナス寄与度となった。
なお、10月の実質輸出は7〜9月平均比+1.4%、実質輸入は同−3.2%となり、実質貿易収支は好転している。景気が減速している米国に対する輸出は10月も−6.6%と減少しているが、東アジア向けが10月も+3.2%と伸びたためである。しかし10〜12月全体の動向は、10月1ヶ月の動きだけではまだ判断できない。