2002年2月版
― 在庫調整は進捗、最終需要は後退持続 ―
【IT関連の在庫調整進捗で生産は下げ止まり傾向】
鉱工業生産の下げ止まり傾向が一段とはっきりしてきた。12月の実績は予測指数どおり+2.1%と4ヶ月振りの増加となり、1月と2月の予測指数も2ヶ月連続でプラスとなっている。
1月と2月の実績がもし予測指数どおりになると、図表1を見れば明らかなように、生産は底入れして3ヶ月連続で上昇する形となる。実際は、実績指数の方が予測指数より低目に出る傾向が続いているので、3ヶ月連続の上昇になるかどうかは分らない。しかし、少なくとも昨年1月から下落傾向を辿ってきた生産が、ここへ来て下げ止まり傾向を強めている事は確かであろう。
生産下げ止まりの主因は、IT関連の部品や製品の在庫調整が進み、本年1〜3月の電気機械の生産と出荷が5四半期ぶりに増加に転じる予測となっているためである。世界的に見ても、IT関連部品の在庫調整は完了し、市況が上向き始めている。
【10〜12月期は個人消費がプラス、設備投資がマイナスか】
生産の下げ止まり傾向の影響は、12月までの雇用・賃金統計にはまだ現れていない。12月の完全失業率は5.6%と最高水準を更新し、10〜12月の賃金指数も時間外労働の減少を主因に前年比マイナス幅を拡大している。
他方、家計統計を見ると、10〜12月の勤労者世帯の可処分所得は、名目値で見ると、賃金指数同様に前期比マイナスとなっているが、消費者物価が下落している上、消費性向がやや上昇したため、実質値で見ると前期比+1.5%の増加となった。2期連続で下落したGDP統計の個人消費(図表3参章)は、10〜12月期にはプラスとなる可能性がある。
これに対して、設備投資は弱い。10〜12月の一般資本財出荷の前年比マイナス幅は、前期の−10.5%から−18.2%へ、大きく拡大した(図表2参照)。12月調査の「法人企業動向調査」を見ても、10〜12月の設備投資は製造業の大幅落ち込みを中心に、前年比マイナス幅を拡大し、季調済み前期比もマイナスとなっている。先行きを示す機械受注(民需、除船舶・電力)も、図表2に示したように前年比マイナス幅を大きく拡大している。一時的に増加したGDPベースの設備投資(図表3参照)は、10〜12月期以降下落していくのではないかと見られる。
【最終需要は全体として弱いまま】
住宅投資と公共投資は、10〜12月期も下落傾向を続けている。図表2に示したように、10〜12月の新設住宅着工戸数は、前年比マイナス幅を拡大している。季調済み年率換算戸数で見ても、10〜12月は平均117万戸と前期比−2.5%の減少となった。又公共工事請負額も図表2に示したように、10〜12月平均で前年比マイナス幅を拡大している。
他方、10〜12月の実質輸出も前期比で下落幅は縮小しているものの、引き続き減少傾向にある。米国を中心に世界経済の底入れが期待されているが、その影響はまだ日本の輸出に現れていない。このためGDPベースの純輸出(図表3参章)は、10〜12月も引続き弱含みとみられる。
【景気後退下で年度末を迎える不安】
以上のように、個人消費は一時的に増加する可能性がるものの、他の最終需要項目はいずれも弱い。在庫調整の進捗につれて景気の急落は止まってきても、最終需要に持続的回復がない限り、景気後退は止まらない。
そのような状況の下で3月の年度末を迎えることになる。しかも4月からペイオフ解禁である。
企業倒産や金融機関の破綻等大きな危機が発生しない事を祈るのみである。