2001年8月版

‐ 4〜6月期は個人消費の落ち込みで大幅なマイナス成長か ‐

【電気機械を中心に生産下落傾向はやや加速】
 鉱工業生産は、予測を上回るテンポで下落している。6月の生産指数の実績は、前月比-0.7%の減少と、予測指数の+0.3%とは逆の動きとなった。この結果、4〜6月の生産指数平均は、前期比-4.0%(年率-15.1%)と1〜3月の-3.7%を上回る勢いで下落した。7月も当初予測の前期比-0.1%から修正予測では同-2.3%へ下方修正された。
 このような生産の急落にも拘らず、図表1に示したように、在庫率は6月も上昇しており、在庫調整はまったく進んでいない。8月の予測指数は、図表1に見られるように前期比+3.4%の大幅増加となっているが、8月には夏休みを利用した大幅な減産が図られるので、実績はもっと低くなり、7〜9月期を通じて生産は急落を続けるのではないかと思われる。
 業種別に見ると、世界的なIT関係製品の過剰を反映し、電気機械の減産が最も大きく、次いで一般機械の生産も大きく下っている。

【世界的なIT不況の影響が深刻化】

 このような電気機械、一般機械を中心とする供給過剰は、輸出の急落と設備投資の頭打ちによって起こっている。輸出と設備投資の双方の動向を反映する一般資本財出荷を見ると、6月には遂に前年比マイナスに転じた(図表2参照)。これは、4〜6月の季節調整済み前期比が-8.0%と大きく低下したためである。
 通関ベースの輸出を見ると、実質ベースで1〜3月の前期比-4.7%に続き、4〜6月も同-4.8%と急落を続けている。ここでも4〜6月期は電気機器類と一般機械の落ち込みが目立つ。IT関連製品の過剰と設備投資の下落は米国に始まり、今やアジアを含むグローバルな傾向となってきた。

【完全失業率は既往ピークを更新して上昇】

 生産調整の影響を受け、雇用情勢はますます悪化している。失業者は3月以降4ヶ月連続してジリジリと増え続け、失業率は2月の4.68%を底に5月は4.89%まで上昇し、既往最高となったが、6月は更に4.92%と既往ピークを更新した。
 常用雇用(事業所規模5人以上ベース、全産業)は、6月も前年比-0.2%と7ヶ月連続して前年を下回っている。所定外労働時間(同)も、6月は前年比-3.2%となり、前年比マイナス幅が月を追って拡大している。このため4〜6月は、前年比-2.8%と四半期ベースで3年ぶりに前年を下回った。
 これに伴なう時間外手当の減少と夏期ボーナスの低迷を反映して、名目賃金(同)の前年比も6月は前年比-1.7%となり、4〜6月平均も同-0.8%と前年を下回るに至った(1〜3月は同+0.1%)。

【4〜6月の個人消費は大幅な減少】

 このような雇用情勢と賃金動向の悪化は、個人消費にも悪影響を及ぼしてる。6月の全世帯消費水準は、図表2に示したように、前年比-3.8%の大幅減少となった。これで3ヶ月連続して前年水準を下回ったことになる。
 これを季節調整すると、4〜6月期の全世帯消費水準は、前期比-3.1%の急落となる。勤労者世帯の動向を見ると、このような4〜6月期の大幅な消費減少は、所得面よりも、消費性向の急落によるところが大きい。消費性向は1〜3月期の73.2%から4〜6月期には69.5%に低下した。
 原因は三つ考えられる。一つは、家電リサイクル法が4月から実施されたため、1〜3月に家電の買い急ぎが起こり、4〜6月にその反動が出たことである。二つ目は、小泉内閣の登場で「痛み」を伴なう改革が強調され、株価も低落したことに伴なう将来不安である。そして最後に、現実の雇用情勢の悪化やマイナス成長に伴なう経済の先行き不安である。

【4〜6月期は1〜3月期を上回るマイナス成長か】

 このような消費の落ち込みに加え、6月の住宅着工も図表2に示したように前年比-10.5%とマイナス幅を拡大した。4〜6月期の平均も年率114.8万戸にとどまり、前期比-2.9%の減少である。
 また公共投資も、図表2の公共工事請負額の動向からみて、引き続き前年を下回っていると思われる。
 以上の結果、9月に発表される4〜6月期の実質GDPは、1〜3月期に小幅のマイナス成長(図表3参照)となったあと、4〜6月期はかなり大幅なマイナス成長に陥るのではないか。個人消費と輸出がかなり減少するうえ、設備投資、住宅投資、公共投資も振るわないからである。
 当然、補正予算の必要性が与党の内部からも叫ばれ、小泉改革の真価が問われよう。このホームページの最新コメント"小泉さんの「骨太方針」で本当に改革が出来るのか(H13.7.9)"や雑誌論文"景気刺激的な構造改革を(BANCO)"などで指摘しているように、景気刺激的な構造改革を優先し、同時に国民に安心感を与える将来ビジョンを示さない限り、小泉改革は破綻するか、改革が後退することになるのではないか。