2002年3月版

― 海外要因は好転、国内要因はまだ弱いまま ―

【10〜12月期と2001歴年のマイナス成長が確定】
10〜12月期の実質GDPは、前期比‐1.2%(年率−4.5%)の減少と、3四半期連続のマイナス成長となった(図表1参照)。その結果、2001年の平均成長率も−0.5%と1998年(−1.1%)に次ぐマイナス成長となった。
また、10〜12月期の実質GDPは、2001年の実質GDP平均に対して−1.3%の低水準となってしまったので、2002年の実質GDPが毎四半期ごとに前期比+0.5%のプラス成長となっても、2002年の平均成長率はマイナスとなる。実際は、毎四半期0.5%(年率2.0%)づつ上昇するほど景気は好転しないと見られるので、本年も前年に続いて、2年連続のマイナス成長となる可能性が高い。
2年連続のマイナス成長は、第2次大戦後初めてのことである。

【2001年のマイナス成長は輸出、公共投資、住宅投資の減少による】
2001年のマイナス成長にもっとも大きく寄与したのは、ITデバイス(部品)の世界的供給過剰を反映した米国を始めとする世界経済の減速により、日本の輸出が−6.6%(成長率に対するマイナスの寄与度は−0.7%)と大きく落ち込んだことである。
次いで、政策不況要因である公共投資の−3.4%(成長率に対するマイナスの寄与度は−0.2%)と住宅投資の−7.9%(同−0.3%)がマイナス成長に寄与している。
反面、民間需要の中核である個人消費は+0.3%(同+0.2%),設備投資は+0.4%(同+0.1%)とプラスの成長要因となった。
つまり、2001年の景気後退の引き金となった最大の外生的要因は、世界的なIT不況に伴なう輸出の減少であり、更に国内の財政政策がその不況要因を相殺するどころか、逆に景気の足を引張った事にある。
その間にあって、経済の内生的要因である個人消費と設備投資は、2001年平均としてはまだ落ち込んでいなかった。

【不況要因は個人消費、設備投資などの内生的要因に移ってきた】
しかし、2001年中の推移を見ると、図表1に明らかなように、個人消費は2001年第1四半期をピークに下落傾向にある。2001年第4四半期はたまたまプラスになったものの、企業収益の悪化を反映して冬季ボーナスが大きく落ち込み、失業率も高どまりしているので(図表2参照)、所得面には個人消費が立直る条件はない。
また設備投資も、図表1を見れば分るように、2001年第4四半期には2年前の1999年第4四半期の水準にまで落ち込んでしまった。1月の一般資本財出荷も図表2に示したように前年比−19.6%の大幅な下落となっており、6〜9ヶ月の設備投資の先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)も前年水準を大きく下回っている。
景気後退の引き金となった外生的要因、特に輸出(実質)は、本年1月に前月比+5.5%の増加に転じており、1〜3月期のGDPベースの輸出が6四半期ぶりにプラスに転じる可能性もないではない。しかし輸出が立直ってきても、不況の内政的要因である個人消費と設備投資が非常に弱いと、景気全体の回復にはつながらないであろう。

【生産の下げ止まりが内生要因を好転させるのはまだ先】
個人消費と設備投資の今後を左右する要因は、基本的には生産動向である。その生産は、図表3に示したように、在庫調整の進歩で在庫率が低下し始めたため、昨年11月を底に底這傾向に入っている。本年1月の生産は、予測指数の+1.4%とは逆に、−0.1%の下落となったが、その後の予測指数は、2月が+4.7%、3月が−0.9%となっているので、昨年12月以降月ごとにプラスとマイナスを繰り返す予測となっている(図表3参照)。仮に2月と3月の実績が予測どおりであるとすれば、本年1〜3月期は前期比+2.6%と一昨年10〜12月期以来5四半期振りのプラスとなる。本年1月のように、実績は予測を下回る事が多いので、本当にプラスになるかどうかは未だ分らないが、少なくとも生産の下げ止まりは確かであろう。
この生産下げ止まりが、雇用や賃金を通じて個人所得と個人消費の悪化を喰い止めるかどうかは、現在までの指標では未だ分らない。

【株価は輸出回復を織り込んで水準訂正の動き】
以上のように、不況の最大の引き金であった輸出は、本年に入って回復要因に変わってくる半面、不況の内生的要因である個人消費と設備投資は未だ弱い。
公共投資や税制など財政面からは景気刺激が無く、むしろ政策不況要因にとどまる。従って今後の動向は、輸出の回復が政策不況要因を帳消しにして生産を回復に導き、個人消費や設備投資など内生的要因の立ち直りを招くかどうかに懸かっている。
3月に入って株価が少し回復したのは、「お先眞暗」の相場から、「輸出回復」を織り込んだ相場に向かって、水準を訂正したためと解釈できる。この先、個人消費と設備投資がどう動くか、その前提となる生産がどう動くかによって、景気の先行き観が変わってくる。