2000年8月版

‐ 4〜6月期はプラス成長、不安は来年以降に ‐

【生産は順調に回復し過去のピークに迫る】
鉱工業生産、出荷は着実な回復を続けている(図表1参照)。4〜6月期は生産が前期比+1.6%、出荷が同+1.7%となった。また7月と8月が予測指数通りとなり、9月が8月比横這いになると仮定すると、7〜9月期の生産は前期比+2.9%と加速する。
もっとも、曜日構成も調整できるX-12ARIMAで季節調整すると、4〜6月期の生産は前期比+2.0%と高くなり、反面7〜9月期の生産(同じ仮定で試算)は同+1.8%とやや低くなり、加速はしていない。
しかし、いずれにせよ、4〜6月期と7〜9月期は、年率7%程度のスピードで生産が着実に上昇していることは間違いない。その結果、8月の予測指数(通産省公表の季節調整指数)は108.2となり、バブル景気末期のピーク(91年3月 108.2)や95〜96年度回復期のピーク(97年1月 108.8)とほぼ同水準に達する。


【4〜6月以降消費がやや回復傾向】

このような4〜6月期以降の生産回復は、これまで冴えなかった消費がやや回復し、下落を続けてきた公共投資が下げ止まってきたことによって支えられている。
4〜6月期の消費水準指数(全世帯、実質)は、1〜3月期に前期比−0.2%とほぼ横這いとなったあと、4〜6月期は同+3.8%と大きく増加した。前年同期比のマイナス幅も、1〜3月期の−2.0%から4〜6月期は−0.3%に縮小した(図表2参照)。
消費増加は主として耐久消費財で起っている。全世帯(実質)の耐久財支出は、1〜3月期に前年比0.0%のあと、4〜6月期には同+14.8%と著増している。これは従来からのパソコン需要に加え、乗用車の購入増加によるものである。4〜6月期の乗用車新車登録台数は前年比+3.8%となった(図表2参照)。
また7月以降猛暑が続いているため、エアコンや飲料品など夏物の売行きが極めて好調のようである。


【消費回復は所得増加ではなく消費性向の上昇による】

このような4〜6月期以降の消費回復は、勤労者家計統計によると、所得の回復によってではなく、消費性向の上昇によって起っている。その限りでは、必ずしも持続性のある動きではない。
4〜6月期の勤労者家計統計によると、前期に比して、可処分所得(実質)は−0.3%となっているが、消費性向が前期の70.8から72.7に上昇することにより、消費支出(実質)が同+2.3%となっている。
雇用関連統計をみても、求人数は増加しているものの、雇用指数はまだ増加傾向に転じていない。実質賃金は前年比増加率を少しづつ高めているが、これは所定外労働時間の増加(図表2参照)を反映した弱い動きである。


【公共投資と住宅投資は下げ止まりないし増加か】

4〜6月期は、昨年4〜6月期をピークに急落してきた公共投資(図表3参照)が下げ止まった可能性がある。公共工事請負額の前年比マイナス幅が下げ止まり(図表2参照)、公共工事着工額の前年比も、昨年10〜12月期の−13.4%から本年1〜3月期は−8.5%に縮小し、5月には+35.3%のプラスに転じているからである。
4〜6月期の公共投資は低水準横這いか、若干の増加に転じている可能性がある。
GDP統計上の住宅投資は昨年7〜9月期、10〜12月期と2四半期連続して減少したあと、本年1〜3月期は増加した。住宅着工戸数は本年1〜3月期に前期比+7.1%と増加したあと、4〜6月期は同−16.%と減少したが、水準としては比較的高いので、GDP統計上の住宅投資は、1〜3月期の着工増加のズレ込みで横這いないしは微増するかもしれない。


【設備投資と純輸出は一時的に減少か】

これに対し、最近のGDP増加を支えてきた設備投資と純輸出は、4〜6月期に一時的な減少となるかも知れない。
設備投資の動向を比較的よく現す一般資本財出荷は、1〜3月期に前期比+7.5%と急増したあと、4〜6月期は同−1.9%となった。建築着工床面積(民間、非居住用)も、前期比で昨年10〜12月期+10.8%、本年1〜3月期+14.4%と急増したあと、4〜6月期は−1.9%と伸びが止まった。
もっとも、先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)が、図表2に示したように、前年比で5月まで伸び続けていることから判断すると、仮に設備投資が4〜6月期に前期比マイナスとなったとしても、一時的な動きであろう。
同じような一時的な減少は、4〜6月期の純輸出でも起りそうだ。通関ベースで、4〜6月期の実質輸出は前期比+3.2%、実質輸入は同+6.3%となり、実質貿易収支は減少した。しかしアジア向けを中心とする輸出の伸びは、ならして見れば輸入の伸びを上回るとみられるので、純輸出の減少は一時的であろう。


【消費回復は所得増加ではなく消費性向の上昇による】

このような4〜6月期以降の消費回復は、勤労者家計統計によると、所得の回復によってではなく、消費性向の上昇によって起っている。その限りでは、必ずしも持続性のある動きではない。
4〜6月期の勤労者家計統計によると、前期に比して、可処分所得(実質)は−0.3%となっているが、消費性向が前期の70.8から72.7に上昇することにより、消費支出(実質)が同+2.3%となっている。
雇用関連統計をみても、求人数は増加しているものの、雇用指数はまだ増加傾向に転じていない。実質賃金は前年比増加率を少しづつ高めているが、これは所定外労働時間の増加(図表2参照)を反映した弱い動きである。


【公共投資と住宅投資は下げ止まりないし増加か】

4〜6月期は、昨年4〜6月期をピークに急落してきた公共投資(図表3参照)が下げ止まった可能性がある。公共工事請負額の前年比マイナス幅が下げ止まり(図表2参照)、公共工事着工額の前年比も、昨年10〜12月期の−13.4%から本年1〜3月期は−8.5%に縮小し、5月には+35.3%のプラスに転じているからである。
4〜6月期の公共投資は低水準横這いか、若干の増加に転じている可能性がある。
GDP統計上の住宅投資は昨年7〜9月期、10〜12月期と2四半期連続して減少したあと、本年1〜3月期は増加した。住宅着工戸数は本年1〜3月期に前期比+7.1%と増加したあと、4〜6月期は同−16.%と減少したが、水準としては比較的高いので、GDP統計上の住宅投資は、1〜3月期の着工増加のズレ込みで横這いないしは微増するかもしれない。


【設備投資と純輸出は一時的に減少】

これに対し、最近のGDP増加を支えてきた設備投資と純輸出は、4〜6月期に一時的な減少となるかも知れない。
設備投資の動向を比較的よく現す一般資本財出荷は、1〜3月期に前期比+7.5%と急増したあと、4〜6月期は同−1.9%となった。建築着工床面積(民間、非居住用)も、前期比で昨年10〜12月期+10.8%、本年1〜3月期+14.4%と急増したあと、4〜6月期は−1.9%と伸びが止まった。
もっとも、先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)が、図表2に示したように、前年比で5月まで伸び続けていることから判断すると、仮に設備投資が4〜6月期に前期比マイナスとなったとしても、一時的な動きであろう。
同じような一時的な減少は、4〜6月期の純輸出でも起りそうだ。通関ベースで、4〜6月期の実質輸出は前期比+3.2%、実質輸入は同+6.3%となり、実質貿易収支は減少した。しかしアジア向けを中心とする輸出の伸びは、ならして見れば輸入の伸びを上回るとみられるので、純輸出の減少は一時的であろう。


【4〜6月期はプラス成長、景気の不安は来年以降に】

以上を総括すると、9月上旬末に発表になる4〜6月期の実質GDPは、設備投資と純輸出がマイナスになるものの、個人消費が久しぶりに確りした伸びとなり、あとの需要項目はほぼ中立的な動きとなるのではないか。
個人消費のGDPシェアは約6割と極めて高いので、実質GDP全体としては、本年1〜3月期に続きプラス成長となる可能性が高い。
鉱工業生産の動向や、暑い夏の消費刺激効果から考えると、7〜9月期もプラス成長の可能性がある。
こうした中で株価が下がっているが、現在の株価の低迷は、目先の景気回復とは関係ない。森内閣の政策に対する不信感や、景気維持と財政再建に対するスタンスの不明確さが大きな背景になっているもので、来年4月頃から先の日本経済に対する不透明感の現われであろう。
日本の景気回復に動揺が起きるとすれば来年以降であり、年内の回復は続くであろう。