2001年7月版

‐ 生産の急落が続き失業率は既往最高水準へ ‐

【本年上期の鉱工業生産は年率14%の急落】
鉱工業生産の急落が続いている。5月の実績は、予測指数の+0.2%とは裏腹に、-1.2%の減少となった。これで3月以降、3ヵ月連続の大幅減少である。この為、6月の予測指数は+0.3%の微増となっているものの、この予測指数を前提とした4〜6月の平均は、前期比-3.7%(年率-14.0%)の急落となる。1〜3月平均の前期も-3.7%の大幅減少であったので、本年に入って年率14%の急落が半年続いたことになる。(以上図表1参照)。 このような生産の急落に伴って、図表1に見るように在庫率の上昇は5月に頭を打ったが、これで在庫調整が進み始めたと見るのはまだ早計であろう。在庫調整が本格化するのはこれからで、夏休みを利用した操業停止などが調整の一つの山場になるのではないか。

【失業率は既往最悪の水準へ】

生産の急落につれて、雇用も悪化している。5月の完全失業率は、4.89%と既往のピーク(昨年12月4.88%)を僅かに上回り、最悪の水準となった。 失業者の増加と表裏の関係で、常用雇用(事業規模5人以上ベース、全産業)も昨年12月以来6ヵ月連続で前年を下回っている。また所定外労働時間(同)も5月は前年比-2.2%と3ヵ月連続で前年を下回った(図表2参照)。これが時間外手当の減少に跳ね返っているため、一人当たり名目賃金(同)も5月は前年比-0.4%となっている。

【製造業中心にマインド悪化、雇用過剰感上昇】

このような状況下、ビジネス・マインドも大きく悪化し始めた。6月調査の「日銀短観」によると、業況判断DIの「悪い超」幅は、全規模全産業ベースで、3月の22%ポイントから6月は27%ポイントへ悪化した。特に、上記の鉱工業生産の動向からも分かるように製造業の悪化が著しく、3月の19%ポイントから6月は一気に30%ポイントまで悪化している。 このような中で、中堅・中小企業の製造業を中心に、雇用の過剰感が強まっている。「雇用人員判断DI」の「過剰超」幅は、3月から6月にかけ、中堅企業製造業では17%ポイントから25%ポイントへ、中小企業製造業では16%から24%ポイントへ、大きく悪化した。 この分野での雇用調整は、これから本格化すると見られる。 【個人消費も設備投資も先行き悪化傾向】 このような雇用、賃金情勢から判断すると、4〜6月期以降の個人所得、ひいては個人消費の動向は、はっきりと弱まるのではないか。その兆は、4月の消費水準の大幅低下(前年比-4.3%)に現われている(図表2)。5月の百貨店とスーパーの売上高合計も、4ヵ月連続して前月比マイナスとなった。
他方設備投資は、図表3に見るように、本年1〜3月期に、3四半期ぶりのマイナス(前期比-1.0%)となったが、4〜6月期もあまり強くないようだ。一般資本財出荷の4,5月平均は1〜3月平均に比して-7.4%と大きく低下している。
6月「日銀短観」によると、本年度の設備投資計画(全規模合計)は、前年に比し、製造業が-0.4%、非製造業が-8.0%、全産業で-5.9%と、非製造業の大幅な減少により、かなりのマイナスとなっている。大企業製造業は本年度も+7.7%の増加となっているものの、全規模全産業では減少の計画となっているので、GDPベースでは設備投資がジリ貧になって行くのではないか。

【外需主導の下期回復説は楽観に過ぎる】

以上のほか、住宅投資と公共投資も、図表2の新設住宅着工と公共工事請負額が前年を下回り続けていることから判断して、減少傾向が続くであろう。国内の最終需要項目には先行き反転上昇が見込まれる項目は見当たらない。 そこで外需の動向に期待が寄せられている。6月の「日銀短観」でも、大企業製造業の輸出計画は、前年同期比で本年度上期に-3.5%と落込んだあと、下期には+5.5%%と大きく回復する見込みとなっている。このため経常利益全体も下期には回復が見込まれている。 もしこの通りであれば、年初来の景気後退は年度下期に外需主導で底入れすることになる。

【下期こそ深刻な不況になる可能性】

しかし、この見通しは楽観に過ぎるのではないか。米国の成長減速が仮に年内に止まるとしても、回復は来年以降ではないか。そうだとすれば、日本からの輸出も年度下期に下げ止まることはあっても、国内景気全体を引張るほどの回復に転じることは考えにくいのではないか。 むしろ、個人消費と設備投資という国内民間需要の二本の柱が崩れることによる悪循環によって、本年度下期は深刻な不況になると予想される。その予兆となるのは、恐らく9月期に発表となる4〜6月のGDPの深刻なマイナス成長であろう。